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Channel: 孤帆の遠影碧空に尽き
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トランプ大統領 “抑制的”な外交面での対応 注目されるウクライナ問題 意外な現実認識も

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(ウクライナ東部 断水・停電で避難生活を強いられる市民【1月31日 ロイター】)

【ロシアと組んでウクライナ・欧州を見捨てるのか?】
7か国の人の入国を一時的に禁止することなどを命じるアメリカのトランプ大統領の大統領令に関し、連邦地方裁判所が即時停止を命じる仮処分を下したこと、これを不服とするトランプ政権は仮処分決定の効力を停止するよう連邦控訴裁判所に求めましたが、連邦控訴裁判所は4日、トランプ政権の申し立てを退ける決定を出したことなどの一連の騒動は報道のとおり。

トランプ大統領は、“ウソつき”呼ばわりしているメディアに続いて、司法とも対決姿勢を強めています。

そうした国内のドタバタが続く一方で(まだ、始まったばかりですが)、国際関係はトランプ政権の意向に大きく影響される形で進んでいきます。

ウクライナ東部の戦闘がまた激しくなった・・・という話は、1月31日ブログ“ウクライナ東部情勢  完全には止まない戦闘 財政逼迫のウクライナ事情 親ロシア・トランプ政権誕生で?”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20170131で取り上げたばかりです。

ウクライナ政府軍側と親ロシア派勢力のどちらが先に手を出したのかはよくわかりません。
ロシアでは、ウクライナがアメリカ・トランプ政権の関心を引く狙いで攻撃に出た・・・との報道がもっぱら流されているようです。

トランプ大統領が、ロシアのプーチン大統領を称賛していることから、今後ロシアペースで進むのではないかとウクライナが不安に駆られることは当然あるでしょう。そうなる前に、なるべく有利な形勢をつくりたいという思いも。

逆に、そうしたトランプ政権誕生で勢いに乗る親ロシア派が攻勢に出た・・・という可能性もあるでしょう。
あるいは、トランプ政権の出方を探るために攻勢に出た可能性もあるでしょう。

いずれにしても、今後、アメリカ・トランプ政権がウクライナ問題にどのように対応するのか、ウクライナを“見捨てる”ような形でロシア・プーチン大統領との関係を強めるのか?・・・非常に注目されます。

そのことは、ウクライナ問題だけでなく、NATO・EUに結束する形でロシアに対峙してきた欧州全体の今後を大きく左右します。

****ウクライナ戦闘激化で試されるトランプ──NATOもEUも捨ててロシアにつくのか?****
<ウクライナ東部で2年半ぶりに戦闘が激化している。トランプ政権を試すために、ロシアが親ロシア派を煽っている可能性もある。アメリカが見放せば、親欧派の政権はもたない。NATOやEUは今、トランプの出方に警戒を強めている>

ウクライナ東部で週明けから親ロシア派とウクライナ政府軍の戦闘が激化している。2014年9月のミンスク合意による停戦で「凍結された紛争」が再燃し、ドナルド・トランプ米大統領率いる新政権のロシアに対する戦略と力量が初めて本格的に試されている。

ロシアの支援を受けた親ロ派が1月29日の日曜日、ウクライナ政府軍が支配するドネツク州の工業都市アフデエフカに攻勢をかけ、周辺地域で一気に衝突がエスカレートした。政府軍の兵士十数人が死亡した模様だ。前日の土曜には、トランプが大統領就任後初めてロシアのウラジーミル・プーチン大統領と電話会談を行ったばかりだった。(
(中略)

警戒強めるウクライナとNATO
一方、ウクライナ政府軍も親ロ派支配地域との境界に設置された中立地帯に侵攻中とみられる。ウクライナ政府はこれまでより弱い立場で再び交渉のテーブルに就くことを見越して、わずかでも支配地域を広げようとしているようだ。

ロシア寄りのトランプがプーチンと電話会談を行ったことで、ウクライナ政府とNATOは警戒感を強めている。アメリカがウクライナ政府へのテコ入れを控え、ウクライナ問題の解決をプーチンに任せる可能性があるからだ。

匿名を条件に取材に応じた米国防総省の高官によれば、トランプ政権下でロシアが「どこまでやれるか」試すために、新政権発足後ロシアがウクライナへの介入を強めることは国防総省内ではかなり以前から予想されていたらしい。(中略)

ホワイトハウスのショーン・スパイサー報道官は水曜、ウクライナ東部の戦闘激化はロシアの挑発だと思うかと質問され、「ウクライナ情勢を引き続き見守っている」と答えた。それより前に米国務省はウクライナにおける停戦合意違反を非難する声明を出したが、ロシアに言及することは慎重に避けた。

