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中国  習近平指導部のもと、単一の国家アイデンティティーへの融合 民族融合・愛国教育・国有化

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(湖南省の小学校を訪問した習近平国家主席【1月1日 WSJ】 国際政治の場ではあまりみせない“習おじさん”の笑顔ですね)

 

【チャイナドリームという中華思想のもとで進む「民族融合」という名の少数民族同化策】

中国・習近平政権の苛烈なウイグル・チベット・モンゴル対策は今更の話ですが、国際批判にもかかわらず、むしろ「弾圧」「同化政策」(習政権からすれば「民族融合」)の流れが強化される傾向のようです。

 

****中国、少数民族担当に漢族 66年ぶり 全人代常務委****

(中略)全人代常務委では、少数民族政策を担当する国家民族事務委員会の主任(閣僚級)に漢族の陳小江氏を充てる人事も決めた。

 

香港メディアによると、人口の9割を占める漢族が同委主任に就くのは66年ぶりだ。今年、内モンゴル自治区で標準中国語(漢語)の教育が強化されたことに抗議活動が起きており、国民意識の強化や少数民族政策の変更が進む可能性が指摘されている。(後略)【12月26日 産経】

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単一の国家アイデンティティーに融合する施策はウイグル・チベット・モンゴルだけでなく、特段の問題もなく共存しているその他の少数民族にも及んでいるようです。

 

****中国政府の「民族融合」加速、広がる監視地域****

異文化の同化政策は新疆ウイグル自治区以外の地域にも広がり始め激しさを増している

 

中国の習近平国家主席は自身が夢見る中国を実現するため、数十に上る国内の民族集団を単一の国家アイデンティティーに融合することを望んでいる。

 

積極的な異文化の同化――政府文書や演説では「民族融合」と呼ばれる――は、中国北西部の新疆ウイグル自治区で過激なまでに進められ、少数民族の拘留は第2次世界大戦以来で最大の規模となっている。こうしたキャンペーンは多様な民族が住む他地域へも広がり始め、激しさを増している。

 

内モンゴルでは、標準中国語の教育を拡大し、地方の教科書ではなく国の教科書を使うことを義務付ける計画に対し、モンゴル語が消滅の危機にあると懸念する学生や親たちの間で抗議運動や学校のボイコットが広がった。

 

同化キャンペーンの一部は、住民を監視するために構築されたセキュリティーインフラに頼る。一例として、少数民族が多い地域では警察の監視用ハイテク機器が設置された。

 

この戦略は新疆ウイグル自治区でチュルク語系のイスラム教徒を監視し続けるために使われている。現地政府は地域の安全維持に必要なアプローチだと述べている。

 

こうした手法は現在、南西部の平穏な広西チワン族自治区など、東へ向けて広がっている。チワン族は精霊を信じるアニミスト的な信仰を持ち、近年ほとんど民族対立を起こしていない。

 

既に厳しく統制されているチベットでは、地方当局が農村部のチベット人を対象にした「軍事スタイル」の新たな職業訓練プログラムを導入。地域の民族統一と愛国心を促進するための新規制を可決した。

 

これまで報じられていなかった政府文書によると、中国の治安部隊は最先端の監視ツールと「参考人物」の活動を予測する警備システムの導入を目指している。

 

民族政策を担う共産党機関の統一戦線工作部はコメント要請に応じていない。

 

中国には公式に認められた55の少数民族が存在する。共産党は数十年前から、国内で支配的な漢民族の文化に少数民族が徐々に融合していくと考えていた。

 

だが習氏が率いる共産党は、そうしたモデルに対する忍耐力を失っている。ここ数十年で最も強力な指導者である習氏は、中国を経済・技術面の覇者に築き上げ、過去に君臨した偉大な王朝に匹敵する存在にしようと目指している。同氏が描くナショナリスト的なチャイナドリームは、14億人の人民が共通のアイデンティティーを持つという考えに根ざしている。

 

習氏は昨年、政府の民族政策会議で「中国国家の集団意識を醸成することは、中国の偉大な再生という夢の達成の主軸を成す」と述べた。

 

中国は既に、世界でも最も同質性の高い国の一つで、漢民族が人口の90%余りを占める。その他、伝統的に遊牧民である数百万人のチベット人やモンゴル人、チュルク語系のイスラム教徒、東南アジアと文化的なつながりを持つ民族などが居住する。それぞれが独自の言語、信仰、習慣を持つ。

 

漢民族から文化的にとりわけ遠い少数民族のうち、最大級の集団のいくつかは国の周辺部に住む。こうした国境地域は資源が豊かで、歴史的に漢民族の支配下に置かれたり、外れたりを繰り返してきた。

