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Channel: 孤帆の遠影碧空に尽き
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ハマスのイスラエル攻撃  イラン革命防衛隊が計画に関与か 今後のヒズボラの動向は?

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(ハマス戦闘員はケレム・シャロムで警備兵を襲撃し、フェンスを切り開いて、イスラエル側に侵入した ハマスは今回、数時間のうちに分離壁の複数箇所からイスラエル領内に入ることに成功していた。【10月9日 BBC】)
【イスラエルの存在を認めないハマス】周知のようにイスラエルとパレスチナ・ガザ地区を実効支配するハマスとの戦闘はまだ続いています。
イスラエル発表によれば、9日午前の時点でイスラエル人の死者は700人を超え、負傷者は2382人に上っています。また、ハマスや戦闘に加わった武装組織「イスラム聖戦」は8日、イスラエルから計130人以上をガザに連行したと発表しています。 
一方、パレスチナ保健省も9日、パレスチナ側の死者が493人、負傷者は2751人だと発表しています。双方の死者数を合わせると、1200人近くになります。
イスラエル軍によれば、ガザ地区に近いイスラエル南部の7~8カ所でハマス戦闘員との戦闘が続いており、ハマス側の戦闘員の大半は殺害されたが、一部が住宅に隠れて抵抗しているとのことです。
また、イスラエル軍は9日朝までにガザ地区へ1149回の空爆を実施したとのことで、ハマス指導者でガザ地区の政治部門でのトップであるシンワル氏が死亡したと発表されています。
この件については、一昨日ブログ“パレスチナ  ハマス、対イスラエル大規模攻撃 領内侵入で住民拉致の報道も 予想される「報復」”でも取り上げていますが、戦闘・被害の規模は第一報当時から格段に膨れ上がっており、今回は前回記事に付け加えること、修正することを。
イスラエルの存在を認めないハマスと「二国家共存」(「二国家解決」)でパレスチナ国家建設を目指すパレスチナ自治政府では立場が異なります。
****そもそも「ハマス」って?****1993年には通称「オスロ合意」と呼ばれる歴史的な和平合意が結ばれました。敵対するイスラエルとPLO=パレスチナ解放機構がお互いに認め合い、イスラエルが占領していたガザ地区とヨルダン川西岸地区でパレスチナ人の暫定自治をスタートさせるというものです。
ところが、イスラム原理主義組織「ハマス」はパレスチナ全土を解放して独立国家をつくりたいと考えているため、「オスロ合意」を認めていません。そこでハマスが2007年、ガザ地区全域を奪い、実効支配しているのです。(中略)
ハマスは、イスラム的な思想に基づく統治を目指している組織で、「パレスチナの地は自分たちのものだ」と考えています。このため、彼らにとって自分たちの土地を取り返すためにイスラエルと戦うことは「ジハード(聖戦)」だとしているのです。
「ジハードで命を落とせば、天国に行ける」という考えから、自爆テロが数多く発生しています。こうした自爆テロなどを繰り返してきたため、欧米はハマスを「テロ組織」と認定しています。【10月8日 日テレNEWS】********************
【「パレスチナ人が方程式から除外されている限り、地域全体に安全保障はない」】ハマス側が攻撃に出た背景としては、前回ブログでも指摘したように、アメリカ後押しで進むイスラエルとサウジアラビアの接近に、このままでは見捨てられる事を危惧したハマスがその妨害に出て、パレスチナ抜きの中東和平はありえないことをアピールしたとの指摘が多くなされています。
****ハマス、周到に用意された「奇襲攻撃」の意図は? イスラエルとサウジの関係正常化阻止か***イスラム組織ハマスが7日の大規模攻撃で狙ったのは、イスラエルだけではない。この地域では、米国がイスラエルとサウジアラビアの関係正常化を後押しするなど新たな安全保障秩序の構築に向けた動きが活発化しており、ハマスにはパレスチナ国家樹立への希望を脅かしかねないこうした動きにくさびを打ち込む狙いがあったとみられる。(中略)
イランや同国が支援するレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの事情に詳しい消息筋は、「これは、イスラエルにすり寄りつつあるサウジや、イスラエルを支援して正常化を後押ししている米国に対するメッセージだ。パレスチナ人が方程式から除外されている限り、地域全体に安全保障はない。今日の出来事はあらゆる予想を上回るもので、対立関係におけるターニングポイントになるだろう」と述べた。(中略)