国連安全保障理事会は火曜、ウクライナ東部の「危険な情勢悪化」に対し「重大な懸念」を表明。政府軍と親ロ派双方に攻撃の中止を呼び掛けた。

ロシアには親ロ派を牽制してミンスク合意を守らせる気はないと、前出の国防総省高官はみる。「すべて緻密に計算し尽くされた動きだ。ウクライナで流血の惨事が続いていれば、(ロシアは)いずれウクライナ情勢と政治に首を突っ込み、自国の衛星国にできる」

ヨーロッパがもっと団結し、アメリカと強固な結びつきがあった時期でさえ、欧米諸国にとってウクライナ問題に立ち向かうのは十分に困難だった。

分断された欧米
元CIA長官のデービッド・ペトレイアスは水曜、米上院軍事委員会の公聴会で証言し、プーチンの思惑についてこう述べた。「軍事行動が上手くいけば、ロシアはわずかでも領土を得られると踏んでいる。だがプーチンが本当に重きを置いているのは、民主主義を掲げる大国に、NATOやEUのような同盟の枠組みを守る政治的な意思があるかどうかを見極めることだ」

だがEUとアメリカにはナショナリズムや分断の波が到来し、足並みを揃えて対応するのが難しくなっている。ウクライナ紛争は、内にも外にも危機を抱えたアメリカと欧州諸国が「いかに協力して問題に対処するかを試すテスト」だと、米シンクタンク戦争研究所のフランクリン・ホーカムは語った。

主な争点は、2014年のウクライナ侵攻とクリミア編入を受けて、アメリカとEUがロシアに課した経済制裁をめぐる対応だ。もしトランプが選挙戦中に示唆した通りにアメリカが対ロ制裁を解除することになれば、EUの制裁決議も崩壊する可能性が高い。その結果、プーチンに外交と経済上の勝利がもたらされる。

トランプ政権の高官は今のところ、従来のアメリカの姿勢を踏襲と発言している。ニッキー・ヘイリー米新国連大使は月曜、国連本部で初の表敬訪問を行い、イスラエル、イギリス、フランスに加え、ウクライナの国連大使とも会談した。国連アメリカ代表部の発表によると、会談でヘイリーは、アメリカが「ウクライナの主権と領土保全を支持する」ことを再確認したという。

ロシアの脅威に直面するなか、今後のアメリカの出方を怪しむのは、ウクライナの国民だけではない。アメリカとドイツの戦車は、NATOの数千人規模の大隊とともにバルト3国(いずれもNATO加盟国)に進駐し、ロシアが軍事活動を活発化させる可能性に備え、同盟国の心の拠り所になっている。だがトランプが規模を縮小するのはいつでも可能だ。

トランプは選挙戦中、ヨーロッパ諸国における米軍駐留を激しく非難し、NATO加盟国は自国の防衛に対して相応の費用を負担するべきだと主張した。

アメリカが東欧4カ国に展開する4000人規模の兵士と戦車90台は、アメリカが34億ドルを拠出する「ヨーロッパ安心供与イニシアティブ」が負担する。その資金拠出を、トランプとミック・マルバニー次期行政管理予算局局長が停止する可能性もある。マルバニーは、米軍の海外駐留費をカットすることで財政赤字の拡大を抑制したいからだ。

万一そうすれば、「アメリカとヨーロッパとの連帯に重大な亀裂を生じる」とバーシュボウは警告した。

「ロシアにとっては願ってもない話だ。ブルガリアやチェコなどの旧東欧諸国にもうアメリカは頼りにならないからと言って、仲間に引き入れようとするだろう」【2月2日 Newsweek】
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【従来発言からすれば抑制的な外交対応】
上記記事にもあるように、ロシア・プーチン大統領への傾斜を隠そうとしないトランプ大統領のもとで国連大使がロシア制裁継続を明言したことは、現実的対応として注目されました。

*****対ロ制裁「クリミア返還まで維持」 米国連大使が明言****
米国のニッキー・ヘイリー国連大使は2日、ウクライナ東部で政府軍と親ロシア派の戦闘が激化していることについて、ロシアの「好戦的な行動」を非難するとともに、ウクライナ政府に対する米国の強力な支援を約束した。ロシアがクリミア(Crimea)半島をウクライナに返還するまで、ロシアへの制裁を維持するとも明言した。
 
国連安全保障理事会で初めて公式に発言したヘイリー大使は「ロシアとの関係改善を望んでいるのは確かだが、ウクライナ東部の悲惨な状況から、ロシアの行動は明確に強く非難されるべきだ」と述べた。
 
ロシアによる2014年のクリミア半島併合を受けて米国が科した制裁についても言及し、「クリミアはウクライナの一部だ。ロシアが同半島の支配権をウクライナに返還するまで、クリミア関連のわれわれの制裁は維持されるだろう」と断言した。
 