 

習氏は香港に対して強硬路線を取ったのと同じように、中国の少数民族地域を支配することは国家の領土保全を強化する上でカギを握るとみている。

 

習氏は12月、モンゴルの民族問題を担当する政府機関トップを漢民族出身の当局者に交代させた。過去半世紀余りにわたり、同機関トップに少数民族以外の出身者が任命されたことはなかった。

 

オーストラリアのラトローブ大学で中国の民族政策を研究するジェームズ・レイボールド教授は、「習近平の下では、チャイナドリームとは漢民族中心の文化的ナショナリズムの夢だ」と指摘。中国指導部は「こうした安定制と国家への帰属感の創生に党が関与する必要がある」と考えているとの見方を示した。【1月2日 WSJ】

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記事最後にレイボールド教授も指摘しているように、単一の国家アイデンティティーとは言いながら、実際には多数派漢民族への同化強要にも見えます。

 

いわゆる「中華思想」の伝統でしょう。

習近平氏の「中国の夢」は、かつての漢王朝・唐王朝の再現でもあるでしょう。

そこでは、漢民族の権力に服従した諸民族の思いは「民族融合」という美名で消されてしまいます。

 

【毛沢東時代にも似てきた「愛国教育」による国民統合】

国家アイデンティティーへの融合は、少数民族対策にとどまらず、漢民族が中核をなす国民全般に及んでおり、その具体策が愛国教育の徹底です。

 

****中国の愛国教育、習体制で先鋭化 幼児に「訓練」も****

毛沢東時代の中国は、偉大な社会主義国の創造を若者に呼びかけるため、政治宣伝ポスターを活用していた。1989年の天安門事件以降、共産党は教科書を書き換えることで、自らの見解に基づく歴史を説き、欧米の思想から若者を引き離そうとしてきた。

 

中国は現在、若者の再教育を目指すキャンペーンに着手している。ここ数十年で最も露骨なナショナリズム的メッセージを打ち出し、しばしば習近平国家主席の肖像を中心に据えている。それは過去の中国政府のいかなる試みよりも、はるかに洗練されている。

 

ソーシャルメディアの巧みな動画は何百万回も再生されている。共産党機関が共同制作した人気動画シリーズ「イヤー・ヘア・アフェア(ウサギの年代記)」のあるエピソードでは、米国旗を着たハゲワシが、言葉を話すゴキブリと共謀して香港を大混乱に陥れようと画策する。そこへ愛らしい中国ウサギたちが登場し、ゴキブリを退治する--。

 

北京の大学に通うパン・ボルイさん(19歳)は昨年、このアニメに夢中になった。「これは中国の次世代の思想を形作ることになるだろう」と言う。パンさんは動画が党の支援を受けて作成されていることは知っていたというが、それでも大半の中国人には、従来の報道記事に比べ極めて正確で親しみやすいと受け止められたと語った。

 

中国指導部は常に愛国心を鼓舞しようとしてきた。毛沢東時代の若者は「毛沢東思想」や階級闘争について学び、革命歌を歌った。1990年代初めにはカリキュラムが変更され、中国は欧米に苦しめられているという論調を広げ始めた。

 

だが、10年ほど前に大学生を対象に実施された調査では、こうした取り組みはぎこちなく、意図が透けて見えるとの見方が大勢だった。多くの学生は、リベラル思考もしくは西洋的な政治思想を持つと自覚していた。

 

習氏の前任者である胡錦濤のような過去の指導者たちは、プロパガンダを押しつけ過ぎることに慎重で、そうすれば中国を不安定化させるような形でナショナリズムが高まりかねないと懸念していた。むしろ経済発展を加速させることを目指し、欧米の思想を巡る議論をある程度は容認することもいとわなかった。

 

だが習政権下では、愛国教育が強化され、広範にわたって展開された。南カリフォルニア大学のスタンレー・ローゼン教授(中国政治学)は、香港で最近発生したティーンエージャーや若者による抗議運動を受け、中国当局は、幼いうちに洗脳を始めなければならないことを学んだと指摘する。

 

習氏は2018年8月の会議で、「人生の最初の留め金をきちんとかけることができるように、ティーンエージャーの価値観が決定づけられ、形作られるこの重要な時期を捉え、彼らを導く必要がある」と説明した。

 

中国政府の野心は国務院(内閣に相当)が19年11月に公表した文書で明確になった。「愛国心は中国人の最も自然で純粋な感情である。乳児期から始め、根を固めることに注力し、魂に全力を傾けることを徹底しなければならない」

 

