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Channel: 孤帆の遠影碧空に尽き
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日本・ベトナムの借金漬けベトナム人実習生を“しゃぶり尽くそう”とする構図

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(県内在住のベトナム人技能実習生や留学生たちでつくる県ベトナム人交流会が初めて開催するサッカー大会は2日、宮崎市田吉の大淀川市民緑地であった。地域や職場のベトナム人でつくる8チーム約160人が参加。悲願だった「公式戦」が実現し、選手たちが気迫のプレーを見せた。【5月3日 宮崎日日新聞「県ベトナム人交流会 感染対策徹底しサッカー大会」】 多くの実習生は日本での生活に馴染んでいる・・・と思いたいのですが)

 

【「失踪村」】

途上国への技術移転の名目で、安い労働力として働かされていると指摘されてきた技能実習生。その半数以上を占めるのがベトナム人だ。劣悪な労働環境などから失踪する例が後を絶たない。”【5月2日 朝日】

 

****技能実習生と失踪****

外国人技能実習生は2015年末の19万2655人から、19年末には41万972人と2倍以上に増えた。20年末には新型コロナ禍でやや減少して37万8200人に。

 

国別では、労働者送り出し政策の後押しを受けたベトナムが16年に中国を抜いて最多となり、20年末時点では半数以上の約21万人を占める。

 

人数の増加に伴い、実習先からの失踪者も増えている。15年は5803人だったが、ピークの18年には9052人と1.5倍以上に増加。20年は5885人だった。【同上】

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そうした「失踪」ベトナム人実習生が集まる「失踪村」があるとか。

(そもそも「失踪者」という言葉自体が、まるで「逃亡奴隷」のような響きがあり、「失踪者」個々の事情、あるいはルール違反等の失踪者側の問題以前に、そうした「逃亡奴隷」的なものを生み出すシステムに問題があると思います)

 

****(失踪村 ベトナム人技能実習生)失踪村、お金も仕事もない 元実習生たち 過酷な労働、夢砕かれて****

まだ冷たい風が吹いていた2月11日、埼玉県上里町にある木造2階建てアパートの一室を訪ねた。JRの駅から車で15分。周囲には畑や養鶏場に交じって、鉄鋼やプラスチック工場が集まる工業団地が点在する。

 

「このあたりは失踪村だよ」と、案内してくれたNPO「アジアの若者を守る会」代表の沼田恵嗣さん(59)は言った。

 

工場で働く日系ブラジル人ら外国人が多く住んでいる群馬県から埼玉県にかけての一帯に、各地の実習先から失踪したベトナム人が、知り合いを頼ってたどりつくという。沼田さんは「上里町だけで千人。北関東全体で2千~3千人はいるのではないか」と話す。

 

この日はベトナム旧正月の前日。日本で言えば、大みそかだ。扉を開けると、香ばしい匂いが漂い、床の上に牛の煮込み、揚げ春巻き、えび、フランスパンなど色とりどりのベトナム料理が並んでいた。

 

だが、作っていた元実習生のブー・バン・ズンさん(36)は悲しげな表情を浮かべていた。貧しい家族を助けるために借金して来日したのに、安い給料と職場環境に耐えられず逃げ出した。コロナ禍で仕事が途絶え、結局、稼げなかった。

 

帰国しようと出入国在留管理局に出頭したが、コロナ禍で飛行機は減り、チケットも高騰していた。今は特別な在留許可を得て、帰国できる日を待つ。チケット代のため、妻に新たな借金をさせて送ってもらった。「何もないまま帰るのは、とても恥ずかしい」と涙を浮かべた。

 

部屋は友達が借りている。仕事がほとんどないズンさんは居候の身だ。2LDKで4万2千円の家賃、光熱費や食費を同居する6人で分担する。誰よりも貧しく、ベトナムに妻と11歳の息子、6歳の娘がいるズンさんは1万円だけ払っている。

 

居間には大型の冷蔵庫が一つあるだけだ。男女が2部屋に分かれ、布団を敷いて眠る。ズンさんは料理や掃除、洗濯を一手に引き受ける。「お金もない、仕事もない。とてもつらい」

 

(中略)来日8年の女性ジンさんは徳島県の縫製会社で、1時間に2千足の靴下を作るノルマを課せられた。どう頑張っても700足しか作れなかった。日曜以外は朝7時から深夜まで働き、月給は10万円。6畳一間に7人で住まわされ、睡眠時間は3時間しかなかったという。ジンさんを含めて3人が耐えきれず逃げた。

 

みなの楽しみは1カ月に1度だけ、ベトナム人が営むカラオケ店で、ベトナムの歌を歌い、食事をすることだ。信じられるのは、苦労をともにする仲間たちだけ。アパートの他の部屋の住民とは、あいさつはしても関わらない。同じベトナム人であってもだ。

