
(衆院本会議で特定秘密保護法案が可決され、拍手する安倍晋三首相(中央)=26日夜、国会内【11月26日 時事】)
政府に限らず個人レベルで考えても、秘密にしておきたい情報は多々あり、秘密にすることで円滑に処理されることも多々あります。
ましてや政府レベルになれば、安全保障や外交などで必要になる秘密情報は当然にあるでしょう。
ただ、民主主義の基本理念からすれば、重要な情報は公開され、その情報に基づいた議論によって政策は決定されるべきものです。
現実政治の要請と民主主義の理念のバランスをいかに保つかということが、民主主義政治の成熟度を示すバロメーターのひとつでしょう。
一般論で言えば、常識的に考えてわかるように、政府・国家機関は自分たちがやりやすいように、なるべく秘密の範囲を広げようとする強い傾向があります。
****英政府:公文書の破棄、政府が指示 50〜60年代****
英国政府が1950〜60年代、自国に都合の悪い植民地政策関連公文書の破棄を指示していたことがわかった。
11月29日公開の公文書から、指示のメモが見つかった。
英紙インディペンデントによると、指示は英国から独立した少なくとも23カ国が対象。
メモは植民地政策に関し、「最高機密(トップシークレット)」「機密(シークレット)」指定文書を破棄するか、英軍による本国持ち帰りを指示した。
対象文書は主に、独立後に新政府に渡ったり公開されたりすれば、英国に悪影響を及ぼす可能性のある文書とみられる。破棄を指示したメモは、英本国に持ち帰った植民地政策関連文書(約8800ファイル)から見つかった。破棄文書数は不明だ。
英国では、秘密指定から30年(今年からは20年)を経過した公文書は原則公開されるが、植民地からのファイルは非公開だった。
英メディアは、外務省の非公開政策を「違法」と非難。ガーディアン紙によると、公開対象だが「違法」に非公開とされている英政府の文書は計120万ファイルになるという。【11月30日 毎日】
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****不都合な文書は読ませない? 秘密主義化する米政府*****
連邦機関が情報公開法などの法律を踏みにじり、理屈をつけて公開請求を拒むケ−スが増加
民主主義を守りたいすべての人にとって憂慮すべき事態だ。
オバマ大統領は政府の透明性を確保すると約束しているが、政府の情報公開のハードルはむしろ高くなる一方だ。
連邦政府機関が情報公開法や政府公開法などの法律を踏みにじり、ジャーナリストの情報公開請求や手数料免除申請を拒否するケースが増えていると、情報公開の専門家たちは言う(法律の規定により、作家やジャーナリストは、資料請求に対する文書検索手数料を免除されることになっている)。
最近、元ロサンゼルス・タイムズ紙記者のデニス・マクドゥーガルの情報公開請求に対して司法省が手数料免除を拒否したのは、その典型だ。
マクドゥーガルは麻薬取締局(DEA)に、エンターテインメント業界関係者だったデービッド・ウィーラー(故人)に関する記録の公開を求めた。ウィーラーはDEAサンディエゴ支局に出入りしていたことが知られている。
商売敵に関する情報を捜査官に提供し、それと引き換えに自分の違法ビジネスを黙認されていたと、マクドゥーガ
ルらは考えている。
マクドゥーガルが請求した資料は、「(政府の活動についての)国民の理解に大きく資する可能性が高い」という法律の基準に適合するように見えるが、司法省の不服申し立て審査責任者であるショーン・オニールは手数料の免除を拒否した。
17点の文書の検索手数料として1900ドルを納めるよう求めた。しかも、手数料を納めても文書が公開される保証はない。
不可解極まる拒絶理由
このときオニールは、問題の文書がどういう点で政府の活動に「光を当てる」のかが不明確だと断言。また、マクドゥーガルがジャーナリストとして著作を発表する可能性も立証されていないと述べた。
資料は歌手ボブーディランの評伝を古くためのもので、大手出版社ターナー・パブリッシングと出版契約も結んでいるのだが。
オニールは「貴殿は自らの商業的利益のために情報を求めているように見える」と述べている(取材要請にオニールは返答していない)。
情報公開専門の弁護士であるブラッドリー・モスによれば、こうした扱いは珍しくないという。「連邦政府機関は、情報公開請求を恣意的に審査し、手数料の免除や文書公開を拒んでいると言っていい」
最近は、政府文書を「私的文書」だと主張したり、文書公開と国民の利益に関係がないと主張したりして公開を拒むパターンも増えている。
作家のグレッグームテイットが『火に油−占領されたイラクの石油と政治』の執筆過程で情報公開を求めた際も、そのような対応をされたという。
ムティットの弁護士であるケルーマクラナハンによれば、2人の政府機関職員は、「もっと切実な問題があるので、この件に関心を持つ国民はいないだろう、という不可解な理由」で請求を拒否した(中略)。
政府機関は、読者数が少ないという理由で、定期刊行物による情報公開請求や手数料免除申請を拒むケースもある。「国民の理解に大きく資する可能性」が乏しい、という論法だ。
ジャーナリストが裁判に訴えても、上訴審にもつれ込めば長い年月と裁判費用が掛かる。非効率で腐敗した政府職員たちの高笑いが聞こえてきそうだ。【12月3日号 Newsweek日本版】
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こうした秘密の範囲を広げ、ハードルを高くしたがる政府・国家機関の性向を前提にすれば、いかに秘密を守るか・・・ではなく、いかに情報を出させるか、いかに透明性を確保するかという点に政治・社会システムの力点があってしかるべきでしょう。