この文書はさらに、政府と党関係者に対し、習氏のイデオロギーや中国再生へ向けた同氏の計画を織り込んだ映画やニュース、授業を推進するよう指示。「愛国心がインターネット空間を埋め尽くす」ように、オンラインゲームやアニメ、短編動画へのティーンエージャーの関心を利用することを上層部に求めている。

 

複数の調査によると、今の中国の若者は猛烈な愛国心を持ち、前世代より国家への忠誠心が強いことが明らかになっている。インタビューに応じた学者や親、ティーンエージャーたちは、経済成長や新型コロナウイルス封じ込めの成功など、若者は中国を誇りに思う理由が多々あると述べている。

 

中国東部の杭州市のある幼稚園は9月、平常授業を中断し、4日間にわたって5~6歳児向け「軍事訓練」を実施した。ソーシャルメディア「微信(ウィーチャット)」の同園公式アカウントには、軍服を着た子どもたちが中国国旗を手に敬礼する様子が掲載された。

 

現行の愛国運動のルーツは、習氏が権力の座に就いた直後の2013年にさかのぼる。党指導部は同年、政策を記した「文書第9号」を作成。市民社会や自由な報道といった欧米の概念の広がりなど、党に対する7つの脅威について警告し、外部思想の侵入に対する抵抗を強化するよう党員に呼び掛けた。

 

また、政府は2016年、新教育相に陳宝生氏を起用。同氏は一段と愛国教育を推し進めた。陳氏は共産党の幹部教育機関である中央党学校で副校長を務めた経験を持つ。陳氏の同校在任中の大半で、習氏が校長を務めていた。

 

陳氏は16年の演説で、「インターネット言語」に精通した「敵対勢力」が中国の教育システムを破壊して党を弱体化させ、誤った考えを広めようとしていると警鐘を鳴らした。「学生はいったんそれに触れれば、簡単にだまされる。染料おけに入った白い布のようなものだ」

 

中国政府は各省政府が独自に教科書を選べる政策を撤回し、国家主権や民族、宗教を扱う教材は全て当局の承認を受けることを義務付けた。

 

教科書の一部も書き換えられた。1930年代から40年代の日本との戦争期間を6年引き延ばし、日本による早期の侵略行為だったとする期間を含めることで、中国の犠牲を誇大化させた。高校生は習氏の功績に重点を置いた新たな政治学の書籍「中国の特色ある新時代の社会主義」を勉強することが義務付けられた。同書には習氏の名前が少なくとも46回出てくるが、毛沢東の名前は16回だ。

 

中国人教師3人はインタビューで、党の功績に関する学校での討論を沈黙させる取り組みについて語った。仮に生徒が小論文で、政府の新型コロナ対策を否定的に描くなど、容認できない姿勢を示した場合は、成績を落とすよう求められたという。

 

北京市の当局が導入したプログラムでは、ナショナリスト的で革命的なメッセージのある博物館への学生の訪問が義務付けられた。展示の一つは習氏にささげられ、若者が習氏を称賛する様子を描いた絵が飾られている。尊敬心を抱く若者たちに囲まれる毛沢東の姿を描いた毛沢東時代の絵をほうふつとさせるものだ。【1月1日 WSJ】

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なんだか習近平政権の在り様は、文化大革命を指揮した毛沢東の統治にますます似てきたように見えます。

 

【矛先は巨大民間インターネット企業にも アリババも国有化?】

習近平政権の矛先は国民だけでなく企業、特にアリババなど巨大インターネット企業にも向けられています。

 

****なぜ目の敵に?習近平の民営企業虐待がエスカレート****

中国で最も成功した実業家として世界中で知られている有名人、馬雲(ジャック・マー)と中国共産党政権の関係がいよいよ微妙になってきた。

 

すでに報じられているように、アリババと、アリババ傘下のフィンテック企業アントグループが独禁法違反の疑いで国家市場監督管理総局による面談という形の取り調べを11月から複数回受けており、12月24日に正式に立件され立ち入り調査を受けた。

 

それによって同日、アリババの香港市場株が一気に9%ほど急落したので、世間はざわついた。12月24日付けの人民日報は、「独占禁止管理の強化はさらなる発展のためだ」という見出しで、アリババなど巨大インターネット企業、フィンテック企業に対する調査の正当性を訴えている。

 

人民日報や新華社の報道によると、市場監督管理総局は、アリババの「二選一」が市場独占行為にあたるとみて立件調査に入ったという。「二選一」とは“二者択一”を意味し、アリババへの出店者に対して競合ECプラットフォームへの出店禁止を迫るやり方を指す。

 

「これ(立件調査)はインターネット領域における市場独占禁止法の監督管理強化の重要措置であり、産業秩序に利するものであり、プラットフォーム経済の長期的健康的発展のためである」と人民日報は主張する。

