(【9月28日 日本海テレビ】 観光ビザ発給で、ようやく観光客に門戸を開くようですが、砂漠以外に何があるのか・・・、それにこんな女性ばかりでは・・・。まあ、お金持ち向けの豪華ホテルはあるのでしょうが)
【監督責任は認めるものの、皇太子の事件関与はこれまで同様否定】
昨年10月にトルコ・イスタンブールのサウジ領事館で起きたサウジ人記者カショギ氏の殺害事件については、サウジアラビアの実力者・ムハンマド皇太子が黒幕では・・・というのが大方の見方ですが、皇太子は関与を認めていません。
関与否定は変わっていませんが、「監督責任」は認めるということのようです。
****サウジ皇太子、記者殺害は自身の監督下で起き「責任は私に」=PBS****
米公共放送PBSが来週放送予定のドキュメンタリー番組によると、サウジアラビアの実力者であるムハンマド皇太子は、昨年10月にトルコのサウジ領事館で起きたサウジ人記者カショギ氏の殺害事件について、自身の監督下で起きたことだとし、責任は自分にあると認めた。
PBSは、カショギ氏の一周忌を控え、10月1日に「The Crown Prince of Saudi Arabia」を放送予定で、映像の一部が公開された。
ムハンマド皇太子はPBSの記者にカショギ氏の殺害事件について「私の監督下で起きた。全ての責任は私にある」と語ったという。ただ、自身が知らないところで起きた事件だと説明した。
自身が知らずにどのようにそうした殺人が起きるのかとの質問に対して「サウジには2000万人の国民がいる。公務員の数は300万人だ」と述べたという。
事件から数週間後にムハンマド皇太子は、カショギ氏殺害は「凶悪な犯罪」で「痛ましい出来事だ」と述べ、責任を負うべき者は裁かれると述べていた。
カショギ氏の婚約者は、ニューヨークの国連総会の合間に開かれたイベントで、ムハンマド皇太子に対して2つの質問があると述べ、誰が殺害を指示し、その理由は何かを知りたいと訴えた。
「今回の告白で、皇太子は殺害から自分を遠ざけようとしている。自身の監督下で起きたことだと認める一方で、関与は否定している。皇太子の発言は単に政治的な策略だ」と批判した。【9月27日 ロイター】
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事件については、サウジ国内で「実行犯」11人が起訴され、うち5人については死刑が求刑されています。
****記者殺害、サウジ検察が5人に死刑求刑 早期幕引きか****
サウジアラビア人記者のジャマル・カショギ氏がトルコ・イスタンブールのサウジ総領事館で殺害された事件の初公判が3日、サウジの首都リヤドで開かれ、検察は殺害に直接関わったとされる5人に死刑を求刑した。サウジの国営通信を通じて発表した。
サウジ検察は昨年11月、事件に関わった5人に死刑を求刑すると明らかにしていた。この日の裁判には、11人の被告が出廷した。
事件を巡ってはムハンマド皇太子の関与を指摘する声もあるが、サウジ側は一貫して否定し、現場の判断で殺害に至ったと主張してきた。サウジは裁判で早期の幕引きを図る構えとみられる。一方、トルコは実行犯の身柄の引き渡しを求めている。【1月4日 朝日】
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もし「黒幕」が存在するなら“トカゲのしっぽ切り”ですが、死刑という話になると“しっぽ切り”では済まされません。切られる方はたまったものではありません。
サウジ政府としてもさすがにそれは・・・ということもあるのでしょうか、おカネでことを穏便にすまそう・・・ということのようでもあります。
****サウジ記者殺害 遺族に最大78億円の補償、住居や給付金で****
昨年10月にトルコのサウジ総領事館内で殺害されたサウジアラビア人記者、ジャマル・カショギ氏の遺族は、サウジ政府から多額の補償を受けていることが分かった。事情に詳しい関係者が2日、CNNに語った。
関係者の話によると、事件の裁判が終わった後、遺族にはさらに多額の慰謝料が支払われる可能性もある。遺族が受け取る総額は現金、不動産を合わせ、7000万ドル(約78億円)を超えるとみられる。
同関係者によれば、遺族はこれと引き換えに、カショギ氏殺害をめぐってサウジ王室を批判しないことが求められるという。
カショギ氏の4人の子どもにはそれぞれ1500万サウジリヤル(約4億5000万円)相当の住まいが与えられた。政府との窓口役を果たす長男のサラー氏には西部ジェッダの豪邸、次男アブドゥラ氏と娘2人にも別の敷地に邸宅が用意された。
