Quantcast
Channel: 孤帆の遠影碧空に尽き
Viewing all articles
Browse latest Browse all 4413

アメリカ社会の暗部 繰り返される事件でも進まぬ銃規制 フェンタニルなど拡散する薬物汚染 

$
0
0

(サンフランシスコの麻薬蔓延の中心地と言われるテンダーロイン地区 【4月16日 WSJ】)

 

【各地で相次ぐ銃犯罪 バイデン大統領は規制強化に意欲を示しているものの・・・・】

新型コロナ禍以前の問題としてアメリカ社会が抱える大きな問題が、大きな事件のたびにいつも取り上げられる、そして何も改善しない「銃社会」の問題。

 

****NY中心部でライフルなど所持 男を逮捕****

アメリカ・ニューヨークの中心部で16日、ライフルやガスマスクを所持していたとして男が逮捕されました。

警察などによりますと、逮捕されたのは18歳の男で、16日、地下鉄の駅構内で、ライフルや銃弾、ガスマスクを持っていたということです。地下鉄のホームでは、多くの警察官が警戒にあたるなど物々しい雰囲気となりました。

一方、中西部・インディアナ州では15日、物流会社の施設で元従業員の男が銃を乱射し、8人が死亡する事件がありました。男は現場で自殺したということです。

また、南部・テキサス州の空港でも15日、男が銃を乱射する事件があり、複数のケガ人が出ました。

この近くでは翌16日にも、男が車の中から警察に対し発砲し、男とその同行者が射殺される事件が起きるなど、アメリカ各地で銃犯罪が相次いでいます。【4月17日 日テレNEWS24】

**********************

 

15,16日だけでなく、連日のように繰り返される銃犯罪・事件に、バイデン大統領もこれまで銃規制強化の方針を打ち出していました。

 

****バイデン氏、議会に銃規制訴え コロラド州銃撃事件受け****

米西部コロラド州のスーパーマーケットで10人が死亡した銃撃事件を受け、ジョー・バイデン大統領は23日、殺傷力の高いアサルト銃器を国内で禁止するよう、議会に呼び掛けた。

 

米国での銃乱射事件発生はここ1週間で2件目。先週にはジョージア州の州都アトランタのマッサージ店数軒で銃撃があり、8人が死亡していた。

 

バイデン氏は「将来人命を救うことになる常識的な措置を取り、上下両院の同胞たちに行動を呼び掛けるうえで、1分、1時間たりとも待つ必要はない」と言明。

 

議会が1994年に与野党の分断を乗り越えてアサルト銃を10年間禁止する措置を可決したことに言及し、「われわれは再び、アサルト武器と大容量弾倉を禁止できる」と訴えた。

 

今回の事件は22日、コロラド州の州都デンバーの北西約50キロに位置するボールダーで発生。(中略)

 

コロラド州では、1999年にコロンバイン高校で、2012年にはオーロラの映画館で、いずれも米国史に残る銃乱射事件が起きた。両事件は全米で銃規制をめぐる議論を巻き起こしたが、いずれも大きな法改正にはつながらなかった。 【3月24日 AFP】

**********************

 

しかし、“米国では乱射事件の度に銃規制強化法案が審議されてきたが、銃ロビー団体の政治的影響力もあり、ほとんどが実現していない。”【3月24日 日経】

 

銃ロビー団体の政治的影響力の背後にあるのは、憲法に規定された銃を持つ権利に対するアメリカ社会の容認姿勢であり、また、度重なる事件に対する銃による自衛への意識でしょう。(事件が起きるたびに、銃を買い求める人々が銃砲店に殺到するというのが実態です)

 

ただ、多少なりとも把握されている銃砲店で販売される正規の銃以外にも、全く把握されていない自家製の銃も出回る状況に、さすがにこんなに野放し(もちろん、州によって規制は異なりますが)でいいのか・・・いう懸念もあります。

 

****バイデン氏「銃暴力は疫病」、規制策を発表 自家製銃対策など柱****

バイデン米大統領は8日、国内で続く銃乱射事件に対処するため、銃規制策を発表した。

自家製銃「ゴースト銃」の取り締まりや、射撃の際に銃口を安定させる「スタビライジングブレース」と呼ばれる装置の登録義務付けなどが柱。

さらに、アルコール・たばこ・銃器取締局(ATF)に対し、国内の銃器の不法取引に関する年次報告の提示を求めるほか、危険と判断される人物から当局が銃器を一時的に没収することを可能とする「レッドフラッグ(危険信号)」法の各州での導入に向けた下地を整える計画。

