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Channel: 孤帆の遠影碧空に尽き
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中南米諸国  メキシコ大統領の米州首脳会議不参加で露呈したアメリカへの反感

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(6日、メキシコ南部タパチュラで、対米国境を目指す移民集団「キャラバン」(AFP時事)【6月7日 時事】こうした移民流入への対策が話し合われるはずの米州首脳会議でしたが、アメリカの主導権への中南米諸国の反発が表面化する流れにもなっています)
【キューバ・ベネズエラとの関係改善を模索する米バイデン政権】6日に米ロサンゼルスで開幕した米国やカナダ、中南米諸国の首脳らによる米州首脳会議(サミット)にバイデン米大統領が「民主主義の欠如」を理由にキューバ、ベネズエラ、ニカラグアを招待しなかったことで、メキシコのロペスオブラドール大統領など複数の国の首脳が反発して不参加を表明しており、波紋が広がっています。(なお、メキシコは地理的には北米ですが、本記事では中南米と一体の国として扱っています。)
その話に入る前に整理しておくと、バイデン政権は一方でキューバ、ベネズエラに対する制裁を緩和して、関係を修復しようともしています。
故カストロ以来の対立が続く共産党独裁キューバとの関係では、オバマ政権時に関係改善の流れが生まれましたが、オバマ元大統領の成果を否定することに異常な執念を抱くトランプ前大統領がこれを覆した経緯があり、バイデン大統領はオバマ路線に戻したい意向です。
ただ、アメリカ国内、特に大統領選挙の結果を左右する激戦州フロリダ州には現在のキューバ体制を否定するキューバ亡命者が多く、与野党双方にこれを支援する政治勢力があり、キューバとの関係改善は政治的には大きなリスクを伴います。
****バイデン政権、キューバ政策見直し 送金・渡航など緩和、トランプ時代から転換****バイデン米政権は16日、キューバへの渡航や送金に関する制限を緩和するとともに、キューバ人への米国ビザ(査証)発給数を増加させると発表した。昨年の政権発足時から進めていたキューバ政策の見直しを受けた措置。トランプ前政権下での強硬路線からの転換を鮮明にした形だ。
キューバをめぐっては、民主党のオバマ政権が2014年、キューバのラウル・カストロ国家評議会議長(当時)と関係正常化を進めることで合意し、外交関係の再開などが実現した。
しかし、17年に就任したトランプ前大統領が制裁強化に方針を転換。バイデン大統領は就任前、キューバ政策を再び融和路線に引き戻す考えを示していたが、キューバで昨年発生した大規模な反政府デモが同国政府によって弾圧されたことなどを受けて明確な政策変更を打ち出せずにいた。
今回の措置について与野党議員などからは、早くも「独裁政権への誤ったシグナルだ」との指摘が相次いでいる。これに対し米政府高官は16日、米国からの送金がキューバ政府を経由しないようにするなど「人権侵害を助けることにならない方法をとる」と強調した。【5月17日 産経】*********************
キューバと連携する反米左派ベネズエラ・マドゥロ政権に対しても、ロシア産原油禁輸の代替調達先として産油国ベネズエラからの輸入再開、併せて、対米関係改善を契機に膠着したベネズエラ国内状況を打開することを模索しています。
****ベネズエラ大統領、野党と対話再開へ 米の制裁緩和受け=関係筋****ベネズエラのマドゥロ大統領が、米国が支持する野党側との協議再開を発表する見通しであることが分かった。米政府が対ベネズエラ制裁の一部緩和に動いたことが背景にある。米政府当局者やその他の関係者が明らかにした。
バイデン米政権は、ベネズエラで操業を続ける唯一の米石油会社シェブロンがマドゥロ政権と協議を再開することを一時的に認めた。ただ、同社に対する限定的な操業許可の更新の是非はまだ最終判断していない。
当局者の1人によると、米政府はさらに、国営ベネズエラ石油(PDVSA)の元幹部でシリア・フロレス大統領夫人のおいであるエリック・マルピカ氏を制裁対象リストから外す構え。
米政府は3月にここ数年で最も高位の代表団をベネズエラの首都カラカスに派遣し、マドゥロ大統領らと会談したばかり。ベネズエラ側は拘束していた米国人2人を釈放した。その後、米政府はベネズエラの野党陣営と協議した上で一連の措置を決めたという。
