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ブラジル  「あの」ボルソナロ大統領が「アマゾン違法伐採を2030年までに根絶」 真意は不明

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(【2020年2月12日】 焼かれたアマゾン)

 

【ボルソナロ大統領 アマゾン違法伐採を2030年までに根絶】

バイデン大統領が主催してオンライン形式で開催された気候変動に関する首脳会議(気候変動サミット)は、22,23日に40の国・地域の首脳らが参加して行われました。

 

アメリカ・バイデン大統領は、2030年に05年比で50〜52%減とする意欲的な新目標を発表。

バイデン大統領は「自ら解決できる国はない」と各国にも行動を求め、中国の習近平国家主席は「アメリカを含む国際社会と共に地球環境の管理推進に努力したい」と表明。

 

温暖化対策そのものよりは、米中の主導権争いという側面が大きく取り上げられる形にもなっています。

 

ただ、中身に関しても、アメリカ、EU、日本などが野心的な目標を公表し、何より、アメリカが国際社会に復帰し、CO2の最大排出国である米中が協力して対応にあたることを表明する・・・といったことは、今後へ大きな影響を与えることかと思います。もちろん、実効性などの問題も多々あります。

 

そのあたりの話は、また別機会で取り上げるとして、一連の各国首脳の発言で一番驚いたのは、ブラジル・ボルソナロ大統領の発言でした。

 

ブラジルのトランプとも称されるボルソナロ大統領は、本家トランプ前大統領以上に“型破り”な言動が多く、アマゾンに関しても、これまで開発を優先し、環境保護をないがしろにする発言を行っています。

 

そのボルソナロ大統領が・・・

 

****「30年までにアマゾン違法伐採ゼロ」ブラジル大統領*****

南米ブラジルのボルソナーロ大統領は22日、オンラインで出席した気候変動サミットで、「2030年までにアマゾンの違法な森林伐採をゼロにする」との方針を示した。ボルソナーロ政権が「環境保護に消極的だ」とする国際社会の評価を覆したい狙いがあるとみられるが、実現には疑問符がついている。

 

サミットでボルソナーロ氏は、「気候変動と戦う国際的な取り組みにブラジル政府も関与する」と演説。「予算を2倍にし、環境犯罪の取り締まりを強化することを決めた」と表明した。

 

また、温室効果ガスを排出ゼロにする期限を10年前倒しし、50年までとすると述べた。ただ、具体的な削減方法については触れなかった。

 

ボルソナーロ氏はこれまで、アマゾンの開発規制の緩和を主張し、監視機関の人員や予算を削減。欧米からの批判には「アマゾンはブラジルの主権だ」などと述べ、対応を後回しにしてきた。

 

だが、米国が地球温暖化に懐疑的なトランプ前政権から、気候変動対策に積極的に取り組むとするバイデン政権に代わったことで、開き直りを続けられなくなった形だ。

 

ただ、ボルソナーロ政権が目標達成に向けて、本当に取り組むのかは、演説前から疑問視されている。

 

同政権はアマゾン熱帯雨林の保護対策には、国際社会などから10億ドルの支援が必要だと主張してきた。今回のボルソナーロ氏の演説でも額こそ明示しなかったが、国際的な支援の必要性を訴えた。欧州諸国は、違法伐採を減らしたという実績を先に示すよう求めており、米バイデン政権も同調すると報じられている。

 

アマゾンで環境犯罪の取り締まりを担当するブラジル政府機関の職員は、「ボルソナーロ政権のせいで、捜査が難しくなっている」と告発。欧米が支援金の条件とする、伐採削減の実現は困難な状況だとしていた。

 

ブラジルのメディアでは、ボルソナーロ政権が支援金をめぐる駆け引きを続け、本格的な環境保護対策に取り組まない可能性も指摘されている。【4月23日 朝日】

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どこまで本気の発言でしょうか?宗旨替えしたようには思えませんが・・・。

「何でもいいから、適当に言っておけば・・・」ということであれば、そして、そういう発言がまかり通るのであれば、会議における米中や日本などの他の発言の信頼性も怪しく思えてきます。

 