バイデン大統領は、攻撃用武器の再禁止、銃器メーカーに対する訴訟の免除廃止、全国的なレッドフラッグ法の制定といった議会の支持が必要になるより野心的な目標も掲げた。

この日発表した対策は大統領令で法案ではない。ホワイトハウスは追加の措置を取るとしている。

バイデン大統領は銃の暴力を「疫病」と呼び、「制止しなくてはならない」と言明。「銃の危機、そして公衆衛生の危機に立ち向かうための一歩を踏み出した」と述べた。

銃規制支持派は政権の対策を歓迎する意向を表明した。銃規制団体ギフォーズのエグゼクティブディレクター、ピーター・アンブラー氏は「これは重要な一連の行動だ」とし、バイデン氏がさらなる行動を約束したことを称賛。「彼の発言の中で最も重要なのは、これが始まりに過ぎないという言葉だ」と語った。

司法省は30日以内にゴースト銃の規制案、60日以内にスタビライジングブレースに関する規制案を示す。

ガーランド司法長官は、最近の銃不法取引のパターンについて詳しく把握するため、刑事事件や捜査の分析方法も見直すとした。

一方、全米ライフル協会(NRA)は、政権の対策に反対する方針を表明。発表文書で「バイデン氏がきょう発表した提案は、法を順守する市民に合法的な所有物の放棄を強いる可能性があるほか、銃を没収する州の権限を拡大するものだ」と批判した。

ロイターなどの調査では、大方の米国民が銃を規制する法律の制定を支持していることが示されているが、議会では一連の銃規制法案の成立は見通せない状況となっている。

バイデン氏は「祈るのはもう十分だ。行動を起こすときが来た」と述べ、銃の展示会やオンラインでの購入に身元確認を義務付ける法案を可決するよう議会に求めた。【4月9日 ロイター】

*********************

 

こうした銃規制強化を示していたバイデン大統領は、15日のインディアナ州における8人殺害事件を受けて、更に規制強化に力を入れる方針です。


****米 銃乱射8人死亡事件受け バイデン大統領 銃規制強化の考え****

アメリカ中西部インディアナ州の物流会社の施設で、男が銃を乱射して8人が死亡した事件を受け、バイデン大統領は声明を出し「銃で大勢のアメリカ人が死んでいる。行動しなければならない」として、銃の規制強化に力を入れる考えを示しました。(中略)

 

事件を受けて、ハリス副大統領は16日、犠牲者に哀悼の意を示したうえで「銃による暴力を終わらせなければならない」と述べました。

 

また、バイデン大統領は声明で「銃で毎日、大勢のアメリカ人が死んでいる。命を守るために、私たちは行動しなければならない」として、銃の規制強化に力を入れる考えを示しました。

 

銃による被害を調べている団体によりますと、アメリカでは15日までの1か月間に、南部ジョージア州でアジア系の住民を含む8人が犠牲となった事件など、一度に4人以上が撃たれた銃撃事件が50件以上、起きているということです。【4月17日 NHK】

**********************

 

まあ、バイデン大統領の意向がどの程度実現するか・・・は、これからの話であり、これまで何度も挫折を繰り返してきたところですが。

 

【コロナを上回る薬物被害 急速に広まる麻薬性鎮痛剤フェンタニル 日本にも】

銃と並んで、アメリカ社会の暗部となっているのが薬物の問題。

薬物にも覚せい剤、ヘロインなど多種ありますが、最近特にその害毒が問題となっているのが麻薬性鎮痛剤フェンタニル。

 

*******************

フェンタニルは、オピオイド系のなかでも強力な鎮痛剤として指定されている。日本薬学会によると、薬理作用はモルヒネと同じだが、鎮痛作用は約200倍も強く、毒性も強いという。  

 

米国では、オピオイド系の過剰摂取による死亡者数も多い。過去の数字だが、米国の疾病管理予防センターの発表では、17年には薬物の過剰摂取で7万人以上が死亡し、そのうちオピオイド系の死亡割合が約7割だった。  

 

