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Channel: 孤帆の遠影碧空に尽き
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日本  弊害深刻化で、ようやく新型コロナ対応の「鎖国」政策修正に動いた岸田首相

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(【2月12日 朝日】閑散とした2021年12月2日の成田空港出発ロビー 歩いているのは乗客というより空港関係者だけのようにも)
【世界の流れからは異質な日本の「鎖国」政策 その弊害も】リスクを極力避けて“タコつぼ”にじっと身をひそめるような内向き“安心・安全教”にどっぷり浸かった日本の国内世論には岸田内閣のとってきた“鎖国”という水際対策は非常に受けがいいですが、国際的には異質で、その弊害も生じていました。
****入国制限緩和、世界の潮流 「鎖国」日本は少数派****新型コロナウイルスの大流行が続く中、世界各国では入国規制の緩和が潮流になっている。オミクロン株のまん延で水際対策の意義が薄れ、人の往来を復活させて経済活動と観光の活性化を優先する考えに基づく。
外国人の入国を認めずに「鎖国」状態となっている日本は少数派だ。 日本は2021年11月末、全世界から外国人の新規入国を原則禁止。海外のビジネスマンや留学生らが「日本嫌いになってしまわないか懸念される」(経団連の十倉雅和会長)と撤廃を求める声も上がる。 WHOも1月19日「(感染対策に)プラスにならない」として渡航制限の撤廃か緩和を勧告した。【2月12日 共同】*****************
日本での生活を希望していた留学生(20年1月以降、日本政府から留学の在留資格を認められながら、入国できていない人は約14万7千人)・日本渡航のために高額の借金を抱える実習生の将来を打ち砕くことにも。
こうした人的資源の往来は相互的なものですので、こうした事態は結果的に日本への評価を下げ、日本人の海外での活動を制約することにもなります。
****「コロナ鎖国」留学生の嘆き 新規入国、日本が原則停止****憧れてきた日本への留学や就業を国境が阻み続けている。新型コロナの水際対策によって、外国人の新規入国が原則停止されているためだ。長引く「鎖国」に対し、「日本の損失」との声も漏れる。
 ■憧れの地、でも待てない。韓国へ米フロリダ州に暮らすビクター・ペレズさん(19)は最近、引っ越しの作業で忙しい。3月6日、人生で初めて、米国を離れる。 留学のために韓国へ向かう。まずは語学学校へ。その後は大学へ。本当は、日本に行きたかった。小さい頃から、日本こそが憧れの地だった。でも、もう待てない。(中略) 世論調査で大半の日本人が、政府の対応を「評価する」と回答した世論調査を見てショックを受けた。「日本を嫌いになったとは言わない。でも、否定的な見方をしてしまう」 2年半前から語学学習を目的とした交流アプリで、日本人と会話を重ねていた。いまはもう、連絡をほとんど取っていない。
 ■日本に失恋したような思いマレーシアに住むタン・チェンシオンさん(25)は日本企業への就職が内定したものの、入国できずに働けないままだ。「経済的な損失も考えれば、国境閉鎖は日本のみなさんのためにもならないと思う」 日本でエンジニアとして働く夢を持ち、マレーシア日本国際工科院で学んだ。日本のエネルギー企業から就職の内定を得たのは2020年11月。21年9月から働く予定だった。内定先企業から「入国できない状況がいつまで続くか分からない。マレーシアでも職を探してほしい」と伝えられた。 マレーシアで長く働くことを前提にすれば選択肢は広がる。でも、日本が国境を開けた時に入国できるようにしておきたいと思う。「日本語や、日本について学ぶために費やした時間やコストを考えると、日本で働くことを、諦められないんです」 タイ人の30代の女性は東京で日本語学校、専門学校を卒業し、21年4月から大学院に入学する予定だった。ビザを取り直すために同年1月にいったんタイに戻って以来、再入国ができなくなった。 「日本に留学する外国人はもともと日本が好きなんです。こういう扱いをされるとどんどん日本から離れてしまいますよ。日本に失恋したような気持ちです」
