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Channel: 孤帆の遠影碧空に尽き
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イエメン  国連を脅して「ブラックリスト」から外れたサウジアラビアの空爆で再び子供の犠牲者

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(サウジアラビア軍の空爆を受けた学校でしょうか。【8月13日 Pars Today】)

【国連仲介の和平交渉は「中断」】
「反政府勢力フーシ派及びサレハ前大統領派」と「ハディ暫定大統領派及び軍事支援するサウジアラビア」との内戦が続く中東最貧国イエメン。

フーシ派は宗教的にはシーア派の一派ということで、イランが後押ししていると言われ、地域大国であるサウジアラビア対イランの代理戦争とも見られています。

イエメン内戦の和平交渉は事実上破綻したようだ・・・という話は、7月30日ブログ“「世界は戦争状態にある」 難民問題、イエメン、南スーダン、ブルンジ”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160730でも取り上げたところです。

その後も国連特使はなんとか交渉継続を・・・ということで粘っていましたが、結局「中断」を認めることを余儀なくされています。

****イエメン和平交渉中断、武装勢力側の「最高評議会」創設受け*****
イエメンのイスラム教シーア派系反政府武装勢力「フーシ派」らが同国の「最高評議会」設置を発表したことを受け、国連は6日、フーシ派らとアブドラボ・マンスール・ハディ暫定大統領派との和平交渉を一時中断した。
 
イラン政府の支援を受けているフーシ派とアリ・アブドラ・サレハ前大統領を支持する勢力は7月、国連が提示した和平案を拒絶し、イエメンを運営する「最高政治評議会」の創設を発表した。

これに対し国連のイスマイール・ウルド・シェイク・アフメドイエメン担当特使は、同議会は国連安保理決議2216号の「重大違反」に当たり、和平交渉の義務に反するとして非難した。
 
アフメド特使は6日、クウェートで3か月以上にわたって行われてきた和平協議は一時中断するが、交渉を進展させるために両陣営との協議は継続していくと述べ、「われわれは今日クウェートを離れるが、イエメンの和平協議は続く」とクウェート市で報道陣に語った。
 
アフメド特使は和平案の詳細を詰めるため、数週間以内に両陣営との2者間協議を持ちたいとし「われわれは双方から交渉の席に戻る用意はあるという保証と言質を取っている」とコメント。新たな話し合いが1か月以内に始まる可能性を示唆した。
 
4月から行われている和平交渉は進展していないにもかかわらず、アフメド特使は「失敗」と認めようとはしなかった。
 
アフメド特使が提示した和平案は、国際社会がイエメンの政権として認めているハディ暫定大統領派には受け入れられたが、反政府武装勢力側には拒絶された。反政府武装勢力は、自分たちの要求の柱である「統一政府」の樹立について和平案は満たしていないと主張している。この条件は、ハディ暫定大統領の退陣を明確に要求するものといえる。【8月7日 AFP】
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“4月から行われている和平交渉”の間も戦闘は継続していましたので、形だけの「和平交渉」の失敗が明らかになったといったところです。

今後の和平交渉についても、正直なところあまり期待できません。

【再び空爆による子供の犠牲】
イエメン和平交渉の「中断」を受け、サウジアラビアはイエメンの各都市への空爆を拡大しています。

****空爆で子供10人死亡=イエメン****
イエメンからの報道によると、同国北部ハイダンで13日、サウジアラビア主導の連合軍による空爆で学校が被害に遭い、少なくとも子供10人が死亡、28人が負傷した。国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」が14日、情報を確認した。
 
ハイダンのある北部サアダ州は、内戦でハディ大統領派と戦うイスラム教シーア派系武装組織「フーシ派」の勢力が強く、大統領派を後押しする連合軍が空爆作戦を展開している。フーシ派は学校に大きな被害が出たことについて「凶悪な犯罪だ」と非難した。【8月14日 時事】 
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サウジアラビアに敵対するイランのメディアによれば、“サウジアラビアの戦闘機は、犠牲者を救出しようとしていた救援隊をも標的にしました。”【8月13日 Pars Today】とも。

これまでも国連は、サウジアラビアが主導するアラブ連合空軍の空爆で、多くの民間人・子供の死傷者が出ていることを非難してますが、これに対してアラブ連合は民間人を標的にしていないと反論しているそうです。

