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Channel: 孤帆の遠影碧空に尽き
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ミャンマー  特使派遣問題で難航 ASEANは首脳会議から国軍トップ排除の異例の決定

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(ミャンマーの首都ネピドーの裁判所に出廷したウィン・ミン大統領(右)とアウン・サン・スー・チー国家顧問(左)。2021年5月24日撮影 【10月13日 AFP】)
【スー・チー氏との面会で対立するASEANと国軍】ミャンマー国軍のミン・アウン・フライン最高司令官も交えて4月24日に開かれたASEAN首脳会議で合意した「五つの合意」に基づいて、ASEANが要求している特使派遣をミャンマー国軍が容認せず実現していない件については、10月5日ブログ“ミャンマー 進展しないASEANによる仲介 続く経済混乱 “寝返り”兵士・警官も”でも取り上げました。
****スー・チー氏との面会を要請か ASEAN特使****ミャンマーで、クーデターで全権を掌握した国軍の統制下にある外務省は14日に声明を出し、東南アジア諸国連合(ASEAN)の特使派遣が実現しないのは国内法で認められていない「特定個人」との面会にこだわったことが障害となったためだと主張した。軟禁中のアウン・サン・スー・チー氏らが念頭にあるとみられる。 ASEANは15日、ミャンマー情勢を巡り、オンラインによる緊急外相会議を開く。特使派遣や市民への暴力停止が進まないことから、今月下旬の首脳会議に国軍のミン・アウン・フライン総司令官を招待しない案も浮上している。 声明によると、特使に選出されたブルネイのエルワン第2外相は11〜14日にミャンマーを訪れることで調整が進んでいた。ミャンマー外務省は特使を歓迎するとしながらも「いくつかの要望は法律により認められていない」と指摘。さらに「政治的動機に基づく圧力をかけないよう望む」とけん制した。 国軍報道官は14日、米政府系のラジオ自由アジア(RFA)で、スー・チー氏らとの面会は認めないとの方針を示した。【10月15日 共同】***********************
ASEANとしては、一方の当事者であるスー・チーに会わないことには「仲介」の意味をなさず、ASEANの存在異議にもかかわりますが、ミャンマー国軍としては「犯罪者」であるスー・チー氏に自由に発言させる訳にもいきません。
ただ、経済的苦境にあって、国際支援をひつようとしている国軍側には、一定の譲歩の姿勢も出ているとも報じられていました。
****経済苦、ミャンマー国軍軟化 ASEAN特使とNLD面会容認も****2月にクーデターで国軍が実権を握ったミャンマーで、経済的な苦境が続いている。通貨の下落で輸入品である食料品や肥料などが値上がりし、生活を直撃。内政の混乱で国際社会や民主派からの批判が強まることが懸念されるなか、国軍は東南アジア諸国連合(ASEAN)との外交姿勢も軟化させ始めた。 「田んぼに必要な肥料や除草剤は、この1カ月で2倍以上に値上がりした。肥料が買えないので今後の収穫量は減り、収入も減るだろう」。ミャンマー中部マグウェーの農家ウィンアウンさんは、現地の朝日新聞助手の取材にそう語った。 背景にあるのが、通貨安だ。通貨チャットはクーデター前まで1ドル=1300チャット台で推移していたが、9月下旬には闇相場で3千チャットまで急落。様々な輸入品の価格が急騰し、食用油は一時、クーデター前の2倍超になった。 