 ■水際対策、割れる意見日本政府は昨年11月末、オミクロン株の感染拡大への水際対策として、一時緩和していた入国制限を再び強化。「特段の事情」がある場合を除き、外国人の新規入国を原則停止した。 岸田文雄首相は「G7で最も厳しい水準」と強調するが、経済界からは「鎖国だ」などと批判も上がる。与党からも「世界経済のなかで日本が立ち遅れてくる危険性に直面していく」(安倍晋三元首相)と見直しを求める声が相次ぐ。 緩和の時期をめぐり、政府内でも意見が割れているのが実情だ。官邸幹部は「できるだけ早めに緩和したいが、国内外の感染状況の差や科学的なエビデンスを見極める時間が必要だ」と話す。 20年1月以降、日本政府から留学の在留資格を認められながら、入国できていない人は約14万7千人に上っている。 外務省幹部は「留学生が中国などに流れる可能性があり、長期的に見てダメージが大きい」と影響を指摘。一方で「メディアの世論調査では水際対策への支持が高い。完全に政治判断になっている」と話す。 各国で影響が広がるなか、米テンプル大ジャパンキャンパスのマシュー・ウィルソン学長は9日、都内で経済団体などとの共同の記者会見を開き、「将来の日本の貢献者や支援者を失うことは、長期的に日本の損失となる」と訴えた。【2月12日 朝日】*********************
****ベトナム実習生、5万人足止め のしかかる借金「将来どうなる」 日本の「コロナ鎖国」****日本への渡航が決まりながら入国できないままの技能実習生がベトナムに約5万人いる。厳しい入国規制で2年近く渡航できない状態が続いているからだ。実習生の足止めは人手不足という形で日本の労働現場に影を落としている。(中略)
ベトナム中部ハティン省に住むレ・ベト・タンさん(20)は「外国人だけを入国禁止にしているのは不公平だ」と話す。20年10月から機械加工の実習生として日本で働くはずだったが、「鎖国」に例えられるほど厳しい日本の入国規制で渡航できなくなった。 ベトナムの送り出し機関に払う手数料や渡航費用のため、銀行などから借りた約50万円の返済が始まっている。「日本に行けなければ、家族や自分の将来はいったいどうなるのか」と不安を漏らす。 ベトナム政府は1月、入国者の隔離を3日に短縮し、入国規制を大幅に緩和した。日本とベトナムの間では定期便が再開。コロナ禍で日本に残らざるを得なかった実習生の帰国が進むのに、新たな実習生が来ない事態が生じている。 日本の地方では人手不足が深刻になっている。日本側で実習生と企業を仲介する千葉県の監理団体の幹部は「あらゆる職種の現場で帰国した人たちの穴を埋められず、働き手が足りない」と話す。【2月13日 朝日】**************************
上記記事にあるように、事実上外国人労働者に多くを頼っている日本社会・経済でも深刻な人出不足が広がり、十分なサービス提供ができない事態にもなっています。
****介護職「早く来日を」 入国制限で不足深刻****岸田文雄首相が17日、新型コロナウイルスの水際対策の緩和に言及した。介護の現場では長引く入国制限によって、働き手の外国人が来日できない状態が続き、オミクロン株の感染対策もあって負担が増している。第6波では高齢の感染者が目立ち、人手不足の現場からは「早く来てほしい」との声が上がる。
関西に介護施設を展開する社会福祉法人・晋栄福祉会(大阪府)は、介護職員約1千人のうち約120人が外国人だ。
しかし、政府は2020年春から新型コロナ対策で、一時期を除き外国人の入国を原則停止。この法人でも、特定技能の資格で来日するはずだったフィリピン人ら約30人が入国できず、2年近く待つ人もいる。人材派遣業者に依頼して人手をやりくりしてきたが日本人の求職者は少なく、辞めていく人も多い。
兵庫県宝塚市の施設を統括する石村陽一・総合施設長は「第6波では高齢者施設でのクラスターが増えている。職員はかなり疲弊している」。