****アマゾン脅かすブラジル大統領(The Economist)****

人類揺籃(ようらん)の地は樹木もまばらなアフリカの草原地帯サバンナだったが、ヒトは長い間森林から食料や燃料、木材から崇高な霊感までも得てきた。今も森林は世界の15億人にとって生活の糧であり、大小の生態系を維持している。それ以外の62億人にとっては脆弱で軋(きし)んでいるとはいえ、気候変動から自分たちを守ってくれるバッファー的存在だ。

 

(中略)政府の努力で7年間は森林破壊のペースは落ちたが、政策遂行力の低下や過去の違法伐採を不問に付したため2013年から再び加速した。不況と政治危機で政府の森林破壊抑制策を実行する能力はさらに弱まった。そしてボルソナロ氏は今、喜々として伐採を禁じる規制の緩和に着手している。

 

熱帯雨林の保護規制を廃止しようとする同氏の試みの一部は議会と裁判所が阻んだ。だが、法と秩序を回復させるために当選したはずのボルソナロ氏は、違法に伐採をする者は何も恐れる必要はないとの立場を鮮明にしている。

 

もともとアマゾンでの伐採の70~80%は違法伐採なので、今や森林破壊は記録的なレベルに達している。同氏が大統領に就任して以来、ニューヨークのマンハッタン2つ分以上の面積に匹敵する森林が毎週消失している。

 

森林アマゾンの減少は気温の上昇も招く

アマゾンは、水資源の多くが循環している点で他の森林と異なる。熱帯雨林が縮小すれば再生、循環する水も減る。そのためどこかの段階で、つまり今後何十年かで、その水を再生する力が弱まれば、森林は一層縮小していくという悪循環に陥ることになる。

 

気候変動で森林の気温は上昇しており、臨界点は年々近づいている。ボルソナロ氏は、事態を限界へと押しやっている。悲観主義者らは熱帯雨林がさらに3~8%消滅すれば(同氏の下では近いうちに起こり得る)、制御不可能な森林破壊のサイクルが始まると恐れている。彼らが正しいかもしれないと示す兆候がある。アマゾンは過去15年で3度の深刻な干ばつに見舞われ、森林火災も増えている。

 

ボルソナロ氏は科学全般に懐疑的なこともあり、こうした見方を否定し、外部の人々を偽善者と呼ぶ。先進国も森林を伐採してきたではないか、と。先進国は、ブラジルを貧しいままにしておくために環境保護をお題目に利用してきたとも非難する。

 

最近も同氏は「アマゾンは我々のものだ」と怒りを込め叫んだ。ブラジルのアマゾン熱帯雨林で起きることはブラジルの問題だと彼は考えている。

 

だが、アマゾンの問題はブラジルだけの問題ではない。アマゾンの森林破壊は周辺7カ国にも直接被害を及ぼす。熱帯雨林から放出され、アンデス山脈沿いにはるか南のブエノスアイレスまで流れる湿気を減らすだろう。上空の水蒸気の流れだけでなく、ブラジルがダムを造って川をせき止めれば、下流にある国々は、それを戦争行為とみなすかもしれない。

 

アマゾンの熱帯雨林は大量の炭素を蓄積しているため、燃えたり腐敗したりすれば、世界の平均気温は2100年までに0.1度上昇する可能性がある。大したことはないと思うかもしれないが、温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」では将来の気温上昇を0.5度程度に抑えるのが望ましいとされている。(後略)【2019年8月6日 2:00  日経】

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【国際批判にもかかわらず、「アマゾンは我々のものだ」との主張は、国内的には国民も共有】

ボルソナロ大統領がどこまで本気で違法伐採を根絶するつもりかは大いに疑問ですが(伐採規制を緩和したうえでの「違法」伐採を・・・ということでしょうか)、何事につけ、国際世論と国内評価は異なることもあります。

 

「あの」トランプ大統領もアメリカ国内では4割ほどの国民が熱烈支持しているように、また、深刻な感染拡大の一因ともなっているボルソナロ大統領の新型コロナ軽視姿勢・経済活動規制への反対姿勢が一部の国民には支持されているように、アマゾンについても、開発優先の大統領の姿勢、「アマゾンは我々のものだ」ということで外国の干渉を嫌う考えは、ブラジル国内的には共感もあります。

 

一昨年夏、アマゾン森林火災の消火活動に消極的だった同氏への激しい国際的批判がありましたが・・・

 

