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アメリカ  バイデン政権「America is back」 同盟関係重視で臨む「最も重大な競争相手」中国

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(オンライン形式で行われた「ミュンヘン安全保障会議」で演説するバイデン大統領【2月20日 WSJ】)

 

【トランプ前政権からの決別  America is back】

バイデン米大統領は就任以来、国内政策において、新型コロナ対策、移民対策、環境政策、人種差別対策などで、次々とトランプ前政権時代の政策を転換していますが、19日のミュンヘン安全保障会議において、同盟関係を重視し、民主主義の価値観を守るというメッセージをあきらかにして、国際関係においてもトランプ前政権からの決別を改めて鮮明にしています。

 

****バイデン氏、米欧同盟の復活宣言 ミュンヘン安保会議*****

ジョー・バイデン米大統領は19日、ミュンヘン安全保障会議で演説し、「米欧同盟は戻ってきた」と宣言するとともに、世界各地で起きている民主主義への「攻撃」に対抗する欧米諸国のリーダーとしての米国の地位を取り戻す意向を示した。

 

会議は新型コロナウイルスの流行によりオンライン形式で開催。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、ドナルド・トランプ前米政権時代の対立関係を終え「多国間主義」に回帰したことを歓迎し、バイデン氏に同調した。

 

バイデン氏が国際舞台で外交政策に関し本格的演説を行ったのは、先月の就任後初めて。バイデン氏は、米国の旧来の同盟国は米政府のリーダーシップに再び信頼を寄せるべきだと呼び掛け、「私は世界に明確なメッセージを送る。米国は戻ってきた。米欧同盟は戻ってきた」と強調した。

 

バイデン氏はまた、「冷戦の硬直した連合」に戻るつもりはないと表明。諸問題に関して大きな意見の相違があろうとも、新型コロナウイルス流行や気候変動などの課題について国際社会は協力して取り組まなければならないと述べた。

 

バイデン氏は、米国がこの日、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に正式に復帰したことに言及し、復帰は米政府の決意の証だと言明。気候変動を「世界の実存的危機」と呼び、「対応を遅らせたり、最低限のことをしたりすることはできない」と訴えた。

 

一方、ロシアと中国がもたらす脅威について警告。「ロシア政府は民主主義を攻撃し、腐敗を武器に私たちの統治システムを弱体化させようとしている」と述べたほか、「国際経済システムの基盤を損なう中国政府の経済的な悪習や強要」に一丸となって対抗するよう同盟国に呼び掛けた。 【2月20日 AFP】

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【中国は「最も重大な競争相手」】

同盟関係を重視して「民主主義を守る」という姿勢は、国内的には、分断された国民、一部の共和党支持者への結束の呼びかけでしょうが、国際的に念頭に置いているのは、端的に言って中国の脅威でしょう。

 

****米大統領、対中競争へ共闘訴え 民主主義を擁護、長期戦も*****

バイデン米大統領は19日、ドイツ・ミュンヘン安全保障会議のオンライン特別会合で「中国との長期的な戦略的競争」に連携して備えるよう、欧州とアジアの民主主義各国に訴えた。

 

中国への警戒感を示した同日の先進7カ国(G7)首脳声明に続き、多国間会合の場で行った演説で中国問題に時間を割き、平和や共通の価値観を守る上で「最も重要な問題の一つ」と述べ世界の将来に強い危機感を示した。

 

この日が多国間外交へのデビューとなったバイデン氏は、米国が欧州、インド太平洋の同盟国と築いてきた民主的な国際秩序を守るため、主導的役割を果たす決意を世界に表明した。【1月20日 共同】

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バイデン大統領の中国への厳しい姿勢は、中国を「最も重大な競争相手」と呼んだ、4日の外交方針演説にも示されています。

 

****米 バイデン大統領「最も重大な競争相手」中国に対抗姿勢強調*****

(中略)演説ではまず「アメリカに肩を並べようとする中国の野心や民主主義を傷つけようとするロシアの決意といった権威主義の増長に向き合わなければならない」と述べました。

そのうえで中国を「最も重大な競争相手」と呼び、「アメリカの繁栄や安全保障、民主的な価値観への挑戦に直接、対処する」と述べ、具体的に「経済の悪用と攻撃的で威圧的な行動、人権と知的財産、グローバル・ガバナンスへの攻撃」を挙げて、これらの分野で中国に対抗していく姿勢を強調しました。

