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イギリス  かつての福祉大国 コロナ禍で食べ物に困る子供たち、ユニセフ支援も 日本のこども食堂は

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(日本のこども食堂【2019年6月26日 FNNプライムオンライン】

ここ1,2年で急拡大した子ども食堂の取り組みですが、新型コロナ禍で厳しい運営を強いられ、多くは閉鎖されているとも)

 

【再び感染者急増 変異種も】

イギリスでは12月8日から、病院でのワクチン接種が始まり、第二段階として、一般開業医による患者への接種も12月14日から始まっています。

 

その一方で、やや沈静化しつつあったコロナの感染状況は、「密」の機会が増えるクリスマスを前にして、再び急増しています。しかも、その影響は定かではないものの、ウイルスの変異種が広がっているという不安な状況も。

 

****イギリスで新型コロナウイルスの変異種が急速に拡大****

英保健相は12月14日、イギリスで新型コロナウイルスの「変異種」が検出され、この変異種が最近の感染者数急増に関係していると述べた。世界保健機関(WHO)にはすでに報告されているという。

 

英保健相マット・ハンコックは、下院で行ったスピーチにおいて、ロンドンと、イングランド南部の多くの地域で新型コロナウイルスの感染者数が「急増」しているのを受け、新たに規制を強化すると述べた。 

 

この変異種が、感染者急増にどの程度関与しているのかはまだわかっておらず、重症化しやすいという証拠も、ワクチンに耐性を持つことを示す証拠も「何もない」とハンコックは述べた。

 

イングランドでは少なくとも60の地方自治体で、この変異種による感染が確認されている。 ハンコックは、イギリス全体では先週1週間で、1日の平均入院者数が13%、1日の平均感染者数が14%増加したと述べた。 

 

イングランド南部のロンドンとエセックス州の一部、ハートフォードシャー州南部では12月16日から、イギリス政府が定めた新型コロナウイルス対策で最も厳格な警戒レベルである「ティア3」が導入される。 

 

<ロンドンでは感染者が倍増>

 感染力は強いとみられ、ハンコックは下院で、「(中略)残念ながら、このきわめて有害なウイルスをコントロールするには、ワクチン接種を進める一方で、(警戒レベルの引き上げも)絶対に欠かすことができない」 

 

ティア3に引き上げられると、パブやレストランが営業できるのはテイクアウトと配達のみとなる。 ロンドン市長サディク・カーンは、ティア3の規制が導入されれば、接客業や文化、小売などの業界に「壊滅的な影響をもたらす可能性がある」と述べた。 

 

パブやレストランの多くは、クリスマスまでの1週間で来店するはずだった客のために食材や飲み物を事前に発注していたが、もはや「ビールをそのまま流しに捨てる」しかないと嘆く。 

 

ある議員の話としてBBCが報じたところによると、ハンコックは事前のブリーフィングで、ロンドンでは7日毎に感染者が倍増しており、12月23日に警戒レベルの次の見直しを行うと語ったという。 

 

感染者数の急増にもかかわらず、イギリス政府は「クリスマスのガイドラインを見直す予定はない」としている。クリスマスをはさんだ12月23日から27日の5日間は、規制が一時的に緩和され、3世帯までなら集まることが可能だ。(後略)【12月15日 Newsweek】

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ウイルス変異種に関しては「現在のところ、この変異株が重病につながると示すものはなく、ワクチンに反応しない可能性は極めて低い」と(ハンコック保健相)【12月15日 朝日】とのこと。

 

【困窮する子どもたち 先進国イギリスでユニセフの食料支援 「政治的」?】

イギリスに限らず世界各国はここまでコロナ感染拡大によって、経済・市民生活は非常に厳しい状況が続いています。

 

途上国などでは、経済規制、それに伴う景気悪化・失業などで「食べるにも困る」人々が多数出ていますが、さすがに先進国イギリスではそこまでは・・・という思い込みを覆すようなニュースが。

