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Channel: 孤帆の遠影碧空に尽き
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混乱が続く中央アフリカと南スーダン

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(中央アフリカの新たな暫定大統領に選出されたカトリーヌ・サンバパンザ氏 “flickr”より By Abayomi Azikiwe http://www.flickr.com/photos/53911892@N00/12064986894/in/photolist-jo9dgq)

【中央アフリカ:女性暫定大統領誕生 「誰も排除しない、あらゆる国民の大統領」】
その行方が国際的にも懸念されているアフリカの内戦・混乱・・・中央アフリカと南スーダンの近況について。

イスラム教系武装勢力「セレカ」が引き起こした混乱により、中央アフリカでは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)による1月3日発表では、総人口(約450万人)の5分の1が避難民となったとされ、また、首都バンギでは、人口の半数以上に相当する51万人が避難生活を余儀なくされている状況です。

こうした混乱のなかで、1月12日ブログ「中央アフリカ  暫定大統領、周辺国の圧力で辞任 混乱は未だ収まらず」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140112)でも扱ったように、イスラム武装勢力「セレカ」の指導者で、ボジゼ大統領を国外に追い出して暫定大統領の地位についたジョトディア氏が、周辺国の圧力もあって辞任しています。

また、12日には、対立するイスラム教系とキリスト教系の武装勢力の代表者らが停戦に合意しています。

しかし、いまだ多数派キリスト教徒住民と少数派イスラム教徒住民の衝突は続いており、ジェノサイドも危惧される危険な状況にあることが指摘されています。

****中央アフリカに「大量虐殺の恐れ」、国連が警告****
国連は16日、イスラム教徒とキリスト教徒の宗教間対立が深刻化している中央アフリカ情勢について、ジェノサイド(大量虐殺)に発展する恐れがあると警鐘を鳴らした。

同国では、反体制勢力の指導者から大統領に転じたミシェル・ジョトディア暫定大統領が辞任し、暫定議会に相当する国家移行評議会(CNT)が新大統領を20日に選出する準備に着手しているが、国内では暴力行為が治まらずにいる。

こうした中、中央アフリカを5日間にわたって訪問した国連人道問題調整事務所(OCHA)のジョン・ギング氏は16日、スイス・ジュネーブで記者会見し、中央アフリカ情勢には「ルワンダやボスニアなどで見られたあらゆる要素が備わっている。ジェノサイドの要素があることに疑いはない」と警告。残虐行為が日常化し、全国民に恐怖がまん延していると訴えた。

中央アフリカでは、昨年3月にイスラム教系の武装勢力連合「セレカ(Seleka)」がクーデターで政権を掌握した後、宗教間の衝突が激化し混乱が広がっている。米仏や中央アフリカ支援国際ミッション参加国の部隊が治安回復に努めているが、フランス軍が展開する北部の首都バンギでは緊張が高まっており、巡回中の仏軍兵士が市民に発砲したとの苦情も住民から出ている。

恐慌状態に陥ったイスラム系住民たちは、隣国チャドに脱出しようと北部の国境に殺到している。現地で取材するAFP記者も、避難民を乗せMISCAに参加するチャド軍に護衛された大型トラック数十台を目撃した。

ギング氏は、「この国(中央アフリカ)は政治的に崩壊している。公共サービスも、医療から教育、社会福祉まで何もかもが破綻状態だ」と指摘。現状では、長く共存してきたイスラム教系とキリスト教系の住民同士の衝突は宗教間紛争にまで至ってはいないが、「その可能性はある」と警告した。

国連によると、中央アフリカでは殺りくやレイプ、略奪行為が横行し、人口約460万人の約2割が国内避難民や難民となっている。【1月17日 AFP】
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キリスト教徒民兵の報復を恐れたイスラム教徒がカトリック教会に逃げ込む・・・というようなことも起きています。

****カトリック教会に逃げ込むイスラム教徒、中央アフリカ****
イスラム教徒とキリスト教徒の宗教間対立が深刻化している中央アフリカで、首都バンギの北方約100キロの都市ボアリにあるカトリック教会に女性と子どもを中心とする約700人のイスラム教徒が避難している。
避難民たちが二晩を過ごした教会の周りは約70人のフランス軍部隊が警護している。【1月20日 AFP】
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中央アフリカは、国家としてのまともな統治機構が独立以来存在していなかった“幽霊国家”とも言われますが、まずはジョトディア暫定大統領に代わる新大統領の選出が統治機構を確立していくうえでの第1歩となります。

****中央アフリカの暫定大統領に首都市長、同国初の女性大統領****
激しい戦闘が続いている中央アフリカの暫定議会は20日、首都バンギの女性市長カトリーヌ・サンバパンザ氏(59)を暫定大統領に選出した。同国で女性が大統領に就任するのはこれが初めて。

サンバパンザ氏は「闘士」と評されることもある実業家で、昨年から同市市長を務めていた。同日暫定議会の決選投票で大統領に選出された同氏は今後、情勢不安が慢性的に続く同国に平和を回復するという極めて困難な責務を担うことになる。

同国の元大統領の息子であるデジレ・コリンバ氏を75対53の得票数で破ったサンバパンザ氏は勝利演説の中で、イスラム教徒が大半を占めていた反政府武装勢力の連合体セレカの元戦闘員と、アンチバラカと呼ばれるキリスト教徒の民兵との衝突を終結させるよう呼び掛けた。