ただし4人のうち、サウジ国内で暮らすのはサラー氏のみ。アブドゥラ氏ら3人は米国在住で、サウジに帰国する予定はないが、与えられた土地を売却して現金に換えることは認められないという。
4人はさらに一時金として各100万サウジリヤドと、月々1万~1.5万ドル(約110万~170万円)の給付金を無期限に受け取る。
こうした補償は全てサルマン国王の承認を得ているという。遺族への支払いについては、カショギ氏がコラムを書いていた米紙ワシントン・ポストが最初に報じた。
サウジでの裁判ではカショギ氏殺害にかかわったとされる被告11人のうち、5人が死刑を求刑される見通し。同国の司法制度ではイスラム法(シャリア)に基づき、死刑を言い渡された被告が遺族に慰謝料を支払うことで執行を回避できる。遺族が要求する金額を被告が支払えない場合は、政府が肩代わりすることが認められている。
過去の例から推定すると、カショギ氏の遺族はこの取引で、さらに1億~2億サウジリヤドを受け取る可能性があるという。
米中央情報局(CIA)はカショギ氏殺害について、サウジのムハンマド皇太子が指示したと結論付けたが、サウジ側は王室の関与を否定してきた。
カショギ氏の子どもたちも今のところ、公の場で王室への批判は口にしていない。【4月3日 CNN】
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“イスラム法(シャリア)に基づき、死刑を言い渡された被告が遺族に慰謝料を支払うことで執行を回避できる”ということで、政府が慰謝料を支払うことで、“トカゲのしっぽ”も死刑を免れる・・・ということでしょうか。
死刑を免れた者がどうなるのか、放免されるのか、懲役刑になるのか、むち打ち刑になるのか・・・は知りません。
【石油施設被害 同盟国アメリカでも冷ややかな空気】
カショギ氏殺害事件への関与をムハンマド皇太子が認めていないにしても、この事件でサウジアラビアは国際的信用を失墜するという大きな代償を払っています。
いま、サウジは何者かによる石油施設攻撃を受けて「被害者」の立場にありますが、皇太子のよき理解者であるトランプ大統領はともかく、同盟国アメリカにあってもサウジを見る視線は冷ややかなものがあります。
もともと、9.11にサウジアラビア人が多く関与していますし、サウジが行っているイエメンでの空爆も多大な民間人犠牲者を出しておりアメリカ議会の不興を買っています。そしてカショギ氏の事件も。
****窮地のサウジ、米国から同情得られず ****
サウジに対するイメージの低下は同国の運命の変貌ぶりを反映
サウジアラビアは主要な石油施設に対する大規模な攻撃で痛手を負い、助けを必要としている。だがそうした状況下にありながら、ワシントンをはじめ米国全体を見渡しても、サウジの友人はほとんどいない。
サウジは石油施設への空からの攻撃について、イランの仕業だと主張。攻撃を受けて、サウジは米国の支援を期待していたかもしれない。
しかし、イエメン内戦へのサウジの介入が不興を買っていることや、サウジの暗殺チームによる著名な政府批判派ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏の殺害、2001年の米同時多発テロにサウジ政府がかかわった可能性が新たに注目されていることなどが、支援の気運を損なっている。
クリス・マーフィー上院議員(民主、コネティカット州)はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し「今回の攻撃はサウジの石油施設に対するものであり、米国とイランの間のより大きな戦争を誘発することがあってはならない」と指摘。「われわれは、サウジとの間で相互防衛条約を結んでいない」と強調した。
イエメン内戦へ介入するサウジへの軍事支援を削減しようとした米議会の動きに拒否権を発動したドナルド・トランプ米大統領でさえも、米国の支援は一定限度にとどまることを明確にしている。小規模な部隊を送ることには同意したものの、米国による軍事行動は見送った。
米国防総省は26日、 新たなパトリオット・ミサイル防衛システム1基と、巡航ミサイル探知支援のための小型レーダーシステム4基を提供し、200人の米兵増員を行うことを追加的に明らかにした。
米当局者らは、かなり以前から、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子に対し、カショギ氏暗殺に関して何らかの個人的責任を認めるよう圧力を掛けてきたが、ムハンマド皇太子はこれまで、公に責任を認めていない。
