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ミャンマー  国軍への抵抗を続ける市民 日本は欧米とは異なる「独自の役割」継続 有効性は?

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(ヤンゴンで4月30日、抗議デモに参加し、抵抗の意思を示す「3本指」を掲げる人たち=AFP時事【5月1日 朝日】)

 

【国軍支配を認めただけのASEAN 有効な対応ができない国連安保理】

連日報じられているミャンマー情勢。

先月末のASEAN首脳会議では、暴力の停止や特使派遣で合意したとする議長声明が発表されましたが、ミャンマー国軍側は「国内の状況が安定した時に慎重に検討する」とのこと。これを「合意」と呼べるのか?

 

求められているの現時点での暴力停止であり、民主主義の回復ですが、国軍は応じる様子はありません。

 

****ミャンマー国軍、ASEAN合意の早期受け入れに難色か****

クーデターで権力を掌握したミャンマー国軍のトップ、ミンアウンフライン最高司令官が東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議で、各国からの提案に対して「国内の状況が安定した時に慎重に検討する」と述べたと、27日付国営紙が伝えた。

 

会議では暴力の停止や特使派遣で合意したとする議長声明が発表されたが、早期の受け入れには応じない姿勢を示したとみられる。

 

国営紙によると、24日にジャカルタで開かれた首脳会議に出席したミンアウンフライン氏は、国内が安定すれば「ASEAN首脳らからの建設的な提案を慎重に検討する」と発言。「現時点の優先事項は法と秩序を維持し、平和と静けさを取り戻すことだ」とも付け加えた。

 

首脳会議後、ミンアウンフライン氏の発言が伝えられたのは初めて。議長声明には暴力の即時停止、国内対話を促すための特使の派遣、人道支援の提供など5項目が合意事項として盛り込まれたが、「安定の回復優先」を理由に先延ばしされる可能性がある。(中略)

 

ミャンマーではASEAN首脳会議後も、国軍による市民への弾圧が続いている。現地の人権団体「政治犯支援協会」によるとクーデター後、26日までに市民753人が殺害された。

 

また、ロイター通信によると、ミャンマーのタイ国境近くで27日早朝、少数民族武装勢力「カレン民族同盟」(KNU)と国軍が交戦した。KNU側は、国軍の拠点を制圧したとしている。タイ側の住民は、日の出前から激しい銃撃戦が始まったと同通信に証言。SNSには、森の中から炎や煙が立ち上る映像が拡散している。

 

クーデター以降、クーデターに批判的なKNUと国軍との間で戦闘が続いている。同通信によると、この数週間で、国軍の空爆などによって約2万4千人の住民が家を追われ、山中に逃れて生活している。【4月28日 朝日】

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結局は、ミンアウンフライン最高司令官が(その呼称をどうするかは各国で対応の違いはあるにしても)実質的リーダーとして国際会議に出席することで、ASEANがその統治を追認する結果に終わったようにも思えます。

 

****ミャンマー最高司令官のASEAN出席「国軍側の勝利だ」****

滝澤三郎・元国連難民高等弁務官事務所駐日代表と京都大の中西嘉宏准教授が28日、BS日テレの「深層NEWS」に出演し、ミャンマー情勢を議題とした東南アジア諸国連合(ASEAN)の特別首脳会議について議論した。

 

滝澤氏はミャンマー国軍最高司令官の会議出席について、「実質的な国のリーダーと印象付け、各国の要求には応じない。国軍側の勝利だ」と指摘した。

 

中西氏は「働きかけのチャンネルを作るのが会議の目的の一つだ。国軍が背を向けないように、アウン・サン・スー・チー氏らの解放は声明に入れなかった」と分析した。【4月29日 読売】

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まあ、国軍の動きに歯止めがかけられないのはASEANだけでなく、国連安保理も同じ。相変わらず、ロシア・中国の消極姿勢で実効性ある対応はできていません。

 

****国連安保理、ミャンマー情勢で談話 暴力の即時停止求める*****

国連安全保障理事会は4月30日、クーデター後のミャンマー情勢について非公開の会合を開き、暴力の即時停止を呼び掛ける談話を発表した。中国とロシアも賛成できるよう、談話の表現は弱められた。

 

ミャンマーで今年2月1日に起きたクーデター後の危機的な情勢を受け、東南アジア諸国連合は先週首脳会議を開き、暴力の即時停止やミャンマーへの特使派遣などで合意。安保理は、ASEAN首脳会議の合意事項を速やかに実施すべきだと表明した。

 

今回の安保理会合で欧米諸国は、ミャンマーの主要支援国である中国や、ロシアへの譲歩を余儀なくされた。両国からの要望により、談話からは「平和的なデモ参加者に対する暴力を改めて強く非難する」、「軍部には、最大限の自制を繰り返し呼び掛ける」という部分が削除された。