レバノンにおけるハマスの指導者、オサマ・ハムダン氏はロイターに対し、7日の大規模攻撃により、イスラエル側の安全保障上の要求を受け入れることで平和が実現することはないとアラブ諸国は理解すべきだ、と述べた。(後略)【10月8日 Newsweek】***********************
今回の攻撃では、イスラエル人・パレスチナ人以外の外国人も多数犠牲者となっています。
****ハマスの攻撃で外国人犠牲=タイ、ネパールは10人以上―パレスチナ****パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃では、外国人多数も犠牲になった。タイ、ネパール両国政府によると、タイ人12人とネパール人10人が死亡した。
タイ外務省によると、イスラエルには農業や建築現場などで働くタイ人が約3万人おり、うち5000人はガザ一帯に居住。タイ政府は避難のため空軍機の派遣を準備している。
カンボジア政府も学生1人が死亡したと発表した。
ドイツのDPA通信によると、独外務省は8日、拉致された人々の中に複数のドイツ人が含まれているとの情報があると明らかにした。全員がイスラエルとの二重国籍者と想定されるという。
米CNNテレビは、情報筋の話として米国人少なくとも4人が死亡したと報道。AFP通信によると、フランス人1人が死亡、数人が行方不明になっている。
また、ウクライナのメディアは、イスラエル在住のウクライナ人女性2人が死亡したと伝えた。メキシコ人2人が拉致されたとの情報もある。【10月9日 時事】 ************************
“イスラエルには農業や建築現場などで働くタイ人が約3万人おり、うち5000人はガザ一帯に居住”というのが意外なところ。
【規模と連携において前例のない攻撃でイスラエルの分離壁を突破】意外と言えば、鉄壁とも思われていたイスラエルの防御が破られ、多数のハマス戦闘員が領内に侵入したことには驚きました。
****イスラエルへの急襲、不可能と思われたが……ハマスはどうやって****攻撃が始まったとき、イスラエル人の多くは眠っていたはずだ。7日は土曜日で、ユダヤ教の安息日だった。加えて、ユダヤ教の祭日でもあった。つまり多くの家族は自宅やシナゴーグ(ユダヤ教の礼拝所)で過ごす予定だっただろうし、友人同士は集まる予定を立てていたかもしれない。
しかし夜明けと共に、空からロケット弾が大量に降ってきた。規模と連携において前例のない攻撃の、開始の合図だった。
イスラエルはもう何年も前から、パレスチナ人の小さな自治区、ガザ地区とイスラエル領の間の分離壁を強化してきた。しかし、今回の攻撃が始まるや数時間のうちに、分離壁は越えられないどころか、数カ所で破られていた。守りは鉄壁ではなく、その思い込みは誤っていたことが露呈した。(中略)
ハマスが使うロケット弾は基本的な作りで、イスラエルの進んだ防空システム「アイアン・ドーム」を回避できないことが多い。しかし今回は、短時間の間に数千発を一気に発射することで、その防空体制をかいくぐることに成功した。
このことから、ハマスが何カ月も前からこの攻撃を計画し、ロケット弾を備蓄していたことがうかがえる。ハマスは当初の攻撃でロケット弾を5000発、発射したと主張する。一方、イスラエル軍はその半数だったと反論している。(中略)
ロケット弾の砲撃が続く間、ハマスの戦闘員はガザを厳重に取り巻く分離壁を複数個所から突破するため、所定の場所にそれぞれ集まっていた。
イスラエルは2005年の時点で、部隊と入植者をガザから引き揚げた。しかし今も、その上空と境界線、ならびに海岸線を支配下に置いている。
イスラエルがガザを囲って設置した分離壁は、場所によってはコンクリートの壁、場所によっては金網のフェンスだ。その一帯をイスラエル軍は定期的に警備しているし、侵入を防ぐためのカメラやセンサーが多数配置され、警備の網を作っている。それでも数時間のうちに、この分離壁は何度も何度も突破された。
ハマスはどうやって侵入したのかハマス戦闘員の一部は、分離壁を完全に避けてイスラエルに入ろうとした。中には、パラグライダー(少なくとも7人がパラグライダーでイスラエル上空を漂っている、未確認映像がある)や、ボートを使った者もいる。(中略)
しかし、今回の攻撃が従来と異なるのは、境界線の複数の検問所に対する直接攻撃が、連携をとって行われたことだ。
ソーシャルメディア「テレグラム」上で午前5時50分、ハマス軍事部門とつながりのあるチャンネルに、最初の現場映像が投稿された。動画には、戦闘員が検問所を襲撃する様子や、血にまみれたイスラエル兵2人が地面に倒れた様子が映っていた。撮影場所は、ガザの検問所の中で最も南にある、ケレム・シャロームだ。
別の動画では、ライフルを手にした戦闘員が2人ずつ乗ったバイクが少なくとも5台、分離壁の金網フェンスの部分を切り開いた箇所を、通り抜けていく様子を見せていた。