 

同時に人民日報は、中央政治局会議、中央経済工作会議などで独占禁止の強化と資本の無秩序な拡張を防止する方針を明確化したことも明らかにした。つまり今回の独禁強化方針は党中央最高指導部、習近平政権としての決定だといえる。

 

こうした独禁法強化の流れは国際社会全体の潮流であり、「この4年の間に、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンなどの巨大ハイテク企業が全世界で独禁法調査を受けており、2017年から2019年までの3年間で、EUはグーグルに対して独禁法違反として累計90億ドルの罰金を科した」という。

 

それはその通りであり、アリババの「二選一」などのやり方は、アリババ傘下のネットショッピングモール「天猫」(テンマオ)がEC市場の50%以上のシェアを占め市場の支配的地位にある中で、独禁法第19条に抵触する帝国の傲慢と言える行為であることは否定できない。

 

だが、果たして今回の立ち入り調査が本当に独禁法違反だけが理由か、という点については多くの人が疑念を抱いている。

 

「二選一」が独禁法違反にあたることが問題だというのならば、法にのっとって売上の1〜10%という処罰が実施されるだけだろう。しかし先月から投資家の間では、アリババの国有化問題がまことしやかに囁かれ始めている。

 

アントの“献上”を提案した馬雲

(中略)

 

習近平はなぜ民営企業を嫌うのか

一方で、こうした動きはアリババやアントといった特定の企業をターゲットにしたものではなく、習近平政権として、大きくなりすぎた民営企業を大整理する決心をしたことの表れだとも言われている。

 

最初にアリババやアントをターゲットにしたのは、中国式の「鶏を殺して猿を脅す」という、見せしめ効果、萎縮効果を狙ったものだ、という。もっともアリババは鶏どころか、猿以上の大企業ではあるが。

 

今回の独禁法違反の調査対象には、アリババやアントだけでなく、ウィーチャットを開発したテンセント(騰訊)や、中国最大のオンライン・ツー・オフライン(口コミサイト)プラットフォームを運営する美団なども入っているようだ。(中略)

 

習近平はなぜ、民営企業をここまで嫌うのか。

毛沢東思想の信望者である習近平としては、民営企業が中国経済の命運を左右することや、あるいは国家を超えるような影響力をもつことを、絶対許さない、と考えている。

 

そして政権の求心力を高めて権力基盤を強化するためにあえて“敵”をつくるとしたら、毛沢東が地主を階級の敵として、農民、労働者らの憎しみと嫉妬心を煽ったように、成功した大民営企業家がちょうどいいのかもしれない。

 

また、米国の混乱は、ビッグテックと呼ばれる巨大IT企業のGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)や、ウォール・ストリートの金融大手企業など“民営企業”が政権よりも影響力を持ち、政権を動かす力さえ持つことも関係があるとみられている。

 

金融と情報、この2つの力が結びつけば、世論を思うままに誘導し、混乱を生じさせ、選挙結果すら動かせるかもしれない。習近平は米国の状況を見ながら、インターネット巨頭企業やそれが金融と結びついたときの怖さを改めて思い知ったのかもしれない。

 

あるいは、共産党による経済・金融の指導を本気で徹底することが、今、中国経済が直面している問題を解決できる唯一の方法である、と考えているのかもしれない。

 

中国は11月に、巨大インターネット企業が消費者データなど敏感な情報を共有し、小規模の競争相手を締め出す談合を行うなどの寡占状態を阻止するための規則草案を発表している。

 

また12月には習近平が主催する中央政局会議で、2021年の市場独占禁止工作を強化し、「資本の無秩序拡防止」を強化することを承認している。これは、政府による巨大インターネット企業の整頓強化の予兆ではないか、とみられている。

 

こういう状況の中でのアリババへの独禁法違反調査と国有化の噂は、少なくとも中国の鄧小平時代が切り開いた中国民営企業のバラ色の時代の終結を告げるシグナルだといえるだろう。【12月31日 福島 香織氏 JB press】

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こうした少数民族も、国民一人ひとりも、巨大民間企業もすべて単一の国家アイデンティティー・共産党指導のもとに統合していこうという流れのなかでは、香港の「一国二制度」が存在する余地などないでしょう。

 

その件はまた別機会に・・・というか「中国支配が進んでいるし、今後はますます進む」ということに尽きますけどね。

 

ただ、習近平主席が国内各方面で「統合」に躍起になるのは、放置すれば分散の方向に流れ、党の指導力が低下するベクトルがあるからでしょう。今後の中国は、そのベクトルと政府の施策のせめぎあいでしょうか。

 


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