またサンバパンザ氏は自身を「誰も排除しない、あらゆる国民の大統領」と呼び、「人々の苦しみを終わらせ、全土で治安と国家権力を回復すること」を最優先事項に掲げた。【1月21日 AFP】
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混乱収束のために軍事介入している旧宗主国フランスの働きかけで、介入に腰が重いEUも500人規模の治安維持部隊を派遣することで合意しています。ただ兵員の確保も定かではなく、派兵もしばらく時間がかかりそうです。

****中央アフリカ:EUが派兵合意 来月までに500人****
欧州連合(EU)の外相会議は20日、無政府状態で大量の避難民が出ているアフリカ中部・中央アフリカ共和国に向け、治安維持部隊を派遣することで合意した。

500人程度で、来月末までに派遣を開始、首都周辺の治安確保にあたり、4〜6カ月駐留する見通し。外相会議は国連安保理に決議で派遣を認めるよう求めた。

危険度の高い任務になるため、英独伊などは地上軍の派遣を見送る方針を示している。スウェーデン、ポーランド、ベルギーなどが派遣を検討しているが、兵員の確保に困難が伴いそうだ。【1月21日 毎日】
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新大統領選出によって、ジェノサイドが防止されることを願います。

【停戦合意が近いとも言われるなかで、政府軍が攻勢】
一方、南スーダンでは、マシャール前副大統領率いる反政府軍とキール大統領の政府軍の戦闘が続いていますが、両者の出身部族間の対立の様相も呈しています。

両者の和平交渉は始まっていますが、双方とも交渉を有利に運ぶために、戦闘は激しさを増している状況です。
昨年12月15日に始まった一連の戦闘による避難者は40万人を超えたとみられています。

****住民の避難加速、1カ月で41万人余 内戦危機の南スーダン****
政権軍と反乱軍の交戦が続くアフリカ中部、南スーダン情勢で国連は15日、過去1カ月間の衝突で住民ら計約41万3000人が自宅などを捨てて避難したと報告した。避難者は過去1週間に激増したとしている。

両派の和平交渉は隣国エチオピアの首都アディスアベバで開かれたが、戦闘終結につながる成果は生まれていない。
国際医療組織「国境なき医師団」によると、南スーダンの上ナイル州などでの激戦で過去数日間、数百人が負傷、数千人が避難した。

国連によると、この戦闘で約7万8000人が近隣国へ避難。南スーダンの国内避難者は数十万規模に達している。女性や子どもが多い。約6万5000人が同国内の国連基地に保護を求めた。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、隣国ウガンダのウエストナイル地方へ逃れたのは4万2000人以上。エチオピアには約1万8600人が退避した。ケニアには約6800人、推定1万人がスーダンの西コルドファン、南コルドファン両州に難を逃れた。

UNHCRは14日の時点で、南スーダンの中部ジョングレイ州や上ナイル州など同国の一部地域で戦闘が続いたと報告していた。

南スーダンの内戦の危機は、キール大統領とクーデターを主導したとされるマシャル前副大統領との確執が原因。昨年12月5日以降、両派間の戦闘が激化した。【1月16日 CNN】
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双方が“停戦に大筋合意”したとも報じられているなかで、ウガンダ軍の介入に支援された政府軍が最近になって攻勢に転じ、10日に油田が多い北部ユニティ州の州都ベンチウを奪還、18日にはジョングレイ州の州都ボルの奪還を宣言しています。

****南スーダン政府軍、次々拠点奪回=反乱軍は地方に潜伏―戦闘終結予断許さず****
内戦が続く南スーダンで、政府軍は反乱軍に奪われていた拠点都市を次々と奪回している。
20日には産油地帯もある北部の上ナイル州の州都マラカルを奪い返したと発表。これで反乱軍は掌握していた3州都を全て失った。
戦況は政府軍に有利に傾いているが、戦闘が終息に向かうかは予断を許さない。

近隣国で構成する「政府間開発機構(IGAD)」は1月に入り仲介を本格化させ、エチオピアの首都アディスアベバで和平交渉が始まった。

その一方で政府軍は攻勢を強め、10日には産油地帯を含む北部ユニティ州の州都ベンティウから反乱軍を駆逐した。
首都ジュバの北方200キロにあるジョングレイ州の州都ボルは、内戦の行方を決する要衝と位置付けられ、ウガンダ軍の支援を得た政府軍は猛攻を仕掛けた。

廃虚となったボルからは20日、戦乱の中で民兵が病院から患者を引きずり出して処刑し、食料を奪った様子も報じられた。病院の外の道路には遺体が放置されているという。

政府軍は19日、「ジュバとボルを結ぶ幹線道路は安全」と宣言した。しかし「ボルの解放は州全体の解放とは違う」と認めた。ジョングレイ州だけで日本の国土の3分の1に近い12万平方キロの広大な面積を持ち、地方に潜む反乱軍の掃討は容易ではない。【1月21日 時事】 
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南スーダンの独立後の道のりが平坦ではないことは当初から予想はされていましたが、最悪のシナリオに沿って現実は進行しています。

アフリカも内戦・武力衝突、貧困、飢餓・・・といったネガティブな側面だけでなく、過去5年間の経済成長率では、上位10カ国のうち7カ国がアフリカ諸国であるというように、経済的に躍進を遂げている側面もあります。

ただ、そうした経済成長は政治・社会の安定があって初めて可能になるものであり、中央アフリカや南スーダンにおける混乱収束・安定確立が1日も早く達成されることを望みます。

そのために国際社会も支援していく必要がありますが、政治的対立を武力で解決しようという風潮を、これらの国々の指導者・国民自身が捨てることが先ず必要とされます。

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