 

安保理はミャンマーのクーデターをめぐり今回を含めて四つの声明や談話を出しているが、中国の圧力により、いずれも抑制的な表現になっている。 【5月1日 AFP】AFPBB News

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【経済的にも困難な状況で抵抗・不服従を続ける市民ではあるが・・・】

この安保理協議において、ミャンマー担当のブルゲナー国連事務総長特使は、公務員の職務放棄をはじめ民主化を求める国民の抵抗が続けば、行政が停止する事態に陥るリスクを警告したとのこと。

 

国連開発計画(UNDP)報告書も、ミャンマーの貧困危機を訴えています。

 

****ミャンマー国民半数が貧困危機に 来年初めにも、国連報告書****

ミャンマーの貧困率が、国軍によるクーデターと新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、2022年初めに48.2%まで悪化するとの報告書を国連開発計画(UNDP)が1日までに発表した。国民の約半数に当たる2500万人が貧困に直面する可能性がある。

 

UNDPによると、これは軍政下にあった05年と同水準。17年の貧困率は24.8%まで改善していたが、新型コロナの影響で20年末までに貧困率が推定で11ポイント増加。今年2月のクーデターによる情勢不安などもあり、来年初めまでにさらに12ポイント悪化する可能性がある。【5月1日 共同】

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しかし、市民側は暮らしが困窮するなかでも抵抗・不服従を続けています。

 

****ミャンマー市民、抵抗粘り強く 暮らし困難でも続く不服従 クーデター3カ月****

ミャンマーで国軍がクーデターを起こし、権力を握ってから1日で3カ月になった。国軍側は抗議活動に激しい弾圧を加え、これまでの犠牲者は750人を超える。

 

長引く混迷は人々の暮らしに影を落とすが、市民は形を変えたデモや「不服従運動」で粘り強く抵抗を続けている。

 

現地メディアによると1日も、最大都市ヤンゴンなど各地で、市民が抵抗を示す3本指を立てながら国軍に抗議の声を上げた。

 

この3カ月の間にデモの様子は大きく変わった。一時は全土で数十万人規模となる大きなデモが続いたが、いまはそうした大人数の集まりは見られない。国軍側が市民に容赦なく銃を向け、力ずくで抑え込みを図ったからだ。

 

それでも市民らは抵抗をあきらめず、夜間、早朝のデモや、犠牲者を悼む花を街頭に飾る無人のデモを敢行。短い時間ですぐに解散するゲリラ的なデモも続けている。

 

ヤンゴンの街角には、銃を手にした兵士の姿が目立つ。道を行き交う人たちは押し黙り、兵士と目を合わさないようにして足早に先を急ぐ。

 

職務を放棄して抗議する不服従運動が続き、銀行の店舗の多くは閉まっている。スーパーや市場で食料品などは買えるが、夜間外出禁止令があるため早めに営業が終わる。日系企業も含め、多くの工場は操業停止の状態だ。

 

不服従運動は医療現場でも続き、公立病院の多くは機能していない。新型コロナウイルスの検査数は、クーデター前と比べて9割減った。

 

経済の歯車は狂い始めている。燃料価格は1月に比べて3割上昇し、長距離バスの料金が約2倍になったところもある。通貨の下落も目立ち、クーデター前の1月29日は1ドル=1329チャットだったのが、4月29日は1557チャットまで下げた。(中略)

 

危機感を抱く国軍側は不服従運動の参加者に職場復帰を繰り返し呼びかけ、相次ぐ拘束や指名手配で脅しもかけているが、収まる兆しはない。運動は市民の根強い支持を受けており、ある市民は「国軍への抵抗を支えられるのなら、困難は受け入れる」と朝日新聞の現地助手に話した。

 

運動に伴うさまざまな困難を、市民らは支え合いで解決しようとしている。収入が減った人たちに食料や資金を援助し、地域で急患が出れば住民が連絡を取り合って医師を呼ぶ。

 

国軍側はストップしたままの教育現場について、大学の教職員らに5月3日から職務を再開するよう警告した。だが、不服従運動を続けるヤンゴン大教員のフニンさん(30)は職場に戻るつもりはない。「今の混乱よりも、将来どうなるかという不安の方がずっと大きい。私たちは暗い時代に戻りたくない。できる限りの抵抗を続ける」【5月2日 朝日】

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今日2日には、数千人規模のデモも行われたようですが、犠牲者も。

 