****アマゾン火災、ブラジル国内では大統領批判少なく****

ブラジルのボルソナロ大統領は、アマゾン森林火災への対応をめぐり、国際舞台では欧州の指導者たちや環境保護グループから激しい批判を浴びている。しかし、国内で大統領の対応の鈍さに怒る国民は少ない。

 

熱帯雨林の保護と開発のバランスを巡り、国民の多くは、外国の干渉に対する大統領の嫌悪感を共有している。アマゾンは国内では重要な国家資産と受け止められているが、国際社会では気候変動への決定的な防波堤と見なされている。(中略)

 

ブラジリアのコンサルタント会社キャピタル・ポリティコの責任者、レオナルド・バレット氏によると、今週実施した世論調査ではボルソナロ政権が「非常に良くやっている」、「良い」、「普通」とする回答は合わせて約60%に上り、国民が現時点では大統領を好意的に見ていることが明らかになった。

 

ロビイストでブラジル政府の元通商担当高官だったウェルバー・バラル氏は、「アマゾンの支配権を外国人に奪われかねないとのボルソナロ氏のナショナリズム的思考のために、皮肉にも、森林火災は同氏の支持率を上げたかもしれない」と述べた。

 

ブラジル国民の多くは、アマゾンには金からニオブに至る膨大な鉱物資源が眠っており、それらが諸外国から狙われていると信じている。(後略)【2019年8月31日 ロイター】

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【WHO 「ブラジルは感染拡大で荒れ狂う地獄のような状況になっている」】

ブラジルの新型コロナ感染状況は、世界ワーストの座こそインドに譲りましたが、未だに深刻な状況が続いています。

 

****感染拡大続くブラジル、夜勤従業員も動員し墓掘り 埋葬追いつかず****

ブラジル・サンパウロの墓地ではこれまで、夜間に埋葬が行われることはほとんどなかった。しかし、新型コロナウイルス感染の第2波によりこの数か月で死者が急増し、同市は対処不能な事態を避けるため、現在22の市営墓地のうち4か所で夜勤の従業員を増やして墓掘りに当たっている。市内では毎日600もの墓が掘られている。

 

そのうちの一つ、中南米最大の墓地であるビラ・フォルモサ共同墓地は、新型コロナウイルスによる死者がすでに36万人を超えているブラジルの被害の実情を如実に示している。

 

午後6時、夜勤で働く従業員の出勤時間だ。発電機につないだ2台の大型ライトが墓をこうこうと照らし、ディーゼルエンジンの排気臭が辺り一面に漂う。

 

感染拡大の第1波の真っただ中だった2020年5月、この墓地では3台のパワーショベルを使って1日に60の墓を掘っていた。今は、6台の重機で1日に200の墓を掘っていると、夜10時までのシフトで働いている従業員らは話す。

 

サンパウロ市内では先月30日、過去最多の426人が埋葬された。現在1日当たりの死者は平均391人、埋葬される人の数は平均325人となっている。 【4月17日 AFP】

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しかし、ボルソナロ大統領は経済活動を規制することには反対し、規制を強化する州知事と対立しています。(このあたりは、再選を目指すボルソナロ大統領に対し、サンパウロ州知事が次期大統領選挙の有力候補であるため、次期大統領選挙を睨んだ動きの側面もあります。)

 

****ブラジル大統領、州知事のコロナ抑制策を批判 WHO「地獄」と警告****

ブラジルで新型コロナウイルス感染拡大に歯止めがかからず、世界保健機関(WHO)のブルース・エイルワード上級顧問が「地獄」のような状況になっていると警戒を呼び掛ける中でも、ボルソナロ大統領は9日、対応への批判に反論し、州知事によるロックダウン(都市封鎖)の動きを批判した。

ブラジルの新型コロナ感染による死者数は34万5000人を超え、米国に次いで世界で2番目に多い。感染拡大で医療機関が逼迫し、このところの1日の死亡者数は4000人を超えている。

WHOのエイルワード上級顧問は「ブラジルは感染拡大で荒れ狂う地獄のような状況になっている」と警告。こうした中でもボルソナロ大統領は、ロックダウンのほか、これよりも緩やかな感染拡大抑制措置を導入しようとした州知事を非難。ウイルスよりも抑制措置でより多くの人を殺したと批判した。