 

****ユニセフ、初めてイギリスの子供に食料支援へ****

設立70年以上になる国連児童基金(ユニセフ)は設立以来初めて、イギリスの子供たちに食料援助を提供することになった。パンデミックの影響で十分な食べ物を確保できない世帯が増えており、約2割の世帯で子供がおなかをすかせているからだという。

 

ユニセフUKのアナ・ケトリー氏は、「欠落を埋める」ための取り組みだと説明。「この国は世界有数の富裕国で、フードバンクや食料支援に頼る必要があってはならない」と述べた。

 

「究極的には、空腹に苦しむ子供をなくすため、食料貧困の根本原因に取り組む長期的解決が必要になる」

ユニセフは、ロンドン南部や南部デヴォンなどイギリス各地で貧困家庭の食料支援に取り組む市民団体や慈善団体連合に、数万ポンドずつの資金提供を始めた。【12月18日 BBC】

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「約2割の世帯で子供がおなかをすかせている」というのは、看過できない状況です。

 

私も、途上国や紛争国の子供支援のために月々免罪符がわりの微々たる金額をユニセフに寄付していますが、その一部が「世界有数の富裕国」イギリスに向けられるという事態に。

 

この状況は当然ながら、政治問題化しています。

 

****英、ユニセフから子どもへの食料配布支援 「不名誉」の批判も****

英政府は16日、国連児童基金(ユニセフ)から同国初となる子どもへの食料支援を受けたことが明らかになり、激しい批判にさらされている。

 

野党・労働党は、クリスマス休暇中に国内の貧困家庭約2000戸を対象に朝食を配布するための支援をユニセフから受けたことは「不名誉だ」と批判。同党副党首のアンジェラ・レイナー氏は、「われわれは世界で最も裕福な国の一つだ」とし、「こうなってはならなかった」と述べた。

 

さらに、英国の子どもたちが、紛争地帯や自然災害に見舞われた地域で活動する人道的慈善団体に依存する必要がないようにすべきだと批判した。

 

与党・保守党は以前にも、休暇中に最貧層の子ども向けに食事を無償提供する政策について激しい批判を受け、政策の転換を余儀なくされている。

 

ユニセフからの補助金2万5000ポンド(約350万円)は、ロンドン南部サザークにある複数のNPOに支給され、NPOは学校でクリスマス休暇の2週間に1万8000食の朝食を提供する計画。また、2月の中休み(ハーフターム)にも朝食6750食を配る。

 

ユニセフは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)は、第2次世界大戦後最大の緊急危機を子どもにもたらしていると指摘している。

 

ボリス・ジョンソン英首相の報道官は、コロナ禍で子どもたちを空腹にさせないための政策であり、政府は最近も食事を無償配布している慈善団体に対し1600万ポンド(約22億円)の追加支援を表明していると主張した。 【12月17日 AFP】

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金額的には“ユニセフからの補助金2万5000ポンド(約350万円)”というのは、それほど大きな金額でもありません。

 

それだけに、「ユニセフが乗り出す以前に、政府としてどうして対応できないのか? イギリス政府はそこまで困窮しているのか?」という疑問にもなり、上記記事の野党からの「不名誉だ」「こうなってはならなかった」という批判になります。

 

上記記事の首相報道官発言は、今回のユニセフの決定を是認しているように見えますが、与党内にはユニセフを「政治的」と批判する声もあるようで、ユニセフとイギリス政府の関係がどうなっているのかよくわかりません。

 

****英保守党幹部がユニセフに反発 英への食料支援は「政治的」****

国連児童基金(ユニセフ)が設立以来初めて、コロナ禍で困窮するイギリスの子供たちに食料援助を提供することについて、英与党・保守党のジェイコブ・リース=モグ下院院内総務は17日、下院でユニセフを強く批判した。

 