クーデター後、最大都市ヤンゴンでは失業者が続出し、地方の農家などが受け皿となってきた。だが、物価の高騰で地方の暮らしも厳しさを増している。 アジア開発銀行は9月、ミャンマーは18・4%のマイナス成長になるとの見通しを出した。工業分野の生産量が落ちて雇用も減少。外国の直接投資も大幅に減った。新型コロナ禍にクーデター後の政情不安が経済に追い打ちをかけている。 苦境を訴える声に対し、国軍のゾーミントゥン報道官は9月下旬の記者会見で「全ての責任を持つ」と話し、経済を立て直す意向を示した。だが、有効な対策は打ち出せていない。 国内の苦境は、国軍の外交姿勢にも影響している。難航していたASEAN特使の受け入れについて、国軍関係者は12日、朝日新聞の取材に近く特使を受け入れる考えを示し、「面会相手には(アウンサンスーチー氏が率いる)国民民主連盟(NLD)のメンバーも含まれる可能性がある」と明かした。 ASEANは4月下旬に特使派遣や関係者間の対話促進などに合意したが、国軍が特使と民主派との面会に反発。インドネシアやマレーシアなどの加盟国から、民主派との面会実現や暴力停止などに協力していないとして、「首脳会議に国軍代表者を呼ぶべきではない」とする声も出ていた。 経済立て直しでASEAN諸国の協力が得られなければ国軍はさらに苦しい立場となり、統治の正統性も揺らぎかねない。このため特使派遣について一定程度の譲歩はやむを得ないと判断したとみられる。
だが、ASEANが求めるスーチー氏との面会は拒み続けている模様。特使派遣に向けた条件交渉を続けており、再び態度を硬化させる可能性もある。【10月14日 朝日】********************
しかし、スー・チー氏と特使の面会は国軍にとっては認めがたいでしょう。
ミャンマー国軍が設置した「国家統治評議会(SAC)」のゾーミントゥン報道官は、臨時首脳会議で合意した特使の受け入れが遅れている理由について「ASEAN側が(我々に)できないことを強制しようとしているためだ」と述べ、刑事被告人と外国からの特使との面会を「受け入れられる国などない」とも。【10月9日 毎日より】
もちろん刑事被告人云々は形式論で、クーデターで権力を奪い取ったスー・チー氏に、ASEAN・国際社会に向けて、国軍批判をあれこれ発言されるのは認められないということです。
【ASEAN異例の決定 首脳会議から国軍トップを排除】結局、特使派遣問題は前進せず、上記記事にもあるASEAN内部のインドネシアやマレーシアなどが示してした「首脳会議に国軍代表者を呼ぶべきではない」という対応が現実のものとなっています。
****ミャンマー軍トップを排除=下旬のASEAN首脳会議****東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国ブルネイは16日、声明を出し、今月下旬に開かれる首脳会議に、ミャンマーからは政治レベルの代表を招かないことを決めたと発表した。
15日の緊急外相会議で一致した。クーデターで権力を握った国軍のトップで、「暫定首相」を務めるミン・アウン・フライン総司令官は出席を認められない見通しとなった。 ASEANは4月の首脳会議で特使派遣や暴力停止で合意したが、半年が経過しても実現せず、一部加盟国の間で国軍への反発が広がっていた。【10月16日 時事】 *********************
当然ながら、国軍側は強く反発しています。
****首脳会議に招かれず…ミャンマー軍が反発****ASEAN(=東南アジア諸国連合)がクーデターを主導したミャンマー軍のトップを首脳会議に招かない決定をしたことについて、軍の報道官は16日、「ASEANの原則が弱体化されている」などと反発しました。