マドゥロ氏は昨年10月に停止したメキシコでの野党側との対話の再開にも前向きな姿勢を示した。両陣営は早ければ17日にも協議日程を設定するとみられる。野党指導者のグアイド氏を暫定大統領として承認した米国は、対ベネズエラ制裁を大幅に解除する可能性について、両陣営による交渉の進展次第との立場を示している。【5月18日 ロイター】*****************
【独裁のトロイカであるキューバ、ベネズエラ、ニカラグアを招待する意図は元々なかった】バイデン大統領が米州首脳会議にキューバ、ベネズエラを招待しなかったのは、上記の両国との関係改善の流れが変わったというものではなく、もともと招待する考えもなく「それはそれ、これはこれ」という別個の流れのようです。
****バイデンのキューバ規制一部解除の裏側****バイデン政権は、5月16日、トランプ政権が導入した渡航制限やビザ発給制限、キューバへの送金の制限等を部分的に解除する措置を発表した。
バイデンは、キューバとの外交関係を正常化したオバマ政権の成果をすべて覆したトランプに対し、キューバとの関係を再構築することを公約として当選したわけであるので、本来もっと早期に取り組んで良かったものである。
しかし、党派を超えた対キューバ強硬派の反対や、昨年夏のキューバ政府による街頭抗議活動の弾圧事件、更には、キューバ当局の関与が疑われた米国大使館員の体調不良問題が未解決等の事情もあり、着手が遅れていた。
今回の措置は、トランプの導入した規制を全て撤廃したわけではない。これは、中間選挙を前に、あまりにキューバにとって有利な措置を取れば、強硬措置を求めるキューバ系米国人の多いフロリダ州等での民主党の票に影響することから、米国の利益にもなることが説明できるかの視点から行われた選択的措置と考えられる。 バイデン政権は、翌17日には、ベネズエラ産原油に対する規制措置を緩和する措置もとった。具体的には、以前現地で活動していた米国石油企業(シェブロン)に生産再開についてのベネズエラ政府との協議を開始することを許可したもので、石油制裁の緩和に向けた最初のステップと見なされる。 そのような方向性は、3月に既に示され、米国は、これを中断しているマドゥーロ政権と反政府側との民主化交渉を再開させる梃子とすると共に、ウクライナ侵攻に対する制裁として輸入を禁止したロシア原油の代替輸入元とする意図があると見られた。
この措置についても、民主化や人権についてマドゥーロ側のコミットが何ら得られる保証がないとして、民主党の人権派や共和党の強硬派から懸念や批判を招いている。 これらの措置は、6月6日から予定されている米国がホストする第9回米州サミットへの招待国を巡って米国とメキシコ等のラテンアメリカ諸国との間で揉めている状況の中でとられたが、これは、偶然の成り行きであったのであろう。
このサミットは、バイデンが、ラテンアメリカ外交を再構築する舞台となるはずのものであったが、独裁のトロイカであるキューバ、ベネズエラ、ニカラグアを同サミットに招待する意図は元々なかったと見られる。 ところが、メキシコのロペス・オブラドール大統領は、5月初めのキューバ訪問から帰国の後、すべてのラテンアメリカ諸国が招待されないのであれば同サミットに出席しないとの立場を表明し、これにボリビア、ホンジュラス、カリブ海諸国が同調した。
また、ブラジルやグアテマラもバイデン政権に対する不満から大統領の出席が疑問視されており、米州サミットが成り立つのかという状況に立ち至っている。【6月3日 WEDGE】***********************
【メキシコ大統領などの不参加の背景に、アメリカへの反発とアメリカの影響力低下】米州首脳会議は6日から始まり10日まで開かれますが、アメリカとしてはメキシコ国境を通じて流入する不法移民への対策の協議をメイン議題としたい意向です。
この会議に合わせ、メキシコ南部では6日、ここ数年で最大規模のおよそ6000人もの移民希望者の集団がアメリカへ出発しているとのこと。
その移民問題最大の関係国でもあるメキシコのロペス・オブラドール大統領(左派)が参加しないことはアメリカにとっては大きな痛手となります。
メキシコは大統領の代わりに外相が会議に参加し、本人は来月、訪米するということですが、ホンジュラスやボリビアの首脳も欠席、代理が出席するとのこと。更に移民の送り出し国であるグアテマラやエルサルバドルの首脳も欠席する可能性がある・・・。