医療機関の対応体制が限界に近づく中でも、サンパウロ州は抑制策の一部を来週緩和すると発表している。【4月10日 ロイター】

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これだけの感染拡大のなかにあっても“ボルソナーロ大統領は新型コロナウイルスの流行について、メディアによるでっち上げだと示唆し、政府による補助金を報道機関に提供することによって解決が可能だとの見方を示した。”【4月8日 CNN】とも・・・・いささか常軌を逸しているようにも・・・。

 

【政権内部の軋み 次期大統領選挙にルラ元大統領復活】

ボルソナロ大統領の強引な政権運営・コロナ軽視対応に、政権内部にも軋みがあるようです。

 

****陸海空軍のトップ3人が交代へ、主要閣僚らに続き ブラジル****

ブラジル国防省は30日、軍の陸海空軍を率いる司令官3人の退任を発表した。ボルソナーロ政権では29日に発表された主要閣僚らの交代に続き、軍の指導部も一斉に入れ替わる異例の事態となった。

 

発表によると、陸軍のプジョル司令官、海軍のバルボザ司令官、空軍のベルムデス司令官が退任する。この決定は29日に辞任したアゼベド前国防相、後任のブラガ国防相と3司令官の会合で伝達されたという。

陸海空軍の司令官が一斉に交代するのは同国史上初めて。(中略)

 

ボルソナーロ氏は最近、新型コロナウイルス感染対策のロックダウン(都市封鎖)措置を導入した各州知事らと対立して非常事態宣言の発令を示唆した際に連邦軍を「私の軍」と呼ぶなど、強権的な言動が目立っている。

 

現地メディアによると、軍司令官らはボルソナーロ氏の計画に支持を表明するよう圧力を受けていたという。

アゼベド氏は29日の声明で、「私は国家機関としての軍を守った」と述べていた。【3月31日 CNN】

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軍のエリート首脳には、「元軍人」の変わり者(陸軍時代は、軍人の低賃金を批判する記事を書いて15日間逮捕拘留されたり、軍に爆弾を仕掛けたと裁判沙汰になったりしたことも)をトップに戴くこと、「私の軍」呼ばわりされることに(間違いなく)抵抗感もあるでしょう。

 

次期大統領選挙に関しては、サンパウロ州知事だけでなく、ルラ元大統領という強力ライバルが復活したようです。

 

****人気健在の元ブラジル大統領、出馬可能に 最高裁で確定****

南米ブラジルの連邦最高裁大法廷は15日、収賄の罪で有罪としたルラ元大統領(75)の判決を取り消す判断を確定させた。これにより、ルラ氏は22年10月の大統領選への立候補が可能となった。

 

左派・労働党のルラ氏の人気は健在で、直近の世論調査では、再選を狙うボルソナーロ大統領との決選投票になる可能性が高いとみられている。

 

ブラジルでは、二審で有罪判決を受けると当選できない。建設会社からマンションなどを受け取ったなどとして収賄の罪に問われたルラ氏は18年1月、南部クリチバの連邦地裁での二審で禁錮12年1カ月の有罪判決を受けた。このため、18年大統領選に出馬が認められず、ルラ氏側は異議を申し立てていた。

 

今年3月、最高裁判事が「クリチバ地裁には管轄権がなく、首都ブラジリアで審理されるべきだ」として有罪判決を取り消し、裁判のやり直しを命じる判断を示していた。最高裁は15日、判事11人による大法廷でこの判事の判断を審理した。8人が賛成し、有罪判決取り消しが確定した。

 

次期大統領選の立候補届け出は22年8月が期限だが、やり直し裁判の二審判決がそれまでに出る可能性は低い。事実上、ルラ氏は立候補できることになった。

 

03年から2期8年大統領を務めたルラ氏は、好景気とも重なり、貧困層を中心に絶大な支持を集めた。今月実施された世論調査では、ルラ氏とボルソナーロ氏が決選投票に進んだ場合、34%がボルソナーロ氏に投票すると回答したのに対し、ルラ氏に投じると答えたのは52%だった。

 

ルラ氏の裁判をめぐっては、有罪判決を下した地裁のモロ判事が、ボルソナーロ政権で法相に就任したことから、「政治的な判決」だと批判が起きていた。【4月16日 朝日】

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ルラ元大統領との争いはこれからの話ですが、これだけ物議をかもす言動がありながらもボルソナロ大統領が決選投票に進むと予想されているあたり、国内評価・人気というのは外からはわからないものです。

 


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