ASEANは、ミャンマー軍が特使の派遣など5つの合意項目を守っていないとして、今月下旬の首脳会議にミャンマー軍のトップを招かないことを決めました。

この決定について、ミャンマー軍の報道官はNNNの取材に応じ、「ASEANの原則である『内政不干渉』と『全会一致』が弱体化されている」と反発しました。

その上で、「ASEANは、EUやアメリカの干渉を受けている」などと主張しました。

ミャンマー軍の統制下にある外務省も、「圧力をかけることは逆効果だ」との声明を出しています。【10月17日 日テレNEWS24】*****************
国軍のゾー・ミン・トゥン報道官は「決定を見直さないなら前例となり、いずれ他の加盟国もミャンマーのように苦しむだろう」とも警告しています。【10月17日 時事より】
人権問題・民主化では“脛に傷を持つ”国ばかりのASEANですから、ゾー・ミン・トゥン報道官の警告は、必ずしも無意味な“捨て台詞”ではありませんが・・・。
なお、国軍側は首脳会議には外務省高官を派遣する方向で検討しているとのことです。
ASEANにしては、珍しく“筋をとおした”対応となりましたが、国軍に批判的な欧米諸国は今回対応を強く支持しています。あるいは、そういう欧米の圧力もあってのASEANの決定だったのかも。そのたらいが、国軍側の「ASEANは、EUやアメリカの干渉を受けている」との反発になるのでしょう。
****欧米、支持の姿勢鮮明 ASEANのミャンマー特使***東南アジア諸国連合(ASEAN)が検討しているミャンマーへの特使派遣をめぐり、欧米各国が支援する姿勢を鮮明にしている。
15日には各国が共同声明を発表し、クーデターでミャンマー統治の実権を握った国軍に特使と関係者との自由な面会などを求めた。だが国軍は特使と民主派との面会を認めておらず、進展は見通せない状況だ。 「特使への支援を改めて表明する」。15日に声明を発表したのは米国、英国、韓国、欧州連合(EU)など9の国と地域。「インド太平洋地域でのASEANの中心的な役割を認める」とした。 ASEANは、4月の首脳会議で特使派遣に合意。8月に今年の議長国ブルネイのエルワン第2外相を特使に任命し、国軍側と派遣に向けて交渉している。 欧米諸国は2011年まで続いたミャンマー軍政時代、制裁に加わらないASEAN諸国を厳しく批判した経緯がある。今回ASEAN支援を鮮明にした背景には、国連のミャンマー担当特使などと国軍との対話が進まず、実質的に国軍と交渉できているのがASEANだという実情がある。 一方、人権問題を重視する欧米各国は、国軍側に外国人を含む「不当に拘束された人」の即時解放や「特使が常時行き来し、全関係者に自由に会える」環境なども求めている。 周辺諸国からの孤立を避けるため、特使自体は受け入れる方針の国軍側だが、アウンサンスーチー氏や民主派勢力との面会は「裁判中」などとして認めていない。欧米の求める拘束者の解放や全関係者への面会は、受け入れない考えだ。 このためASEAN内には、特使がまずミャンマーを訪れることを優先すべきで、関係者との面会は先でもいいという意見もある。 15日の緊急外相会議では、今月下旬の年次首脳会議には国軍トップを含め、政治的代表を呼ばないことを決めた。国軍側への圧力を強める動きで、加盟国間の内政不干渉を原則として憲章で定めているASEANとしては、異例の決定だ。【10月17日 朝日】*******************
【国軍 特使問題で交渉継続姿勢 国内拘束者の大量解放も】今回は”異例の決定”をしたASEANですが、内部にはミャンマー同様に軍事クーデターで実権を掌握したタイ政権、軍政が頼りとする中国に極めて近いカンボジアやラオス、国内人権問題への干渉を嫌うベトナムのように、ミャンマー軍政に融和的な国もあって、国軍対応には温度差がありますので、今後どうなるかは・・・よくわかりません。
****ミャンマー軍トップ 特使受け入れでASEANと交渉継続の姿勢****(中略)これについて(ミン・アウン・フライン)司令官は18日のテレビ演説で「ASEANの特使の要求の中には、交渉の余地がないものがある」と述べ、特使と、アウン・サン・スー・チー氏らとの面会などをめぐって、立場に隔たりがあることを示唆しました。

また「悪化する暴力は軍に抵抗する勢力がもたらしているのに、誰も止めようとしない」と述べ、ASEANの対応に不満を訴えました。

一方で司令官は「交渉と協議はまだ続いている。ASEANの一員として最善を尽くす」と述べて、特使の受け入れに向けて引き続き交渉を続ける姿勢を示しました。

内政不干渉を原則とするASEANが異例の厳しい対応をとる中、ミャンマー軍がどの程度の歩み寄りをみせるかが、今後の焦点になります。【10月18日 NHK】********************
ミン・アウン・フライン司令官は「4月以降、暴力は深刻化している。(民主派が)扇動し、一部の少数民族武装勢力が支援しているからだ」と非難。「誰も暴力を止めようとせず、われわれに解決を求めるだけだ」と国際社会に不満を示しています。
なお、国軍側のASEAN・国際社会に向けたアピールでしょうか、国内拘束者の大量解放の方針も伝えられています。
****ミャンマー軍政、デモ参加者5000人超を釈放へ****ミャンマー軍事政権は18日、国軍のクーデターに抗議して拘束され収監されているデモ参加者のうち、5000人以上を釈放する方針を発表した。 軍事政権トップのミン・アウン・フライン国軍総司令官によると、今月後半の祝日「タディンジュ」に合わせて5636人が釈放される。 これに先立ち、東南アジア諸国連合は、流血の事態を打開するとした軍政の公約が守られていないとして、26〜28日に開催される首脳会議にミン・アウン・フライン氏を招かないと決定していた。 ミャンマーでは今年2月のクーデター以降、混乱が続いている。現地の人権監視団体「政治囚支援協会」によると、抗議デモ弾圧で死亡した民間人は1100人以上、身柄を拘束された人は8000人超に上り、現在も全土で7300人以上が拘束下にある。 ASEANは、ミャンマーに派遣する特使に同国内の「すべての当事者」への面会を認めるよう求めているが、軍政側は拒否している。「すべての当事者」という表現には、アウン・サン・スー・チー国家顧問も含まれるとみられている。 こうした中、ASEAN外相会議は16日、首脳会議にはミャンマーの「政治に関わらない立場の代表者」を招くと決定。軍政側は、内政不干渉の原則に反していると非難していた。 【10月18日 AFP】***********************

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