****ミャンマー抗議デモ、5人死亡 数千人が参加、世界各地で集会も****

国軍がクーデターを起こしたミャンマーの各地で2日、抗議デモが行われ、数千人が国際社会に支援を呼び掛けた。地元メディアによると、北部ザガイン地域などで治安部隊がデモ参加者を銃撃し、少なくとも5人が死亡した。この日は「春の革命」と題して、東京や米ニューヨークを含む世界各地で集会が呼び掛けられていた。

 

地元メディアによるとザガイン地域のほか、カチン州やシャン州で銃撃があり犠牲者が出たほか、複数のけが人も出ている。

 

最大都市ヤンゴンや、第2の都市マンダレーでは市民らがデモ行進。独裁への抵抗を示す3本指を示しながら「民主主義の回復」などを訴えた。【5月2日 共同】

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【不透明な少数民族武装勢力との連携】

ただ、こうした抵抗だけではやがては国軍の力で封じ込まれる可能性が大きいようにも思われます。

抵抗市民が期待するのは、少数民族との連携と、国際社会の圧力。

 

少数民族武装勢力との連携は、立場の異なる多くの民族の組織があるなかで、どこまで圧倒的軍事力を有する国軍に対抗できるのか、不透明さもあります。

 

****少数民族勢力、抵抗か静観か ミャンマー国軍と戦闘、結集不透明****

(中略)「全拘束者の無条件、即時解放と、市民への暴力の即時停止を求める」。東部カレン州を拠点とするカレン民族同盟(KNU)など少数民族武装勢力の10組織が4月27日、連名で国軍側に要求を突きつけた。

 

ミャンマーでは1948年の独立以来、主に国境周辺で活動する少数民族武装組織が自治を求めて国軍と内戦を闘ってきた。今回、国軍を批判したのは、2011年の民政移管後に政府側と全国規模の停戦協定に署名した組織だ。

 

これらの組織にとって国軍のクーデターは、進行中の和平交渉の前提を覆す行為だ。地元住民が無残に殺害されていく状況も、看過できなかったとみられる。

 

アウンサンスーチー氏を支持する民主派が樹立を宣言した「統一政府」は、国軍に不満を持つ少数民族武装組織との協力を視野に入れている。少数民族に自治を認める「連邦制」を掲げ、閣僚にカレン州やカチン州などの少数民族の出身者らを迎えた。(中略)

 

3月以降、KNUや、停戦協定に未署名で北部カチン州を拠点とするカチン独立軍(KIA)が国軍拠点を攻撃。国軍は空爆で反撃し、多くの住民が家を追われた。

 

停戦協定に署名した10組織は4月27日の声明で、統一政府の結成を「歓迎する」とした。現地メディアによると、10組織側は26、27両日にビデオ会議を開き、KIAなど停戦協定に未署名の武装組織に、国軍に対抗するための協力を呼びかける方針を決めた。

 

ただ、約20ある武装組織の足並みがそろっているわけではない。拠点は離ればなれで、利害もばらばらだ。中国と関係が近いとみられている東部シャン州の「ワ州連合軍」(UWSA)は、態度を鮮明にしていない。

 

統一政府はすべての閣僚が拘束や指名手配をされ、身を隠しながらSNSなどを通じて発信をするしかなく、国軍側に対抗できる力があるのかを見極める思惑もあるとみられている。

 

また、民主派を支持する市民の間には、少数民族武装勢力を束ねた「連邦軍」の創設を期待する声もあるが、最大の兵力を持つとされるUWSAでも数万人で、約41万人の国軍に対抗するのは現実的には難しいとも指摘されている。

 

闘いが激しくなれば、市民の犠牲も増えかねない。シャン州のパオ民族解放機構(PNLO)指導者クンオカー氏は「内戦が深刻化すれば、大量の難民が生まれ、紛争が30年は続くだろう。解決には交渉しかない」と話す。【5月1日 朝日】

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国軍は4月27日から少数民族武装勢力、カレン民族同盟(KNU)の支配地域への空爆を繰り返し、タイ外務省は30日、住民2267人がタイ側に避難したことを明らかにしています。

 

【日本は「独自の役割」継続 現地からはより強い対応を求める声も】

一方、国際的支援の方は、中国・ロシアの消極姿勢で有効な圧力を国軍にかけることが出来ずにいること、ASEANも頼りにならないことは前記のとおり、

 

そうしたなかで日本は「独自の役割」を継続するとのことですが・・・

 

****日本、「独自の役割」継続 欧米と一線、進出企業に配慮****

4月初め、国会内で在日ミャンマー人団体の集会が開かれた。国軍への対応について、外務省の担当者は「引き続き日本独自の役割を果たす」とし、今後に関しては「検討」の言葉を繰り返した。集会では何人もの参加者が3本指を立てた手を掲げて国軍への抗議の意を示したが、そこには日本側への不満も表れていた。

 