リース=モグ議員は、ユニセフUKがイギリスに食料支援を提供するのは「政治的」だと非難。ユニセフは最貧国の子供の支援が目的のはずであり、「恥を知るべき」だと述べた。

 

ユニセフUKは、英各地で困窮家庭を支援する団体に数万ポンドずつの助成金を提供すると発表している。たとえば、ロンドン南部で活動する「School Food Matters」には2万5000ポンド、英南部デヴォン州の複数の団体には計2万4000ポンドなどを助成している。

 

ユニセフは、どこで生まれるかを問わず、すべての子供は健やかに育つ権利があると主張している。

設立70年以上になるユニセフが、イギリスの子供に緊急支援を行うのは初めてという。

 

格差について質問受け

リース=モグ院内総務はこの日、野党・労働党のザラ・スルタナ議員から質問を受けた。

スルタナ議員は、「子供への人道援助を担当する国連機関、ユニセフが今回初めて、イギリスの労働者階級の子供たちに食事を与えなくてはならない事態になっている」と指摘。「しかし、子供がおなかをすかせている間も、少数の金持ちが下品なほどの富を享受している」と述べた。

 

その上で議員はリース=モグ院内総務に、「この社会を痛めつけるグロテスクな不平等を終わらせられるよう、ご自分と超金持ちのお仲間も公平に分担すべきだと、協議する時間を政府に与える」考えはあるかと尋ねた。

 

「本当のスキャンダル」

これに対しリース=モグ氏は、ユニセフは「恥を知るべきだ」と反論。「ユニセフがこのように政治的な真似をするのは、本当のスキャンダルだと思う。大勢が飢えている世界で、最も貧しく、最も困窮した諸国の人たちを助けるべきなのに、飢饉と内戦で揺れる国を助けるのではなく、ひとつの行政区に確か2万5000ポンドを与えるなどして、安易に政治的な得点を挙げている」と述べた。

 

これに対して、ユニセフUKのアナ・ケトリー氏は、「ユニセフUKは、イギリスで子供の権利のため働いてきた25年間の経験をもとに、この前例のない危機に対応している。8月に開始した一度きりの全国的な対応で、この危機下で危険にさらされている全国の子供や家族に支援を提供している」と説明した。

 

ケトリー氏によるとユニセフは、食料確保が不安定なパンデミック下でイギリス各地の住民グループに計70万ポンド以上の資金を提供している。

 

「ユニセフは引き続き、世界で最も貧しい子供たちを助けるために、国際的な資金を使っていく。私たちはすべての子供が大事で、すべての子供が、どこで生まれたかにかかわらず、生き延びて健やかに成長する権利があると信じている」と、ケトリー氏は強調した。【12月18日 BBC】

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かつて「ゆりかごから墓場まで」の福祉大国としられたイギリスの福祉制度は、その後のサッチャー改革などで大きく変容しています。

 

詳しい事情はわかりませんが、ユニセフが乗り出すような事態となっているなら、「政治的な真似」云々を批判する前に、現状を直視する必要があるのでしょう。

 

【日本では、コロナ禍で閉鎖されるこども食堂】

ひるがえって日本の状況。

日本では、様々な事情で十分な食事が難しい子どもたちに食事を提供する「子ども食堂」というものがあります。

 

****子ども食堂*****

子ども食堂は、子どもやその親、および地域の人々に対し、無料または安価で栄養のある食事や温かな団らんを提供するための日本社会活動

 

2010年代頃よりテレビなどマスメディアで多く報じられたことで動きが活発化し、孤食の解決、子どもと大人たちの繋がりや地域のコミュニティの連携の有効な手段として、日本各地で同様の運動が急増している。

 

子ども食堂の形態は、運営者次第で様々な運営形態があり、参加費(料金)、開催頻度、メニューも食堂ごとに違いがあり、明確な定義があるわけではない。(後略)【ウィキペディア】