 

アパートの別の部屋では昨年、風呂場で豚1頭を解体したとしてベトナム人の元実習生が、と畜場法違反の容疑で逮捕された。だが、事件について尋ねても、みな「ほかの部屋のことは知らない」と言った。ズンさんもここにたどり着いたのは今年1月。その前のことは知らない。【同上】

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【借金を膨らませる日本の監理団体への接待】

技能実習生が失踪する大きな要因が、来日時に抱える多額の借金にあることは多くの事例からも明らかで、再三指摘されるところです。

 

その「借金」が膨らむ原因のひとつは、日本側の監理団体への「賄賂」「接待」にあるとも。

 

****(失踪村 ベトナム人技能実習生)逃亡先も悲惨、命がけで働き****

(中略)失踪した技能実習生は正規の仕事にはつけなくなり、様々なリスクが伴う。

 

今年2月、群馬県高崎市の山の中で、ベトナム人の元技能実習生ホアン・バン・レンさんの法要が営まれた。昨年3月、太陽光パネル設置のため、山中で作業中に重機が転落し、死亡した。30歳の若さ。遺品の財布に入っていた金はわずか2062円だった。

 

婚約者で自分も技能実習生のチャン・トゥイ・ハンさん(30)はすすり泣きながら、祈りを捧げた。自分の実習が終わったら結婚する約束をしていた。「悲しい、悔しい。なぜ死ななければならなかったの」

 

レンさんは貧しい家族を助けたいと15年5月に来日後、半年で逃げ出した。長野県の農家で働いたが、「給料が安くて、食事もまともにできなかった」とレンさんの父親ホアン・バン・ルーさん(59)は言う。その後はなかなか仕事が見つからず、ルーさんが仕送りをした。やっと見つかった仕事で命を落とした。

 

ルーさんは息子の失踪を止められなかったことを悔やむ。「実習先できちんとした給料をもらっていれば」。残ったのは100万円の借金だけ。「残りの人生で借金を早く返済し、孫の代に負担をかけないようにしたい」と話した。(中略)

 

 ■理不尽な借金、抱え来日

技能実習生が失踪する大きな要因が、来日時に抱える多額の借金だ。ベトナム政府は、実習生が送り出し機関に支払う費用の上限を日本円で約40万円と決めている。

 

だが、実際は送り出し機関やブローカーなどに計100万円近く払う人が多く、大半の人は借金でまかなう。ベトナムの給与水準から考えると、日本の感覚では1千万円以上に近いという。

 

それでも、職場に恵まれ、借金を返した上で、さらに稼いで帰国する人も多いため、来日する人は後を絶たない。なぜこんなに多額の費用が必要なのか。

 

「原因は日本側への接待や賄賂だ」。実習が適切に行われているか監督する監理団体「アジア人材サポート協同組合」(千葉市)の代表理事、竹内優明希(まさあき)さん(41)はそう語る。

 

竹内さんがある書類を見せてくれた。ベトナムのある送り出し機関が、竹内さんの監理団体に示した接待や賄賂の申し出だ。「飲食費、交通費、1回のカラオケ、2回のマッサージなどを負担する」とある。「カラオケ」は女性の接待がつき、「マッサージ」は性的なサービスつきだという。現金約15万円の提供も提示している。

 

ここまでするのは、送り出し機関が日本の監理団体の機嫌を損ねたら、利益を出せないからだ。

 

日本の企業が技能実習生を雇う場合、監理団体を通じて求人を出すことになっている。送り出す実習生が多ければより多くの手数料を得られる海外の送り出し機関にとって、監理団体から1人でも多くの求人をもらうことが大切になる。

 

竹内さんによると、ベトナムでは求人1人あたりの賄賂の相場は20万円という。賄賂や接待の費用が本来必要な費用に上乗せされ、そのつけを実習生が払わされている構図だ。

 

竹内さんの監理団体は、実習生が負担する上限額を約50万円と決めている。これを守らない送り出し機関とは取引をしない。

 

「日本側が賄賂をもらわなければ、実習生は多額の借金を背負わずにすむ」と竹内さんは指摘する。

 

 ■国に対応求める声

だが、コロナ禍で苦しむ失踪者たちの支援はボランティア任せだ。支援団体からは、国や企業に対応を求める声が上がる。

 

関東を中心に活動するNPO「アジアの若者を守る会」は、ベトナム出身の塩田ユンさん(39)がSNSで相談を受け、代表で元警察官の沼田恵嗣さん(59)が未払い賃金の支払いなどについて実習先と交渉する。失踪者が入管に出頭するのが支援の条件だ。(中略)