一方で「アメリカの国益に利する場合は中国政府と協力していく用意はある」とも述べ、新型コロナウイルスや気候変動、核拡散といった世界的な課題への対応を念頭に、中国との協力も探る考えを示しました。(中略)

中国に対するバイデン政権の動き

バイデン政権は外交、安全保障、貿易、人権などの分野で中国の行動を批判するとともに、厳しく対応していく姿勢を示しています。

バイデン大統領は、就任式に台湾当局の代表機関「駐米台北経済文化代表処」の蕭美琴代表を招待し、台湾側は大使に当たる代表が正式な招待を受けて就任式に出席するのは1979年にアメリカとの外交関係がなくなって以来初めてだとして歓迎しました。

また、政権発足から3日後の先月23日には、アメリカ国務省が台湾に関する声明を発表し、中国に対して「台湾への軍事、外交、経済による圧力を停止し、民主的に選ばれた台湾の代表者との対話を進める」ことを強く求めました。

また、ブリンケン国務長官は先月27日の会見で、中国の新疆ウイグル自治区での少数民族政策を、民族などの集団に破壊する意図を持って危害を加えるいわゆるジェノサイドだとしたトランプ前政権の認定に同意する認識を改めて表明しました。

バイデン大統領は、ヨーロッパの同盟国やオーストラリアの首脳との電話会談で、多くの課題とともに中国への対応を協議していて、先月28日の菅総理大臣との電話会談では沖縄県の尖閣諸島がアメリカによる防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象であることを明確にしています。

軍事面では、オースティン国防長官が就任前の議会の公聴会で中国への対応が最も重要な懸案だとしていて、4日には政権発足後初めてアメリカ軍海軍の駆逐艦が台湾海峡を通過したと発表しました。

ホワイトハウスで安全保障問題を担当するサリバン大統領補佐官は4日、バイデン大統領の外交演説を前にした会見で「中国の不公正な貿易慣行がアメリカの雇用に害を与えている」と述べ、知的財産権の侵害や特定の産業への補助金の問題などで中国に対応を迫る考えを示しています。

これに対し、中国の外交を統括する楊潔チ(「チ」は、竹かんむりに褫のつくり)政治局委員は、今月1日、アメリカの団体が主催したオンラインのイベントで演説し、バイデン政権に対して「関係を予測可能で建設的な発展の軌道に戻すことが中国とアメリカ双方の仕事だ。中国にはアメリカと協力する用意がある」と述べる一方、「アメリカは香港、チベット、新疆ウイグル自治区のことで干渉をやめるべきだ。これらは越えてはならないレッドラインであり、越えればアメリカの利益を損なう」と述べて、新疆ウイグル自治区などの問題で干渉すれば米中の協力にも影響を及ぼすとけん制しています。(中略)

藤崎元駐米大使「同盟関係重視するアメリカが戻ってきた」

(中略)また、バイデン政権が今後、中国に対してどう臨むかについて藤崎さんは「印象的だったのはロシアとイラン、それに北朝鮮は『脅威だ』と言った一方、中国は『競争相手』として明確に分けたことだ。

 

イランの非核化や、気候変動など協力すべき分野は中国と協力するが、知的所有権や法の支配に従わなければ対応するという『是々非々主義』が非常に明確に出ていた。中国を一方的に敵と見なしていたトランプ政権とは位置づけを変えているため、より複雑な外交が展開されるのではないか」と述べました。(中略)

専門家「中国への厳しい姿勢を再確認」

アメリカの安全保障政策に詳しい笹川平和財団の渡部恒雄上席研究員は、バイデン大統領の外交演説について、中国に厳しく向き合うことを再確認したとしたうえで、「トランプ大統領は通商問題には厳しく安全保障や人権問題などにはあまり関心を示さなかったが、バイデン大統領は通商、人権、民主化、さらに安全保障の問題にも関心を持ち、総合的に理解していることを示した」と指摘しました。

そのうえで、バイデン大統領が強調した同盟国との協力について「今後は中国の行動を変えさせるためにどうすればいいのかをアメリカと同盟国で話し合い、同盟国には何ができるのかを求めてくることになる。アメリカの指示で動くのではなく自主性が問われると思う」と分析しました。

さらに今は、ミャンマーで起きたクーデターへの対応で対中国政策が問われていると指摘し「アメリカはミャンマーに経済制裁を戻すということで圧力をかけているが、これによりアメリカのミャンマーへの影響力が弱まり、国際社会とのつながりを切ってしまうことで中国と近づかせることにもつながりかねない。いつどのようにしてそのバランスをとって同盟国やパートナーと話しをするのか。対中強硬政策の度合いとやり方が問われることになる」と話しました。