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*****子ども食堂とは?****

こども食堂とは、地域住民や自治体が主体となり、無料または低価格帯で子どもたちに食事を提供するコミュニティの場を指しています。

また、単に「子どもたちの食事提供の場」としてだけではなく、帰りが遅い会社員、家事をする時間のない家族などが集まって食事をとることも可能です。

このように、「人が多く集まる場所」ができたことで、地域住民のコミュニケーションの場としても機能しているのです。


こども食堂は、民間発の自主的、自発的な取り組みから始まりました。(出典:農林水産省公式サイト「子供食堂と連携した地域における食育の推進」)【gooddo】

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政府の制度ではなく、民間・地域のボランティア活動に支えられたもののようです。

 

その子ども食堂の多くが、新型コロナ禍で閉鎖に追い込まれています。

 

****コロナ禍での子ども食堂、フードロス、そして直筆の手紙(前)****

コロナ禍で日常生活そのものに大きな変化が生じた。運営する「サロン幸福亭ぐるり」(以下「ぐるり」)での子ども食堂も例外ではない。

 

まず、「三密」は避けようがない。子どもの仕事は大きな声で話し、激しく動き回ることだ。
 

当然、手づくりの食事提供は不可能となった。食堂を閉鎖することは簡単だが、コロナ禍が長引くと食事づくりのボランティアの士気にも影響する。一度閉めれば、再開は容易なことではない。とはいえ、閉鎖を回避できたのはレトルト食品などの提供のおかげであったが…。

 

コロナ禍での子ども食堂

マスク姿のボランティアさんたち 全国の子ども食堂の大半が食事提供を中止している。

 

子ども食堂は、生活困窮者の子どもたちに食事を提供するだけではなく、学習支援などにおいても大きな力となっている。地域の目となり、虐待や育児放棄(ネグレクト)などの発見において地域の見守り役として重要な役目も担っている。

 

子ども食堂は、団地の集会場や公共施設の会場などを利用している例が多いが、コロナ禍で使用制限などの理由によりその役目をはたすことができないでいる。(後略)【11月24日 Net IB News】

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一方で、大企業が支援に乗り出す動きもあるようです。

 

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「無料や低価格で食事を提供する『子ども食堂』を、大手企業が催したり、支えたりする動きが広がっている。食品ロスを減らしながら、地域や社会への貢献を目指す活動。新型コロナウイルスの影響で通常通りの運営が難しいが、オンライン開催なども進めている」(朝日新聞 11月7日付)。

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感染リスクを避けながら、非日常の楽しみを提供したいと大手コンビニストア、(株)ファミリーマートが9月下旬、東京都内の店舗と家庭をオンライン会議システムでつないだ「デジタル子ども食堂」を初めて開いた。

 

「5家族17人が参加。通常だと、食事の提供とともに、レジ打ちや普段は入れないお店の裏側を見るなどの体験イベントがある。デジタルでは、『ファミチキ』調理の様子を見たり、事前に配った菓子を一緒に食べたりして1時間を過ごした」(同)。

 

日本ケンタッキー・フライドチキン(株)は子ども食堂への食材提供を年内に100カ所へ広げる。「ぐるり」にも小売店や大手スーパーなどからの「食料品の寄付」が増えはじめ、前回(11月12日)開催の子ども食堂では大量の菓子の提供があり、スタッフがうれしい悲鳴を上げていた。

 

企業側の本音は、食品ロスを回避し、「捨てられる運命にある食品を有効に活用したい」というものだ。同時に、社会貢献をすることで、企業のイメージアップにもつなげたいという思惑も見え隠れする。【前出 Net IB News】

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まあ、どんな「思惑」でも、それで子どもたちが助かるなら歓迎すべきことでしょう。

 

イギリスの「ユニセフ支援」を嗤うのではなく、日本国内の状況がどうなっているのかを確認し、民間・地域の善意に頼るだけでなく、政府による公的支援の余地の検討を行うべきでしょう。

 

 


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