入国制限緩和について、浜田和則理事長は「人材確保に悩む施設にとって大変ありがたい。簡単な手続きで少しでも早く現場へ配属できるよう、配慮してもらえれば」と話す。
全国約80の介護事業者に約500人の技能実習生を仲介する大手の監理団体・医療介護ネットワーク協同組合(東京)では、ベトナムなどで約120人の介護実習生が待つ。すでに10人ほどのキャンセルもあったという。木全(きまた)雅夫常務理事は「待遇のよい他国に渡航先を変える流れもある。入国制限が長引くほど、実際の来日は減っていただろう」と話す。(中略)
日本の介護職不足は深刻だ。外国人の働き手を確保するため、政府は08年に経済連携協定(EPA)の枠組みでの受け入れを始め、17年には技能実習に介護を追加。19年には特定技能での受け入れも開始し、門戸を広げてきた。
しかし、20年春に入国制限が始まり、介護分野の特定技能の在留者は見込みより少ない約4千人(昨年9月末)。21年、新規入国した技能実習生は全職種を合わせても約2万人で、2年前から9割減った。【2月18日 朝日】********************
【意味を失った「鎖国」政策】日本国内に感染者が少なく、海外では感染者が溢れているというのであれば、一定に“鎖国”の効用もありますが、現実にはすでに日本国内でオミクロン株市中感染が蔓延している状況では、“鎖国”の意味すらありません。
単に、海外への漠然とした不安感に依拠した“やってるふり”の施策に過ぎません。また、すでに日本社会・経済は外国人労働者に多くを頼っているという現実を認識していない誤った判断に基づく施策です。
****“コロナ鎖国”で稼いだ時間も水の泡。岸田政権が犯した3つの大失敗****水際対策の解除について再三このメルマガでも申し上げてきましたが、12月末の時点ではオミクロン株の流入に制限をかけるための、いわゆる「水際対策」については一定程度の合理性はあると考えていました。
具体的には、感染力が強く強毒性である可能性が排除できなかったこと、また感染力が非常に強いのであればワクチンの3回目を繰り上げるなどの対策のため、また第5波で問題になった病床と医療従事者の確保に「時間を稼ぐ」ことが必要という説明にも一理あると考えたからです。
ですが、現時点では、まず日本の市中感染は欧州各国や米国よりも、厳しい状態になっています。例えば、私の住むアメリカのニュージャージーでは確かに1月上旬の状況は非常に厳しかったですが、現在では2月14日の新規陽性者が908名まで沈静化しています。最悪期の、例えば1月7日には3万3,000だった数字がです。ちなみに、人口は900万人で東京よりやや少ない程度です。
ですから、今日現在でニュージャージー州のビジネスパーソンが商談などのために、東京に出張するとすると「市中感染の確率が20倍、いや検査数の問題を考慮すると40倍とか50倍」危険である場所に行くことになります。日本の皆さまには失礼な言い方になりますが数字としてはそうです。(中略)
商談はまだオンライン等で何とかなると思いますが、問題は留学生です。日本の大学に入った留学生は、その多くが入国できないのでオンライン授業を受けています。ですが、交換留学制度については現時点では停止したままです。
そこで、多くの国や大学から「日本はこのように外国人を国籍で差別して留学生を入国させないというカントリーリスクがある」として、「相互主義に基づいて交換留学制度についてはキャンセルしたい」という意向が来ているようです。(中略)
もう一つは「水際対策」で稼いだ「時間」をどうして使えなかったのかという問題です。2点議論したいと思います。(中略)
岸田政権は「水際対策」で時間を稼ぐことによって、「オミクロンの危険度を見極め」「医療体制を準備し」「必要に応じてワクチン接種の繰上げをする」はずでした。ですが、ほぼこの3つには完全に失敗しているわけです。これでは何のために国際交流や、在外邦人を我慢してきたのかということになります。(後略)【2月16日 冷泉彰彦氏 MAG2 NEWS】****************