 

金も住む場所もない元実習生ら千人以上を埼玉県内の大恩寺で預かってきたベトナム人の尼僧ティック・タム・チーさん(43)は「私もボロボロ。もう限界」と話す。今年、自身が新型コロナに感染した。

 

「国が制度を作って受け入れ、日本社会を支えてきたのが実習生たち。彼らが困っているなら、政府や企業が責任を持って対応に当たるべきだ」と訴える。

 

賃金の未払いやいじめに遭えば、失踪以外ないと考えてしまう実習生もいる。外国人労働者問題に詳しい神戸大の斉藤善久准教授(労働法)は「実習生の意思による転職を柔軟に認め、支援するなどの対応が必要だ」と提言する。【同上】

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【ベトナム官僚の利権ともなっている実習生許認可権】

それにしても、“ベトナム政府は、実習生が送り出し機関に支払う費用の上限を日本円で約40万円と決めている”にもかかわらず、借金が膨らむのか?

 

日本側監理団体の問題、そして常に指摘されるベトナム側の送り出し機関の問題に加えて、ベトナム国内の官僚の汚職体質も絡んできます。

 

****利権となる許認可権****

業者はまず、コネを使って当局の担当者に近づく。そして担当者を接待しては賄賂を渡す。グエンさんの会社は、免許を得るまでに「日本円で1000万円以上は使った」という。官僚が認可権を利権にして、私服を肥やしているのである。

 

認可権を握る官僚から賄賂を受け取るなど、日本で発覚すれば大問題となる。だが、ベトナムでは「常識」なのだ。

 

接待や賄賂は、認可が取れて終わりではない。当局とのコネを維持するため、年に何度も接待しては賄賂を渡し続ける。グエンさんによれば、1回の額は「5万〜10万円」程度だという。しかも相手は1人ではなく、何人もの官僚に渡す必要がある。

 

官僚には、正規の月収以上の賄賂が接待のたびに手に入る。そして接待してくれる業者は、かなりの数に上る。官僚にとって、どれほど大きな利権であるかわかってもらえるだろう。

 

官僚とのコネは、誰もが持てるわけではない。そのため実習生の送り出しには、ベトナムの特権階級が関与するケースも多い。グエンさんが続ける。

 

「名前は出せませんが、(ベトナムで一党支配体制を敷く)共産党幹部の家族や親戚が、業者の運営に関わっているケースも多いのです」

 

業者が実習生から徴収する手数料は、特権階級の「財布」にもなっているというのだ。これでは、政府が定める手数料の上限など守られるはずもない。

 

日本への実習生の送り出しは、ベトナムでは「一大産業」だ。約22万人のベトナム人実習生が1人100万円の手数料を支払っていれば、総額で2200億円に上る。GDPの規模が日本の20分の1程度というベトナムでは、極めて大きなものである。しかも実習生以外にも、留学生も同様に送り出し業者に手数料を払って来日する。

 

その後、実習生や留学生たちは日本で借金返済のための肉体労働に明け暮れる。そうやって借金を返済しながら、母国の家族へ仕送りを始める。

 

在日ベトナム人の数は昨年6月末時点で約42万に上っていた。その多くが実習生もしくは留学生として来日し、母国へと金を送っている。1人が年100万円を送金していれば4200億円、年10万円でも420億円だ。

 

彼らの送金は、ベトナム経済にとっては欠かせない外貨収入である。こうした経済事情もあって、ベトナムは11月以降だけで、実習生を中心に約5万6000人もの自国民を日本へ送り込んだ。

 

その一方で、実習生たちが借金漬けで来日するシステムは全く改まる気配がない。実習制度のルール違反なのだから、本来であれば日本からベトナムに対し、実態を改めるよう強く要求すべき問題だ。しかし、そんな気配は全くない。

 

実は、実習生が借金して送り出し業者に支払う手数料に群がるのは、ベトナムの腐敗官僚だけではない。日本側の受け入れ関係者の利権にもなっていることが疑われる。【2月16日 WEDGE Infinity 出井康博氏「なぜ、ベトナム人実習生の入国ラッシュが起きたのか?」】

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【監理団体へのキックバック、ブラック事業者・・・実習生を“しゃぶり尽くそう”とするような構図】

上記記事が指摘する“日本側の受け入れ関係者の利権”の事例が、前出の監理団体への接待ですが、もっと明確な現金キックバックも存在するとのこと。

 

****ベトナム人実習生の背後にある深い闇****

(中略)新聞など大手メディアは実習制度について取り上げる際、「悪質業者を排除すべき」と主張する。しかし、実習生の送り出しが国ぐるみのビジネスと化しているベトナムのような国では、「排除」は簡単なことではない。