日本政府は資産凍結などの制裁に踏み切る欧米と一線を画し、「独自のパイプ」で働きかけるとの方針を続ける。加藤勝信官房長官は30日の記者会見で、市民への弾圧や日本人フリージャーナリストの拘束があった中で「働きかけは十分に効果があったのか」と問われ、関係者の解放などを「強く求めている」とした。さらに、丸山市郎・駐ミャンマー大使の名前を挙げつつ、「我が国として、国軍関係者と接触をしてきている」と語った。

 

丸山大使は4回目の赴任で滞在歴は今年で計24年。アウンサンスーチー氏やミンアウンフライン最高司令官らと幅広く交流し、「欧米にはない人脈を持つ」(同省幹部)とされる。

 

日本政府はそうした人脈などを使い、暴力の停止や拘束者の解放、民主的体制への回帰を求めている。クーデター後は、ミャンマーに対するODA(途上国援助)の新規事業の閣議決定を見送った。

 

だが、暴力はやまず、政府関係者は「歯止めになっているようには見えない」と漏らす。

事態のさらなる悪化に備え、日本は新たなテコとして、継続中の事業を止める措置の検討を始めている。

 

ODAを2019年度に1893億円拠出した日本は、最大の援助国。今後、完成時期を迎える円借款事業として、最大都市と第2都市を結ぶ鉄道整備(供与限度額1422億円)といった大規模なプロジェクトがあり、円借款の停止などを通じて事業を止めることは国軍への強いメッセージになる。

 

ただ、実際に止めるとなれば、受注する日本企業への打撃は必至。また、状況改善がないままの再開は難しい。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、進出する日本企業は少なくとも426社(3月末時点)。国軍とのつながりが切れれば、経済成長が続くミャンマーでの存在感低下を招きかねず、慎重に判断する姿勢を維持している。

 

さらに、日本政府関係者が一様に警戒するのが、ミャンマーと中国との接近だ。日本まで厳しい姿勢で臨めば国軍が孤立を深め、中国寄りに転じかねないとの理屈で、政府高官は「日本が手を切れば、中国に流れるだけ」と話す。

 

今後の状況次第では批判の矢面に立たされる可能性は否めない。政府関係者は「次に大規模な衝突が起こり、多数の死者が出る事態になれば、日本にとって正念場になる」と話した。【同上】

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こうしたなかで発表された外務省の「外交に関する国内世論調査」では、日本の欧米とは異なる関わり方に肯定的な回答が7割超を占めましたが、専門家は質問の仕方を疑問視しており、「外務省のPRのための調査という印象だ」(世論調査に詳しい松本正生・埼玉大名誉教授)とも。【5月1日 朝日より】

 

誘導尋問のような質問で、日本政府の対応を肯定する方向に誘導した自己弁護のようなものにも見えます。

 

一方、在ミャンマーの日本人経営者らが、日系企業に勤める日本人とミャンマー人を対象におこなったアンケートでは、日本人の8割超、ミャンマー人の9割超が、日本は何らかの経済制裁をすべきだと回答し、日本政府により厳しい対応を求めています。

 

****新規ODA「停止を」大半 ミャンマー日系企業アンケート****

(中略)日本人経営者の有志が4月12~24日に調査し、日本人135人、ミャンマー人145人から回答を得た。日本人回答者の約4分の1は大企業に勤めている。

 

日本の経済制裁については「部分的」「限定的」も含め日本人の86・7%、ミャンマー人の95・2%がすべきだとした。

 

新規ODAは「全て」と「一部」を合わせ、停止すべきだと答えた日本人は92・6%、ミャンマー人は92・4%。日本の2019年度の対ミャンマーODAの実績は1893億円で、「圧力の一環として止めるべきだ」といった声が上がった。

 

国軍や国軍系企業と直接関係のある日本企業については、ミャンマー人の75・9%、日本人の51・9%が「関係解消もしくは事業撤退すべきだ」と答えた。

 

日本政府の国軍への対応をめぐっては、「配慮しすぎ」「どちらかというと配慮しすぎ」との答えが日本人の計71・1%に上り、より厳しい姿勢を取るべきだとの認識が示された。自由回答では「(日本政府の)独自のパイプとは何なのか疑問」「せめて国際社会と足並みをそろえてほしい」といった声があった。

 

ミャンマー人だけを対象とした設問で、事態の解決に期待する国や機関をたずねたところ、国連、米国に次いで日本を挙げる人が多かった。日本政府に期待することへの複数回答では、民主派勢力との公式な対話や支援が84・1%で最も多かった。【5月1日 朝日】

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特に、ミャンマー人の9.7%が継続中の政府開発援助の停止に賛成したとのことです。【5月2日 共同より】


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