恐らく「標的にしていない」でしょう。もし、していたら明確な戦争犯罪です。
問題は標的にしなくても、空爆の場合はどうしても巻き添えや誤爆で民間人犠牲者が多く出ることです。

先の大戦で、東京をはじめ、日本中に民間人を標的にした爆弾・焼夷弾を落としまくり、広島・長崎を原爆で民間人もろとも全滅させたアメリカも、いつの頃からか“ピンポイント攻撃”ということで、民間人を巻き込まないことをアピールするようになりました。

(民間人犠牲に対する配慮や人権意識のというのは、当時はその程度のレベルだったということであり、アメリカだけでなく、日本も中国・朝鮮などで同様レベルのことを行っていたことが当然のこととして推察されます。)

そのアメリカが現在シリアなどで行っている空爆においても、誤爆や巻き添えは避けられないのが現実です。
非常に失礼な言い方ですが、サウジアラビアの空爆技術がアメリカのレベルに達しているとは思えません。
また、住民の生命に関する配慮が強いお国柄とも思えません。

実際、イエメンにおけるサウジアラビアの空爆では、これまでも子供を含む多大な犠牲者が出ています。

【サウジアラビア 国連を脅して「ブラックリスト」から外れる】
潘基文国連事務総長が4月にまとめた「子どもと武力紛争」に関する年次報告で、サウジアラビア主導のアラブ連合軍が行った攻撃により多数の子どもが死傷したと指摘し、連合軍をテロ組織と並べて「ブラックリスト」に記載したところ、サウジ側が猛反発。このため、事務総長はサウジアラビアの圧力を受ける格好でリストからの削除に応じたという経緯があります。

****サウジ、国連に「猛烈な」圧力 ブラックリスト除外求め****
イエメンへの介入で子どもたちを殺害したとしてサウジが一時、国連のブラックリストに

イエメン内戦で子どもたちを殺害したとして、国連がサウジアラビア率いるアラブ有志連合を「ブラックリスト」に入れた問題で、サウジがリストからの除外を求めて国連に対し非常に強い圧力をかけていたことが、国連関係者の話で明らかになった。

有志連合は昨年3月以降、内戦状態のイエメンでイスラム教シーア派武装組織「フーシ」などによる政権掌握を防ぐため武力介入を行っていた。

だが今年5月、国連は2015年に内戦で死亡または重傷を負った子どもの数は前年比6倍の1953人に達したとの報告書を発表した。

このうち、有志連合の攻撃が原因だったケースは60%に上ったとされ、有志連合諸国は武力紛争において子どもの権利侵害を行った集団のブラックリストに加えられた。

サウジと有志連合諸国はその後、ブラックリストから除外されたが、国連関係者によればその背景には国連との「完全な決別」をちらつかせたサウジの強硬姿勢があったという。

サウジは国内のイスラム教聖職者に、国連は「反イスラム」だとするファトワ(イスラム法に基づいて下される裁断、勧告)を出させる可能性までちらつかせたという。

サウジからの圧力は「過去に例がないほど猛烈なものだった」とこの国連関係者は言う。

国連の潘基文(パンギムン)事務総長の報道官は、有志連合のブラックリストからの除外を認めるとともに、子どもが犠牲となった事例や件数についてサウジ当局と合同で再検討を行うことで合意したと述べた。

こうした国連の動きを受けてヒューマン・ライツ・ウォッチなど20の人権団体は、有志連合を「恥のリスト」に即時に戻すよう求める公開書簡を潘事務総長に送った。【6月10日 CNN】
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この件に関し、“潘氏は同日の記者会見で、サウジ側が国連人道活動への資金拠出停止をちらつかせたことを示唆し、「加盟国による不当な圧力行使は受け入れがたい」と批判した。潘氏は人権団体などから「弱腰」を非難されているのを念頭に「(リストからの削除は)これまでで最もつらく困難な決定の一つだった」と釈明した。”【6月10日 時事】とも。

要するに、サウジアラビアの資金拠出停止などの脅しに屈した・・・ということでしょう。

一応、国連はその後もサウジアラビアに対し、子供の殺害を防ぐための措置について説明するよう求めてはいます。

****国連、サウジアラビアにイエメン人の子供の殺害を停止するよう要請****
国連が、サウジアラビアに対し、イエメン人の子供の殺害を防ぐための措置について説明するよう求めました。

IRIB通信がロイター通信の報道として伝えたところによりますと、国連のパン事務総長は、(7月)14日木曜、サウジアラビア政府に対し、イエメンの子供たちの死傷を防ぐための措置について、必要な情報を提示するよう求めました。