26日に公開された米公共放送PBSの番組予告編の中で、ムハンマド皇太子はリポーターに対し、カショギ氏の殺害は「私の監督下で起きた」と語っている。
このインタビューは2018年12月に、映像なしの条件で行われた。ムハンマド氏はこの事件について、一部の勝手な行動によるものと位置付けた。この姿勢は、サウジの指導者らが何カ月も前から維持している立場と同じだ。
こうしたコメントを受け、皇太子に責任を認めるよう迫っていた米議員のうち、トッド・ヤング上院議員(共和、インディアナ州)、アンガス・キング上院議員(無所属、メーン州)の2人が賛辞を送った。しかしヤング氏が、サウジはもっと努力すべきだと語っていることは、同国の厳しい前途を暗示している。
ヤング氏は「サウジが21世紀のリーダーへの変容を目指すなら、米国との信頼関係修復に真剣に取り組んでいることを示す公の行動を取り続けなければならない」と語った。
ムハンマド皇太子による一連の社会、経済改革に関連してサウジは大量の資金を投入してロビー活動を行ったにもかかわらず、米国内でのサウジに対する評価は低下している。
米ギャラップが今年行った世論調査によると、米国人の3人に2人がサウジに対して悪印象を持っており、同社がこれまでに実施したサウジに関する調査の中で最も高い水準に達している。
これは米同時多発テロの後に実施された調査での水準よりも高い。同事件ではハイジャック実行犯19人のうち、15人がサウジアラビア人だった。
米ビジネス・インサイダーが最近行った調査では、先のサウジ石油施設に対する攻撃への報復措置として米国による軍事行動を支持するとの回答は、わずか13%だったことが明らかになった。(中略)
サウジに対するイメージの低下は、トランプ氏が大統領に就任して以降の同国の運命の逆転の変貌ぶりを反映している。トランプ氏の大統領としての初の外遊先はサウジで、同国では伝統的な剣の舞に参加し、過激化対策のために設立された新たなセンターではサルマン国王とともに輝く球体の上に手を置いた。
トランプ政権は中東での米国の政策を再構築する上でサウジを重要な拠点と見なしていた。対イラン制裁措置では米国の主要支援国としてサウジを頼りにしていた。トランプ氏はまた、イスラエルとパレスチナの和平協定を締結する上でサウジが主要な役割を果たすと期待していた。パレスチナはサウジを政治的に極めて重要な支援者であるとして信頼している。
トランプ大統領の娘婿で、長い間秘密にされていた中東和平案の立案者であるジャレッド・クシュナー大統領上級顧問は、こうした関係を補強する上で、サウジの事実上の統治者であるムハンマド皇太子と緊密な関係を保っていた。
米国とサウジの間で芽生え始めていた関係は昨年のカショギ氏殺害事件以降、悪化している。トルコ当局者が公表した証拠資料によれば、サウジの暗殺グループがイスタンブールに向かい、サウジ総領事館内でカショギ氏を殺害して遺体を切断し、隠蔽(いんぺい)工作を行ったあと、サウジに帰国した。
トランプ政権はカショギ氏殺害に関与したとしてサウジ関係者17人を制裁対象に指定したが、サウジ政府に対する圧力は最小限にとどめた。
米情報機関当局者はムハンマド皇太子がカショギ氏殺害を命じたと公算が大きいと結論づけたものの、トランプ氏はサウジ政府と皇太子を「揺るぎないパートナー」として擁護している。
防衛相としての責務も担うムハンマド皇太子は、イエメンで勢力を維持しイランから支援を受けるイエメンの反政府武装組織フーシ派との戦争へとサウジを導いた。これにより、国境の南側に位置するイエメンは危険な膠着状態に陥った。
サウジはイエメンで一連の空爆に失敗し、何千人もの民間人を犠牲にしていることから、多くの人々に批判されている。米国防総省は昨年、議会からの圧力を受け、イエメンで空爆を行っているサウジ連合軍の戦闘機への空中給油支援を停止した。
議会のサウジ懐疑派は今年に入り、米軍がイエメン内戦にからみサウジ連合軍に行ってきた軍事支援の大半を停止する提案について、超党派の支持を取り付けた。それまで何度も試みたものの、支持を得られなかった提案だ。
だがトランプ氏は今年4月、最高司令官としての自らの権限を制限しようとする不適切な試みだとして、これに拒否権を発動した。
