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Channel: 孤帆の遠影碧空に尽き
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コソボ  セルビア系住民の武装集団が警察官を襲撃 繰り返す衝突

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(【9月26日 FNNプライムオンライン】 記事に画像説明がないので定かではありませんが、今回のセルビア系武装集団による警官襲撃事件で押収された武器でしょうか。 もし、そうだとしたら警官襲撃といったレベルではないですね・・・画像左端は指向性対人地雷)
【コソボ北部セルビア人居住地域で繰り返される衝突】欧州にあって対立・衝突を繰り返しているのが、一昨日ブログでも取り上げた南カフカス地方のアルメニアとアゼルバイジャンのナゴルノ・カラバフをめぐる争い、もうひとつがバルカン半島のセルビアとコソボの問題。
後者では、コソボ領内北部にセルビア人居住地域があって、コソボ政府との衝突を繰り返しています。ユーゴスラビア解体、コソボのセルビアからの分離独立をめぐる戦争に起因する対立です。
セルビアの自治州だったコソボでは90年代、多数派のアルバニア系住民がセルビアによる自治権の縮小に反発。独立を目指すコソボ側の武装組織と、セルビア側の治安部隊との紛争が激化しました。
ユーゴスラビア解体の過程で、アルバニア系住民を主体とするコソボは2008年にセルビアからの分離独立を宣言。激しい戦闘となりましたが、NATOがコソボを軍事支援したこともあって、コソボは実質的に独立。しかし、(欧米から“悪者”扱いされ、NATOによって激しい空爆までされて敗戦に追い込まれた)セルビアはこれを承認していません。
世界約110カ国がコソボの独立を認めているものの、セルビアのほか、ロシアや中国、EU加盟国ではスペイン、ギリシャ、ルーマニア、スロバキア、キプロスが独立を認めておらず、コソボは国連にも加盟していません。(国内に分離独立運動を抱えている国は、コソボの独立を容認できないという問題があります)
仇敵の関係にあるセルビアとコソボですが、ともにEU加盟を目指しており、加盟実現のためには関係正常化が条件となるということで、国家間の対立については一応は矛を収めた形にはなっています。
****関係正常化へEU計画履行に合意 対立続くセルビアとコソボ****欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は18日、対立が続くセルビアとコソボの関係正常化に向けたEUの計画をどのように履行するかについて、両国が暫定合意したと発表した。AP通信が伝えた。
北マケドニア(旧マケドニア)のオフリドで、セルビアのブチッチ大統領、コソボのクルティ首相と協議したボレル氏が、記者会見して明らかにした。セルビアの自治州だったコソボは、紛争を経て2008年に独立を宣言。セルビアは認めておらず、両国の対立は続いている。 ロイター通信によると、ブチッチ氏は「いくつかの点で合意したが、全てではない。最終合意ではない」と述べた。【3月19日 共同】**********************
しかし、実際には冒頭にも書いたように、コソボ(国民の90%を占めるアルバニア系に対し5%がセルビア系住民)領内北部のセルビア人居住地域で衝突が絶えず、このセルビア人の抵抗をセルビアが支援(とコソボ側が主張)、これにコソボが反発するという形で、両国の関係も改善しません。
2022年8月には、自動車のナンバープレートの扱いから騒動に。“コソボは今年(2022年)、北部のセルビア系住民に対し、コソボがセルビアの一部だった1999年以前の古いナンバープレートを付け替えるよう要求。これに反発した住民が暴力的な行動を取るなどしていた。また、判事や検察官、警官などの公職に就く人が抗議のため今月一斉に辞職する事態に発展していた。”【2022年11月24日 ロイター】
この問題はEU仲介で“セルビアはコソボの都市名を冠したナンバープレートの発行をやめ、コソボは車両の再登録に関するさらなる措置を停止する。”【同上】という形で一応合意。
しかし、合意直後の2022年12月、セルビア系の元警官が他の警官に暴行したとして逮捕されたことがセルビア系住民の抗議行動を惹起。
釈放を求めるセルビア系住民が警察と銃撃戦を繰り広げ、逮捕された元警官の首都移送を防ぐために道路に10カ所以上のバリケードを築く事態に。
緊張緩和を求めるアメリカとEUの仲介で、“元警官が検察当局の要請により拘束を解かれ、自宅軟禁状態に置かれた”【2022年12月29日 ロイター】とのことで22年年末に道路封鎖は解除されました。
このあたりの経緯は2022年12月29日ブログ“繰り返す対立  コソボとセルビア アルメニアとアゼルバイジャン”で取り上げました。
しかし、上記ブログ記事で“今回の緊張状態はいったん収まったとしても、今後何らかの問題で再び緊張が高まる事態になりうることは容易に想像できます。”と書いたように、基本的な対立が緩和された訳ではなく、火種が残ったままですから何度でも同じような衝突が起きます。
今年5月には、北部のセルビア系が多数派の地域でセルビア系住民が市長選をボイコットし、アルバニア系の市長が誕生したことから、緊迫した状況になりました。
****コソボで治安部隊とデモ隊が衝突 アルバニア系市長の誕生で民族対立が激化****旧ユーゴスラビアのコソボで、少数派のセルビア系住民のデモ隊と治安維持部隊が激しく衝突し、少なくとも25人が負傷した。
群衆が治安部隊に激しく殴りかかり、辺りでは催涙弾や閃光弾が飛び交っている。
ロイター通信によるとコソボ北部の街で29日、セルビア系住民と治安維持部隊が衝突し、治安部隊側だけで少なくとも25人が負傷、うち3人が重傷した。
コソボは2008年に独立を宣言したものの、国民の90%を占めるアルバニア系に対し5%のセルビア系住民が、独立を認めず対立が続いている。
こうしたなか、4月、北部の市長選挙で、アルバニア系市長が誕生したことをきっかけに両民族の対立が激化し、NATO=北大西洋条約機構の治安維持部隊が鎮圧に乗り出す事態となっている。【5月30日 FNNプライムオンライン】*******************
****NATO、コソボに700人追加派遣=衝突で隊員30人負傷****北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は30日、ノルウェーの首都オスロで記者会見し、コソボ平和履行部隊(KFOR)に新たに700人を派遣すると明らかにした。コソボ北部でセルビア系住民のデモ隊と警察が衝突するなど緊張が高まり、KFORの隊員30人が負傷していた。【5月31日 時事】**********************
このあたりの経緯は、5月30日ブログ“コソボ  根深いセルビア系住民とコソボ政府の対立 NATO指揮下のコソボ治安維持部隊との衝突も”でとりあげました。
“フランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相は今月1日、欧州政治共同体(EPC)の首脳会合に参加するため訪問したモルドバで、コソボとセルビアの両大統領との4者会談を行い、セルビア系住民も参加して選挙をやり直すよう求めた。”【6月4日 毎日】
6月22日には、EUの外相にあたるボレル外交安全保障上級代表がEU本部のあるブリュッセルで、コソボのクルティ首相、セルビアのブチッチ大統領とそれぞれ数時間にわたる緊急協議(両氏が対面協議を拒んだため、ボレル氏が別々に会談)を行いました。
その後どうなったのか・・・情報を目にしていませんのでよくわかりませんが、少なくとも暴力的衝突の報道もないので、“それなりに”収まったのでしょうか。
【セルビア系住民の武装集団が警察官を襲撃】そして今度は・・・
****コソボ北部でセルビア武装集団が警官殺害、反首相派の犯行か****コソボとセルビア当局によると、コソボ北部で24日、セルビア系住民の武装集団が警察官1人を狙撃して殺害し、逃走した。武装集団側も3人が死亡した。