また、オバマ政権とバイデン政権の対中国政策の変化について「当時、中国が突きつける挑戦は一部の専門家にしか見えていなかった。しかしトランプ政権の4年間に中国が見せた姿勢への懸念はアメリカ全体で大きくなっている。オバマ政権時代と今のアメリカ人の中国を見る目が全く違うことが厳しい政策の背景にある」と分析しています。【2月5日 NHK】

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ケンカを売るようなトランプ前大統領に比べ、中国に対し宥和的と見られることもあったバイデン大統領ですが、共通の課題では協力を模索する「現実路線」を取りつつも、経済慣行、人権侵害、台湾問題なんどでは厳しい姿勢で臨むとする姿勢は、11日の習近平国家主席とバイデン米大統領との電話会談にも見られます。

 

****なお隔たり、米中手探り バイデン大統領と習主席、初の電話協議****

バイデン政権発足から約3週間、中国の春節直前に米中首脳の電話協議が実現した。双方は対話と協調の可能性を探り、トランプ前政権との違いも示したが、価値観などをめぐる根本的な立場の隔たりは大きく、緊張の中で新たな関係を探っていくことになる。

 

 ■米、厳しい姿勢も「現実路線」

「中国の経済慣行、人権侵害、台湾への圧力について懸念を共有し、米国市民の利益になるときは、中国と協力すると伝えた」

 

中国の習近平(シーチンピン)国家主席との電話協議後、バイデン米大統領はツイッターで表明した。トランプ前政権に続いて中国に厳しい姿勢を取りながら、共通の課題では協力を模索する「現実路線」を示した形だ。

 

バイデン政権にとって、中国とどのような関係を築くかは、最も重要な課題の一つだ。バイデン氏は4日の外交演説で中国を「最も重大な競争相手」と牽制(けんせい)。10日も、国防総省で職員向けに「平和と米国の利益を守るためには、増大する中国による課題に対応する必要がある」と演説した。

 

こうした強硬姿勢は、トランプ前政権から引き継がれている。米メディアによると、米政府高官は電話協議を前に「トランプ政権の4年間を検証し、中国と戦略的な競合を展開するという基本姿勢にはメリットがあると判断した」と説明したという。

 

ただ、この政府高官はトランプ政権による中国との競争の進め方が、「我々の立場を弱める深刻な問題もあった」とも語り、米国の価値観や同盟関係、国際機関での指導力といった「米国の強さの源」を損ねたと指摘。

 

バイデン政権はQUAD(日米豪印4カ国)の安全保障協力をはじめ、アジアや欧州の友好国と協力しながら対中政策を進めると強調した。

 

「現実的で結果を重視した取り組みを進める」として、中国と協力できる点を探るのも、バイデン政権の方針の特徴だ。

 

新型コロナウイルスをめぐっては、トランプ前大統領が「中国ウイルス」と呼ぶなど、中国の責任を追及し、両国の関係をさらに悪化させた。その点、バイデン氏がコロナ対策で習氏と対話の姿勢を示したのは象徴的変化だ。

 

バイデン氏は副大統領時代の2011年に訪中し、当時国家副主席だった習氏と対話を重ねた経験などもある。7日に放送されたCBSテレビのインタビューでは「おそらく、習氏と最も長く時間を過ごした世界のリーダーだ」と語った。そのうえで「米中は衝突する必要はないが、激しい競争は続く。ただ、私がトランプ氏のように進めないということは、彼(習氏)も知っている」と述べた。【2月12日 朝日】

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【中国の核心的利益とぶつかる米国の重視視点 対立はより本質的に】

ケンカ腰でもすべてが取引材料となる駆け引き重視のトランプ前大統領に比べ、バイデン氏が重視する人権や民主主義といった事項は中国からすれば核心的利益であり、互いに譲れない問題でもあるため両者の対立はより本質的なものになることも考えられます。

 

****米バイデン政権、本気の対中強硬政策****

ようやく現実を直視するようになってきた――。 ジョー・バイデン大統領が中国の脅威をようやく真摯に受け止め始めるようになったとの見方が首都ワシントンで広がっている。(中略)

 

バイデン氏は習近平氏について、最近の米CBSテレビとのインタビューで「世界のリーダーの中で、(個人的に)最も長い時間を過ごした人物が習近平氏であると言える。だから彼のことはよく知っている」と述べている。

 