認識不足を責められべきは政府だけでなく、「完全鎖国でゼロコロナ」を政府に要求していた一部野党も同じです。
【鎖国支持の世論と緩和を求める与党・経済界の間で板挟みの岸田首相、ようやく方針転換へ】こうした状況で、岸田首相が水際対策の緩和に踏み出したのは周知のところですが、未だに過半が“鎖国”を支持する国民世論(14日発表のNHK世論調査では、今の水際対策を「続けるべきだ」が57%、「緩和すべきだ」が32%)と悲鳴をあげる経済・社会及び緩和を求める与党・経済界の間で板挟みになっての判断だったようです。
“1日あたりの入国者数の上限は3500人から5千人まで引き上げる。観光客については当面停止を維持する。(中略)入国後の自宅や指定施設などでの待機期間については、原則として現行の7日間は維持しつつ、3日目の検査で陰性であれば解除する。さらに政府が感染流行国に指定していない国からの入国で、ワクチンを3回接種済みであれば、待機自体を免除する。”【2月17日 朝日】
****水際対策ようやく緩和 岸田首相、最後まで慎重姿勢 参院選へ支持低下懸念〔深層探訪〕****岸田文雄首相が「先進7カ国(G7)で最も厳しい」と誇ってきた新型コロナウイルスの水際対策の緩和に踏み切った。
経済界や与党は早くから緩和を迫ってきたが、関係者らの証言から、首相が厳格な対策こそ世論の願いとみて拒み続けた姿が浮かび上がる。夏の参院選を前に、内閣支持率への影響を気にしていたことが見て取れる。 
◇長官了承の緩和案一蹴  「感染第6波の出口に向かって徐々に歩み始める。G7で最も厳しい水準は維持しつつ、水際対策の骨格を段階的に緩和する」。首相は17日夜の記者会見で、こう表明した。  
首相が外国人の新規入国停止を打ち出したのは昨年11月29日。感染力の強い変異株「オミクロン株」が南アフリカで確認されてから5日後のことだ。首相は「慎重すぎるとの批判は私が全て負う覚悟だ」と記者団に言い切った。  実際、厳しい水際対策は国民に好評だった。報道各社の世論調査で「評価する」が9割に迫るものもあり、内閣支持率は軒並み上昇した。  
当初は昨年末までとされた「臨時異例の措置」(首相)の期限は、1月まで、2月末までと段階的に延ばされた。関係者によると、こうした対応を一貫して主張したのも首相だった。
昨年12月、オミクロン株の市中感染が拡大すると、経済界は水際対策の意味が薄れたとして緩和を求め始め、年明け以降、首相周辺からも「対策の意味はもうなくなった」との声が漏れるようになった。  
対策の緩和案が具体化され、松野博一官房長官も了承したが、首相は一蹴。2月末まで延長した際も、一時は「3月末まで」と主張していた。政府は併せて留学生らの入国を「個々の審査」で限定的に認める方針を決めたが、首相は自ら審査状況のチェックに乗り出す徹底ぶりだった。  
政府関係者によると、2月に入っても首相は「かたくな」で、「周囲が緩和を説得し続けたが、なかなか首を縦に振らなかった」という。10日になって、安倍晋三元首相が「日本が世界の中で立ち遅れていく」と発言するなど与党から圧力が強まり、首相もようやく折れた。【2月19日 時事】********************
昨年11月に素早く強化措置を発表したことが世論の支持を得た「成功体験」が、状況の変化への対応を遅らせたようです。
“外務省関係者は「世論調査のインパクトに官邸や首相が引きずられた」と振り返り、こう指摘した。「エビデンスもないまま(水際強化措置が)延長されてしまった。この間起きた被害は甚大だ」”【2月18日 朝日】
もちろん民主主義にあって世論は尊重されるべきものですが、ときに世論は限られた情報に基づく、自分の身の回りだけに関する判断にもなりがちです。
世論調査の数字のとおりに政治を行えばいいのであれば政治家など不要です。ときに丁寧な説明で世論を説得するのも政治の重要な役割です。それがなければ、民主主義は衆愚政治に堕してしまいます。

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