サウジは、トランプ政権と2001年9月11日の同時多発テロの被害者家族との法的な対立の焦点の存在でもある。被害者家族は裁判で、サウジが攻撃の調整役を果たしたと非難し、機密扱いの政府の報告書の公開を求めたが、トランプ政権は今年9月12日、文書の情報のごく一部の公開にのみ同意した。被害者家族の担当弁護士らは、その政府の報告書にサウジの関与に関する情報が含まれているとみている。
サウジは、悪化したイメージを回復しようと、駐米大使として初の女性を派遣するなどして、カショギ氏殺害を例外のように扱い、ムハンマド皇太子の改革に影を落とさないよう努めていた。
ところが9月14日に無人機とミサイルによる攻撃にさらされ、サウジの石油産業は一時的に麻痺した。これまでの米政府の反応は控えめなものとなっており、対抗策としての米国によるイラン攻撃を支持する動きはほとんどない。
リンゼー・グラム上院議員(共和、サウスカロライナ州)は、報復攻撃を主張したが、トランプ氏はそれに抵抗した。
トランプ氏は同議員の意見について聞かれ、「リンゼーに聞いて欲しい。イラクに行ってどうなったかを」と答えた。
上院軍事委員会の委員長を務めるジム・インホフェ上院議員(共和、オクラホマ州)は、サウジを守るために米国がイランを攻撃することを望まないと明言している。(後略)【9月27日 WSJ】
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石油施設攻撃については、“サウジアラビア当局は9月14日に起きた同国の主要な石油施設に対する攻撃は、地域の最大のライバルであるイランの支援によるものだと断定し、紛争の可能性に備える一方、紛争回避の道を探ると発表した。”【9月19日 Newsweek】とのこと。
上記のようにイラン関与を認めてはいますが、あまりイランを刺激するような発言は控えているようにも見えます。
アメリカの支援も限定的なものにとどまっていますし、そのアメリカが供与するミサイル防衛システムも、今回のドローンやミサイル攻撃の前に無力だったことも明らかになっていますので、イランと全面的な戦闘状態に入る事態は避けたいというのが本音でしょう。
【“異質”な国における皇太子の改革】
ムハンマド皇太子にはカショギ氏殺害事件やイエメン介入に見られるような、強引・強権的な国内統治の側面がありますが、一方で、上からの社会改革を断行していることも知られています。
****サウジ、成人女性の旅行制限を撤廃 残るイスラムの男女格差****
サウジアラビア政府は、成人女性が旅行する際に義務づけてきた男性の「後見人」の承認制度を撤廃すると決定した。
ロイター通信などが伝えた。国内で大きな権力を握るムハンマド皇太子(33)の社会・経済改革の一環だが、イスラム教の教えに基づく男女格差はなお残り、自由の拡大をめぐる社会と政府の駆け引きは今後も続きそうだ。(中略)
個人の訴えが世界をかけめぐり、国連まで動かす時代となり、サウジが独自の政策を貫くことはますます困難になるとみられる。
今回、旅行の制約は緩和されたものの、女性が結婚したり一人で生計を立てて暮らしたりする際に、男性後見人の許しが必要なことに変わりはない。サウジ政府はイスラム保守層を懐柔しつつ、徐々に女性の自由を拡大していかざるを得ないものとみられる。【8月5日 産経】
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****サウジが観光ビザ解禁 脱石油改革で「開かれた国」に?****
サウジアラビア政府は27日、これまで制限していた観光目的の査証(ビザ)発給を開始すると発表した。次期国王と目されるムハンマド皇太子が主導し、石油依存からの脱却を目指す改革の一環。
観光産業の促進で雇用創出や経済の活性化を進めるとともに、「開かれた国」としてアピールする狙いもあるとみられる。
サウジ政府や地元メディアによると、日本や米国、中国や欧州諸国を含む49カ国の観光客が対象で、料金は300リヤル(約8600円)。サウジでは近年、自動車レースやコンサートなど特定のイベントの参加者にビザを発給することはあったが、観光目的の訪問は制限されていた。(後略)【9月28日 朝日】
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こうした改革は(不十分な点は多々あるにしても)一定の前進ではありますが、一方で、女性の権利の制約や、これまで観光目的の入国を認めてこなかったなど、サウジという国がいかに“異質”な国であるかを印象付けるところもあります。
その“異質さ”は、おそらくアメリカが敵視するイラン以上だと思われます。