戦闘員はケレム・シャロムで警備兵を襲撃し、フェンスを切り開いて、イスラエル側に侵入した。警備の薄い個所では、金網と鉄条網のフェンスを、ブルドーザーが押しつぶして破壊していた。(中略)
ガザの検問所で最北にあるエレズは、ケレム・シャロームから約43.4キロに位置する。ここでもハマス勢力は、検問所を襲撃した。この動画は、ハマス系プロパガンダ・チャンネルの一つに掲載された。コンクリート壁で爆発があり、これを襲撃の合図に、戦闘員が爆発の方向へ武装集団を誘導する様子が映っている。(中略)
ガザから出るための公式な検問所は7つある。そのうち6カ所はイスラエルが管理し、エジプトへ通じる1カ所はエジプト政府が管理している。しかしハマスは今回、数時間のうちに分離壁の複数箇所からイスラエル領内に入ることに成功していた。(後略)【10月9日 BBC】*****************
【ネタニヤフ首相の「歴史的な失敗」へ強まる批判】このように“周到に用意された「奇襲攻撃」”をどうしてイスラエルの情報機関などは察知できなかったのか?という疑問は前回ブログでも指摘しましたが、同じ疑問をイスラエルの国内外の人々が抱いています。
前回ブログでは、ハマスの攻撃によって司法改革問題で揺らいでいたネタニヤフ政権の求心力が高まるのでは・・・という個人的見方を示しましたが、ハマスの攻撃を察知できなかった失態と、想定外の大きな犠牲を出していることで、ネタニヤフ政権への批判が強まっているようです。ただ、野党も参加した挙国一致内閣はできるようです。
****「この惨事は、ある人物に明確な責任がある」…イスラエル政権に「歴史的な失敗」と批判****イスラエルでは、イスラム主義組織ハマスによるロケット弾攻撃と越境侵攻を防げなかったベンヤミン・ネタニヤフ政権と軍に対する批判が高まっている。「歴史的な失敗」(地元紙ハアレツ)と受け止められ、ネタニヤフ政権の責任を問う声も出ている。(中略)
イスラエルでは軍の救出の遅さを指摘する声も出ている。テルアビブから軍の部隊とともに救出に向かった予備役将官ノアム・ティボンさん(61)は「今回の事態を検証しなくてはいけない」と軍の態勢に疑問を呈した。
政権への批判も高まっている。地元紙ハアレツは8日付の社説で「この惨事は、ある人物に明確な責任がある。ネタニヤフだ」と批判した。
昨年12月に発足したネタニヤフ政権は、ヨルダン川西岸の併合を主張する極右と宗教勢力と連立を組み、史上最も右寄りとされる。ネタニヤフ氏は、パレスチナへの強硬姿勢で「治安対策の専門家」として国民から一定の安心感を得ていた。しかし、今回の事態でその信用は崩壊した。
情報機関「モサド」のエフライム・ハレビ元長官は米CNNに、「ハマスがこれほどの量のロケット弾を持っているとは思わなかった」と語った。政権にとって、今回の攻撃は想定外だったとみられる。
ネタニヤフ政権の進める最高裁判所の権限を弱める「司法改革」を巡っては、改革に反対する大規模デモが各地で起き、予備役を拒否する運動も広がっていた。今回の事態で政権への不満がさらに高まるのは必至だ。
ネタニヤフ首相は7日、対立してきた最大野党のヤイル・ラピド党首やベニー・ガンツ元国防相に緊急の挙国一致政府に加わるよう求めた。ラピド氏は「我々は一致して敵に立ち向かわなくてはならない」と前向きな姿勢を示している。【10月9日 読売】*********************
【イラン革命防衛隊がハマス・ヒズボラとともに計画作成に関与との報道】今後に向けて大きなポイントとなるのがハマスの後ろ盾ともなっているイランの関与の問題。表向きイランは直接関与を否定しています。
****イラン、ハマスのイスラエル攻撃への関与を否定****テヘラン:2023年10月9日月曜、イランはパレスチナのイスラム主義組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃への関与を、根拠のない主張だとして否定した。
外務省のナセル・カナニ報道官は記者団に対し「イランの役割に関する非難は、政治的な理由に基づく」と述べた。同氏は、イランはパレスチナを含め、他国の意思決定に介入しないと述べた。(後略)【10月9日 ARAB NEWS】******************
原子力空母ジェラルド・フォードを中核とする空母打撃群の東地中海に派遣するよう指示し、イスラエルへの武器供与拡大も発表しているアメリカですが、ブリンケン国務長官はイランが関与した可能性については、「ハマスが存在しているのはイランによる長年の支援があったからだ」と指摘しつつも、イランが今回の攻撃を指示したり背後にいたりする証拠は「まだ見つかっていない」としています。