ドナルド・トランプ米大統領はロシアとの関係改善に意欲を示している。ウクライナ東部での戦闘の激化同大統領の対ロシア政策を占う最初の試金石となっており、ヘイリー大使の発言に注目が集まっていた。【2月3日 AFP】
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この日は、イスラエル寄りの姿勢を鮮明にするトランプ政権誕生でイスラエルが西岸地区への入植地建設を急ピッチで拡大していることに対し、「新たな住宅建設や入植地の拡大は和平にとって有益ではない」との声明も発表されました。

また、かねてよりトランプ大統領が問題視するイランの弾道ミサイル発射実験を受けて対イラン追加制裁を決めたことが明らかにり、イランとの緊張は高まったものの、イラン核合意には言及しておらず、“トランプ政権は今回のミサイル発射が核合意に影響を与えないとの立場を維持している。また、核合意を受けた一部制裁解除後、米航空機大手ボーイングが国営イラン航空と結んだ旅客機購入契約にも影響しないとしている”【2月4日 産経】とも。

こうした、ウクライナ、イスラエル、イランに対する一連の対応は、“これまでのトランプ大統領の過激な発言からすれば”、比較的抑制された現実的な対応となっています。

トランプ大統領は4日、ウクライナのポロシェンコ大統領と電話で会談し、ウクライナ東部で政府軍と親ロシア派の戦闘が続いていることについて強い懸念を示したうえで、直ちに戦闘を停止させることが必要だという認識で一致したとされています。

****ウクライナ情勢、解決に関与=トランプ米大統領、ロシアとも協力****
トランプ米大統領は4日、ウクライナのポロシェンコ大統領と電話会談し、ロシアとウクライナの対立に関して「われわれはウクライナ、ロシア、関係国と共に国境に沿った平和の回復に協力する」と新政権の方針を伝達した。ホワイトハウスが発表した。
 
トランプ氏が2014年のロシアによるウクライナ南部クリミア半島併合に対し、どのような立場を示したのかは不明。トランプ氏は英メディアとのインタビューで、ロシアとの核軍縮進展を条件に、米欧が科している対ロ制裁を解除する可能性を示唆している。
 
ウクライナ大統領府によれば、両首脳は政府軍と親ロシア派の戦闘が続くウクライナ東部の状況について「深い懸念」を表明。即時停戦が必要との認識で一致した。(後略)【2月5日 時事】 
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ウクライナ情勢の今後は、トランプ大統領とロシア・プーチン大統領の間でどのような話がなされるのかに大きく依存します。

【意外な認識「われわれの国が無実だと思うのか」】
トランプ大統領は相変わらず“プーチン礼賛”を語っていますが、下記記事に示された記者とのやり取りは興味深いものです。

****トランプ米大統領、プーチン・ロシア大統領を「尊敬する」=協力関係構築に期待****
トランプ米大統領は4日に放送されたFOXニュースとのインタビューで、ロシアのプーチン大統領を「尊敬している」と語った。

また、過激派組織「イスラム国」(IS)掃討戦でロシアから支援を得られれば感謝すると述べ、協力関係の構築に期待を示した。
 
一方、質問者から「しかし(プーチン氏は)殺人者だ」と詰め寄られると、「多くの殺人者がいる。われわれの国が無実だと思うのか」と反論した。
 
トランプ氏は選挙中から、オバマ前政権で悪化した対ロシア関係を修復する方針を公言。就任から1週間が過ぎた1月28日にプーチン大統領と約1時間、電話会談を行っている。【2月5日 時事】 
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「多くの殺人者がいる。われわれの国が無実だと思うのか」・・・・なかなか卓見です。

アメリカは、これまで“民主主義”の旗手として、他国に対し正義を振りかざして行動することが多々ありました。
そのことは、批判・攻撃される側から見れば、アメリカの“独善”に思われることも。

しかし、イラクでも、アフガニスタンでも、シリアでも、アメリカの軍事行動によって多くの犠牲者が出ていることも事実です。直接的軍事行動以外でも、国家利益のために住民犠牲を強いることも多々あるでしょう。

もちろん、それをもって直ちにそうした行動をすべて否定するものでもありませんが、“独善”に陥らないために、すくなくとも“自分たちの国も決して無実ではない”という認識は絶対必要でしょう。

ウソ、暴言の山を築いているトランプ大統領からこうした言葉を聞くのは意外でした。

ただ、“自分たちも殺人者だ”ということは、“すべての殺人者がみな同じで、民主主義とか人権などにおいて差はない”という話にはならないので、“自分たちの国も決して無実ではない”という戒めを認識しつつ、どう行動するか、何を重視するか、殺人者となっても追及する価値があるのか・・・が問題となります。

トランプ大統領の「われわれの国が無実だと思うのか」という認識は、アメリカを例外的な存在と位置づけて世界の警察官としてふるまうような、従来の国家感を否定する考え、所詮アメリカも一国家に過ぎず、当然自国の利益追求を「アメリカ第一」として目指すという考えにもつながるものでしょう。

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