さらにこうつけ加えている。「とても聡明だが、頑固な人だ。批判するわけではないが、現実問題として民主的思想というものを体内に宿していない」

 

ここまで言い切るということは、ある意味でバイデン氏は習近平氏とは根本思想のところで本質的に分かり合えないと考えているのではないか。

 

政治家として政策を策定し、遂行していく時、中国は「全くの別モノ」であることを、今回の電話会談で改めて認識したともいえる。

 

同時に、ドナルド・トランプ政権によって脆弱化した対中政策を再構築・再強化する必要性を痛感したはずである。

それは中国による不公正な貿易慣行や人権弾圧、また尖閣や台湾を含む海洋進出に楔を打ち込むことも含まれる。(中略)

 

最後に中国について憂慮すべき点を記しておきたい。それは過去20年にわたって米国内の対中観が悪化していることである。

 

米調査機関ピュー・リサーチ・センターが行った調査では、2020年10月時点で、回答者の22%だけが中国を好意的に捉えている一方、73%が「嫌い」と答えているのだ。2002年の同じ調査では、中国を好意的に捉えていた人は43%で、否定的だった人は35%に過ぎなかった。

 

知り合いの元米政府高官に問い合わせると、「米中の競争はこれからもっと熾烈になるだろうが、第3次世界大戦になることはないだろう。それよりも今後は見えない所で双方の蹴り合いが行われそうだ」と述べた。

 

今後は世界の二大巨頭による不気味な交戦が続きそうである。【2月17日 堀田 佳男氏 JB Press】

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その後も、中国を意識したバイデン氏の政策が続いています。

“バイデン氏「人権で声上げる」=対中強硬姿勢を強調―対話集会”【2月17日 時事】

“バイデン氏、半導体やレアアースなどの供給網見直し指示へ=報道”【2月19日 ロイター】

“米、中国海警法に懸念表明 「近隣国脅かす」と報道官”【2月20日 共同】

 

【悪化する米国内の対中観 北京五輪ボイコットも俎上に】

アメリカ国内の対中観悪化を反映した動きとしては、北京五輪ボイコットの声も議会内で出ています。

 

****北京五輪、米国で開催地変更やボイコット求める動き 下院では決議案提出*****

ポンペオ米前国務長官は16日、FOXニュースの番組に出演し、来年2月に開催予定の北京冬季五輪に関し、中国共産党体制が新疆ウイグル自治区でウイグル族などイスラム教徒少数民族の「ジェノサイド(民族大量虐殺)」に関与しているとして、開催地を変更すべきだと訴えた。

 

ポンペオ氏は、ヒトラー率いるナチス・ドイツが1936年に主催したベルリン五輪を引き合いに出し、「中国にプロパガンダ(政治宣伝)上の勝利を許してはならない」と述べる一方、国際舞台での活躍を目指す選手たちのことを考慮し、「別の場所で開催すべきだ」と呼びかけた。

 

ポンペオ氏は「(開催まで)まだ一年近くある。主催したい国で、五輪の理想を真の意味で掲げる国はあるはずだ」とし、国際オリンピック委員会(IOC)に加えバイデン政権に対して開催地変更に前向きに取り組むよう求めた。

 

一方、共和党のライト下院議員(フロリダ州選出)は15日、IOCが北京に代わる開催地を見つけられなかった場合、米国オリンピック委員会が北京五輪をボイコットするよう求める決議案を下院に提出した。

 

決議案は、ウイグル自治区での人権抑圧に加え、中国当局による香港での民主派弾圧や新型コロナウイルスをめぐる情報の隠蔽なども非難。また、他の参加国にもボイコットを求め、可決された場合はブリンケン国務長官に決議を各国に送付するよう要請した。

 

上院でも1月22日、スコット議員(同州選出)ら共和党の7議員が開催地変更を求める決議案を提出した。決議案は「中国政府が人権状況を大幅に改善させない限り、人権を尊重する国での五輪開催に向けてIOCは選考をやり直すべきだ」と強調した。【2月17日 産経】

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「2022年の北京冬季五輪ボイコットをすべきだ、との声も米国内から出ているが、どうか」とただした記者の質問にブリンケン国務長官は「その他の事案が表面化すれば一つひとつチェックする。我々はなすべき多様なことをやらねばならない」と答えています。

 

米五輪関係者は、この発言を「人権問題で進展がなければ、米国は2022年2月4日から17日間、北京で開かれる冬季五輪をボイコットする可能性をほのめかしたものだと受け止めているとか。【2月20日 高濱 賛氏 JB Pressより】


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