ハマスの動機については「サウジアラビアとイスラエルを結び付けようとする努力を妨害することが動機の1つだったとしても不思議ではない」とも。【10月9日 テレ朝newsより】
イランの直接関与を認めると、アメリカとしてもイランへの対応を迫られますので、慎重姿勢のようです。
パレスチナのイスラム組織ハマスの幹部らの話として、イランがハマスによるイスラエル攻撃計画の立案を支援していたと報じています。レバノンの首都ベイルートで2日に開かれた会合では、攻撃実施を承認したとのこと。
****イラン、ハマスのイスラエル攻撃計画に関与****イラン革命防衛隊が8月から作戦会議に参加、10月2日に攻撃を承認していた
パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスが7日にイスラエルに対して行った大規模な奇襲攻撃は、イランの治安当局者が立案に関わっていたことが分かった。レバノンの首都ベイルートで2日に開かれた会合でイラン当局者が攻撃を承認した。ハマスとレバノンのシーア派組織ヒズボラの幹部が明らかにした。
両組織の幹部によると、イラン革命防衛隊(IRGC)の幹部はイスラエルへの陸海空からの侵入を立案するため、8月からハマスと協力していた。
ベイルートで数回会合が開催され、作戦の詳細が練られたという。会合にはIRGCの幹部のほか、ハマスとヒズボラなどイランの支援を受けている四つの武装集団の代表が出席した。(中略)
ある米政府高官はレバノンで開催されたという一連の会合について「現時点で(ハマスなどによる)証言を裏付ける情報はわれわれにはない」と述べた。しかし欧州の政府関係者とシリア政府の顧問は攻撃の立案へのイランの関与について、ハマスとヒズボラの幹部と同じ説明をした。
ハマス高官のマハムド・ミルダウィ氏は会合についての質問に対し、ハマスが独自に攻撃を立案したと述べた。「これはパレスチナとハマスの決定だ」と話した。
イラン国連代表部の報道担当者は、同国はガザの行動を支持しているが、指示はしていないと述べた。「パレスチナの抵抗運動が行った決定は極めて自主的であり、パレスチナの人々の正当な利益と揺ぎなく一致している」とし、「パレスチナの対応はパレスチナによって単独で行われており、われわれは関与していない」と述べた。
イランが攻撃に直接関与したとすれば、イスラエルとの長期にわたる対立が表面化し、中東で紛争が拡大するリスクが高まる。イスラエル治安当局高官は、イスラエル人の殺害にイランが関与していることが分かれば、イラン指導部を攻撃すると明言している。
ハマス、ヒズボラの幹部とイラン高官によると、イラン革命防衛隊の計画は、イスラエルの北に拠点を置くヒズボラおよびパレスチナ解放人民戦線、ガザ地区とヨルダン川西岸地区のパレスチナ・イスラミック・ジハード(イスラム聖戦)とハマスで、イスラエルに対して多正面の脅威を作り出すものだという。(後略)【10月9日 WSJ】*******************
イランの関与について、イスラエルが今後どのような対イラン「報復」を行うのか注目されます。
【注目される今後のヒズボラの動向】また、上記のように、やはりイランの支援を受けるレバノンのヒズボラ(イランと同じシーア派 なお、ハマスはスンニ派)が計画に参加しているとすれば、今後ヒズボラがどのような行動に出るのかも注目されます。
すでに“ヒズボラは「イスラエルが占拠しているレバノン領シェバーファームズにあるイスラエルの3拠点を大量の砲弾と誘導ミサイルで攻撃した」と述べた、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスが7日、イスラエルに対し、空、海、陸から大規模攻撃を行ったことに「連帯」したものだと説明している。”【10月8日 AFP】と報じられていますが、これは“挨拶代わり”でしょう。
この程度で終わるのか、あるいは、今後予想されるイスラエルのハマスへの報復攻撃に連動して、ヒズボラが対イスラエルで本格参戦するのか・・・
4回の中東戦争で無敵を誇ったイスラエルですが(第4次の緒戦ではエジプトの勝利を許したものの、その後反撃してスエズ運河渡河まで至りました)、唯一勝てなかったのがヒズボラ。
2006年のレバノン侵攻で、イスラエル軍はヒズボラの抵抗で100人以上の兵士を失い、停戦に応じることに。エジプトもシリアも勝てなかったイスラエルに、実質勝利とも言える成果をあげています。
そのヒズボラが本格参戦すれば、イスラエルとしては大きな負担になります。(ガザ地区はイスラエルの南、レバノンはイスラエルの北に位置しています)
イラン・ハマス・ヒズボラが協議したとされる計画では、どのような作戦が立案されているのか・・・。

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