コソボ北部ではセルビア系住民が自治組織設立を要求し、コソボのクルティ首相がこれを拒否している。セルビアのブチッチ大統領は今回の犯行をクルティ氏に対する反乱だと評しつつ、コソボのセルビア系住民には冷静な対応を呼びかけた。

襲撃があったのはセルビア人が多数派を占める地域。バニスカという村の入り口にかかる橋上に十数人とみられるセルビア人武装集団がトラック数台で乗り付け、近づいてきた警察官を銃撃。1人を殺害した。その後、近くのセルビア正教会修道院に夜間まで立てこもった後、姿を消した。

セルビアとコソボは対立を続けており、欧州連合(EU)は双方との協議を行っていたが、前週に行き詰まった。

コソボ側は自治組織を認めれば国が民族ごとに分割されるとみる。セルビア側は公式にはコソボを領土の一部と見なすものの、争いを激化させるとの見方を否定。ただ、少数派セルビア系の人権が抑圧されているとコソボ側を批判している。【9月25日 ロイター】*********************
“襲撃には少なくとも30人が関与していて、手りゅう弾や対戦車兵器などが使われたという。警察が制圧に乗り出し、襲撃グループのメンバー6人を拘束したほか、3人が死亡した。”【9月26日 FNNプライムオンライン】

コソボのクルティ首相は襲撃者について「コソボに戦いに来た組織されたプロの一団」だと指摘しセルビアが支援したと主張しています。【9月25日 共同より】
一方、セルビアのブチッチ大統領は24日の会見で、「コソボ北部で起きることの全ての責任はクルティ(コソボ首相)にある。襲撃犯はコソボのセルビア人である。」として、セルビアの責任を否定しています。【9月26日 FNNプライムオンラインより】
部外者の私などは正直なところ、「どうしてそんなに憎しみあうのか・・・いいかげん別の道、和解の道を探ったらいいのに・・・」とも思いますが、おそらく今後も同じような衝突を繰り返すのでしょう。

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