 

実習生が支払う手数料の一部は、送り出し業者から当局担当者に渡される賄賂となる。加えてもう1つ、手数料が増える原因がある。日本で実習生を斡旋する「監理団体」に支払われるとされるキックバックだ。

 

ベトナムでは実習希望者は多く、日本側の「買い手市場」となっている。送り出し業者としては、何とかして監理団体に多くの実習生を売り込みたい。そのため不明瞭なキックバックが横行しているという。

 

ベトナムの首都ハノイの大手送り出し業者で幹部を務めるグエンさん(仮名・30代)は、その実態についてこう証言する。

 

「キックバックの金額は、実習生が日本で就く仕事の業種によって差があります。比較的楽な仕事とみなされ、実習生に人気の高い『食品加工業』などでは、1人の受け入れにつき25万円を要求してくる監理団体もある。『農業』や『水産業』で10万円、仕事が大変で、人気が低い『建設業』だと5万円というのが最近の相場になっている」

 

「技能実習法」では、監理団体について「営利を目的としない法人」と定められている。だが、そのビジネスモデルは人材派遣業者と何ら変わらない。

 

実習生の就労先となる企業から「監理費」という名目で、1人につき月3万〜5万円程度を徴収する。監理団体の経営には民間の派遣業者などは関われないが、裏で関与していることもよくあるとされる。

 

そんな監理団体が、ベトナムでは送り出し業者からキックバックまで得ているというのだ。キックバックは現金で渡されるため、表には出ず、もちろん税金の対象にもならない。団体関係者にとっては、実においしい「利権」である。

 

しかも、監理団体が送り出し業者に要求する利益供与は、キックバックに留まらない。実習生の面接でベトナムを訪れる際の渡航費や宿泊費まで、業者に求めてくる団体もあるとされる。また、団体関係者に対する接待も慣例となっているという。グエンさんにも、これまで何度となく日本人を接待してきたと証言する。

 

「監理団体の人たちがハノイで宿泊するホテルは決まっている。ホテル内にカラオケバーがあって、女性を連れ出せるところです。私は飲み代までしか払わないが、接待の一環で買春費用まで支払う業者がいても不思議ではない」

 

監理団体関係者へのキックバックや接待は、かつて実習生の送り出しの中心を占めた中国で根づいていた。その習慣を、関係者たちがベトナムへと持ち込んだのだ。監理団体の間で、ベトナムが〝人気〟である理由、そしてベトナム人実習生が急増している背景がわかってもらえるだろう。(後略)【2月17日 WEDGE Infinity 出井康博氏】

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ベトナム官僚の汚職体質、送り出し業者、日本側監理団体、もちろん、日本側の受入れ事業者にも「奴隷」を購入したような感覚で実習生を酷使するものも。

 

よってたかって実習生・留学生を“しゃぶり尽くそう”とするような構図が存在します。

“「2カ月5万円で生活しろ」ベトナム人技能実習生をしゃぶり尽くす“受け入れ業者”の闇”【1月8日 文春オンライン】

 

当然のごとく、そうした歪んだ構図からは、失踪・不法就労、あるいは犯罪も生まれてきます。実習生が借金漬けで来日する現状を改めなければ、失踪や犯罪といった問題は今後も増えていく可能性が高いと言えます。

 

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実習生が日本で働いて得られる賃金は、手取りで10万円少々に過ぎない。ベースとなるのは各都道府県の最低賃金で、そこから住居費などが引かれるからだ。結果、手っ取り早く借金を返そうと、職場から失踪して不法就労に走ったり、犯罪を犯すベトナム人が現れる。

 

同じ実習生でも、たとえばフィリピン人の場合、失踪や犯罪はほとんど問題になっていない。ベトナムと同様、フィリピンにも送り出し業者は存在する。だが、手数料は日本側で彼らを受け入れる企業が負担し、ベトナム人ように多額の借金を背負うことがない。その差が、来日後の生活に大きく影響する。【2月17日 WEDGE Infinity 出井康博氏】

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その他、実習生・留学生を“しゃぶり尽くそう”とする様々な存在に関する指摘は多々あって、ここで取り上げきれるものではありません。

 

問題は、そうしたことが常々指摘されるなかで、どうして改善がはかられないのか?というところです。

コロナで実習生の入国が止まっている今が、ベトナム側と交渉してルールを厳格化するチャンスだとの指摘もありますが、日本政府にはそうした姿勢は見られないようです。

 

「奴隷」だろうが「借金漬け実習生」だろうが、日本企業の人出不足解消に役立つならそれでいい・・・ということでしょう。問題が起きたらブラック事業者・監理団体ではなく、実習生を逮捕・追放すればいいというようにも見えます。

 


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