背景には、この地域を「裏庭」と考えるアメリカと中南米諸国の確執があるようで、そこに中国が絡んで・・・という“いうもの”展開も見えます。
****メキシコ、米州首脳会議欠席 米「裏庭」影響力低下****メキシコのロペスオブラドール大統領は6日、米ロサンゼルスで同日始まった米州首脳会議を欠席すると発表した。米国が会期中、強権国家のキューバやベネズエラ、ニカラグアを招待しない方針に反発した。
AP通信によると、グアテマラやホンジュラス、エルサルバドルの首脳も欠席する可能性がある。米国が長年「裏庭」としてきた中南米地域での影響力低下が表面化した形だ。
米州首脳会議は10日まで開かれる。各国の首脳や閣僚は6〜7日にロサンゼルス入りし、主な会合は8日から始まる。米国はメキシコ国境を通じて流入する不法移民への対策を協議する意向で、ロペスオブラドール氏の欠席は痛手だ。
会議では新型コロナウイルス危機、ロシアによるウクライナ侵略に伴う食料不足対策なども議論される。
ロペスオブラドール氏は6日の会見で「全ての国が招待されない米州首脳会議などあり得ない」と述べ、エブラルド外相を代理で出席させる意向を示した。ロペスオブラドール氏は7月に訪米し、バイデン米大統領と会談するという。
バイデン政権は「政敵を投獄し、不正選挙を行った権威主義国」を招待しないとしており、民主的な秩序を破る政府を将来の会議に参加させないとした2001年の米州首脳会議の宣言に基づく判断という。
米州首脳会議には、米首都ワシントンに本部を置く米州機構(OAS)加盟国のリーダーが集まる。ロペスオブラドール氏はかねてOASを「米国が中南米に介入する道具」とみなしてきた。
一方、中南米諸国は11年、OASに対抗する形でラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)を設立。ロペスオブラドール氏が昨年9月、メキシコ市でCELAC首脳会合を開催した際、招待状には、「(開催目的は)OASを弱める」と記されていた。
この会合で、ロペスオブラドール氏は「CELACは欧州連合(EU)のような共同経済体を目指すべきだ」と宣言し、中国の習近平国家主席は「最大限の支援」をビデオ演説で約束。ロペスオブラドール氏には中国の力をてこに中南米カリブ海地域での米国の影響力を弱め、域内の自律性を高めようとする狙いがあったとされる。
今回の米州首脳会議欠席の背景にも「中南米諸国の結束を優先する意図」(外交筋)がありそうだ。【6月8日 産経】********************
左派のメキシコ・ペスオブラドール大統領とキューバ等との関係、「全ての国が招待されない米州首脳会議などあり得ない」云々はありますが、最大の問題は“主人顔”でふるまうアメリカへの中南米諸国の反感でしょう。そして、そういう反感を表に出すことを許すまでにアメリカの影響力が低下しているということも。
中南米に左派政権が多いのも、中南米にわが物顔で介入するアメリカへの反感が根底にあってのことでしょう。
ただ、人権・民主主義という観点からすれば、アメリカとしては中南米諸国に対してモノ申すべきことが多いという側面も。
****中南米諸国は報道の自由を抑圧、米国務長官が非難****ブリンケン米国務長官は7日、一部の中南米諸国で報道の自由を抑圧する動きがあると非難し、記者の殺害が最も多い同地域でメディアの保護強化を目指すと表明した。米州首脳会議を控える中、報道の自由に関するイベントで述べた。

長官は、中南米地域の政府が包括的な法律や監視を通じて報道の自由を奪い、記者に脅威を与えていると指摘。バイデン大統領が民主主義の欠如を理由に米州首脳会議から排除したキューバ、ニカラグア、ベネズエラの3カ国を名指しし、これらの国では独立した報道が犯罪となっていると述べた。

「世界でこれほど記者にとって危険な地域はない」とし、ユネスコ(国連教育科学文化機関)のデータを引用し、今年に入り西半球で少なくとも17人の報道関係者が殺害されたと語った。

「このような犯罪が後を絶たないのは、それを命じ実行した人物がほとんど責任を問われないからだ。それはこうした攻撃が罰せられずに続けられるというメッセージを送ることになる」と述べた。【6月8日 ロイター】**********************


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