この要請は、サウジアラビア政府が、イエメン攻撃では最新の注意を払っていると発表したことを受けて、行われたものです。

パン事務総長は、これ以前に、アメリカとサウジアラビアの圧力を受け、子供の権利侵害者のリストから、サウジアラビアを削除しています。

国際人権団体ヒューマンライツウォッチは、サウジアラビアのリストからの削除は懸念すべきものだとしました。

イエメンの住宅地を含む各地は、昨年3月26日から、サウジアラビア連合軍の大規模な攻撃に晒されており、この攻撃で、数千人のイエメン人が死亡し、インフラにも大きな被害が出ています。【7月15日 Pars Today】
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上記【Pars Today】はイランメディアですから、ここぞとばかりにサウジアラビアと圧力に屈した国連批判を強めています。
ただ、サウジアラビアには非難されても致し方ないところがあります。

****サウジアラビアのイエメンでの犯罪と国連事務局長の消極的な態度****
サウジアラビアのイエメンにおける犯罪の影響について、数々の報道が伝えられています。この犯罪は、サウジアラビアに人道的な危機を引き起こしており、国際機関の懸念を呼んでいます。

ナジャフィー解説員
国連は、「少なくとも37万人のイエメン人の子供が、栄養不良に苦しんでいる」と発表しました。国連はさらに、「イエメンの人口のおよそ半数にあたる1400万人以上が、食料や医薬品の支援を必要としている」としています。

これ以前にも、FAO国連食糧農業機関が、「イエメン人の50%、特に22州のうち19州の住民が、飢餓に苦しんでおり、70%が食糧を確保する上で困難に直面している」と発表していました。

国連人道問題調整事務所のイエメン担当官も、イエメンの人々、特に子供の生活は危機的な状況にあるとし、「この危機は、衝突の継続や世界の無関心によって、さらに悪化するだろう」と語りました。

こうした中、サウジアラビアが、イエメンで大規模な人権侵害を行っているのが明らかであるにも拘わらず、国連のパン事務総長は、2日火曜、国連安保理への報告の中で、イエメンの子供たちの将来に懸念を示すに留まりました。

パン事務総長は、「イエメンの人道状況に関する報告を見直し、サウジアラビアを子供の権利侵害者のリストに加えることに関して決定を下すには、さらなる時間が必要だ」と語りました。

パン事務総長はこの報告で、イエメンの子供の状況に対して深刻な懸念を表明し、「この問題に関する前回の報告の見直しを続ける」と語りました。この前回の報告は、サウジアラビアの抗議に直面しました。

パン事務総長は、「サウジアラビアの皇太子や外相など、関係者と会談し、イエメンの子供の現在の状況や、戦争や封鎖が彼らに及ぼす影響についての懸念を伝えた」としています。

この発言は、サウジアラビアの国連大使の以前の表明を認めるものです。同大使は、「サウジアラビアを子供の権利侵害者のリストから除外するという国連の決定は最終的なもので、それを見直すことはない」と語っていました。(後略)【8月4日  Pars Today】
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こうした経緯のなかで起きた13日空爆による子供10人の死亡です。
サウジアラビアはどのように説明するのでしょうか?

【アメリカはサウジアラビア軍事支援を継続】
他方、民間人犠牲や住民人権には“敏感”なはずのアメリカは、依然としてサウジアラビアへの軍事援助を続けています。

****米国、サウジに11.5億ドル相当の武器供与へ****
米国防総省は9日、国務省がサウジアラビアに対する約11億5000万ドル相当の武器供与計画を承認したと発表した。130台以上のエイブラムス戦車などが含まれている。

米国防総省傘下の国防安全協力局(DSCA)によると、米防衛大手ゼネラル・ダイナミクス<GD.N>が主要契約者となる。

同局は「この武器供与は、サウジ軍と米軍の相互運用性を高め、サウジの安全保障と軍備の近代化に対する米国のコミットメントを示すものだ」としている。【8月10日 ロイター】
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イエメンで起きていることに関しては、軍事的にサウジアラビアを支えるアメリカの見解も聞きたいものです。

イランとの核合意やシリア内戦への対応で、サウジアラビアとアメリカの関係には溝ができていると言われていますが、それだけにアメリカとしては、これ以上サウジアラビアを不快にさせるようなことはしたくない・・・というところでしょう。

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