有名人では、16年にミュージシャンのプリンスが、フェンタニルの過剰摂取で死亡、19年には大リーグ投手のタイラー・スキャッグスが遠征先のテキサスで嘔吐(おうと)物を詰まらせて窒息死。その後の解剖で体内からフェンタニルなどが検出された。【4月13日 AERA dot.】

*********************

 

新型コロナによる犠牲者を大きく薬物過剰摂取による上回る死者も。

 

*********************

サンフランシスコ市の状況は特に深刻で、2020年の薬物過剰摂取による死者は前年比61%増加し、過去最多の708人に達した。これに対し、同市での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による昨年の死者は254人だった。【4月16日 WSJ】

**********************

 

上記のサンフランシスコの数字に見るように、米西部でフェンタニル過剰摂事故が急速に拡大しています。

過剰摂取死亡事故増加には新型コロナ禍の孤独・ストレス、あるいはシェルター閉鎖などが影響しているとも。

 

****鎮痛剤フェンタニルの過剰摂取、米西部で死者急増****

昨年の薬物過剰摂取による死者数はコロナ死者数を上回った

 

マイク・エンライト氏は、12月に3回、フェンタニルの過剰摂取状態に陥った。長年ヘロインを使ってきた彼は、麻薬をフェンタニルに変えてから、その使用量の限度が分からなくなったという。

 

合成オピオイドのフェンタニルは強力な麻薬性鎮痛剤だ。エンライト氏は、暮らしているテント近くの歩道に座り「麻薬作用は、はるかに強い」と語った。

 

米東海岸地域で長年悩みの種となってきたフェンタニルは現在、西海岸で過剰摂取による死者急増を引き起こしている。

 

ワシントン州キング郡監察医のデータによると、シアトル周辺では、2020年のフェンタニルの過剰摂取による死者が前年比57%増となった。暫定的なデータによれば、ラスベガス周辺では昨年、フェンタニルのような合成オピオイドによる死者が162%増加した。

 

最近の報告では、ロサンゼルス郡のホームレスの間で、2020年1~7月の麻薬過剰摂取による死者数が26%増加したのも、フェンタニルの影響とされている。

 

サンフランシスコ市の状況は特に深刻で、2020年の薬物過剰摂取による死者は前年比61%増加し、過去最多の708人に達した。これに対し、同市での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による昨年の死者は254人だった。

 

今年これまでの状況はさらに悪化しており、1、2月の過剰摂取による死者は135人に達している。このペースが続けば、死者数は年末までに800人以上になる。(中略)

 

フェンタニルの作用はヘロインの50倍にもなり得るので、ごく少量の使用でも過剰摂取となる可能性がある。このため、フェンタニルが街中に大量に出回ると死者が増加傾向となる。

 

ニューイングランド地方やラストベルト地帯で起きたのは、まさにこうした状況だった。これら地域では10年近く前に、しばしばヘロインへの混入の形を取って、フェンタニル汚染が始まった。米東部の一部地域では、街中で手に入るオピオイド系人気薬物が、ヘロインからフェンタニルへと、ほぼ完全に置き換わった。(中略)

 

DEAサンフランシスコ支局を担当する特別捜査官のウェード・シャノン氏によると、西部は歴史的にメタンフェタミン(結晶状覚せい剤)が幅をきかせる市場だったが、現在は麻薬カルテルがそこでもフェンタニルを積極的に広めようとしている。その多くは偽の鎮痛剤という形でだ。(中略)

 

公衆衛生当局者によると、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)は、過剰摂取の危機を悪化させている。孤立感、ストレスや失職は、多くの人々を薬物使用に追いやっている。

 

ホームレス向けのシェルターやその他のシェアハウスが閉鎖され、中毒者は1人で薬物を使用することが増えた。その場合、過剰摂取をしても、助けてくれる人は誰もいない。

 

テンダーロイン地区のテント生活者

(中略)サンフランシスコ市から支援を得て過剰摂取防止の取り組みを監督している「全米被害低減連合」のプログラム「DOPEプロジェクト」の責任者、クリステン・マーシャル氏は、「新型コロナの感染リスクを減らすための最良の方法は、他者と離れて孤立することだ。その一方で孤立は、過剰摂取による死亡のリスクを最大限に高めるものでもある」と述べる。

 

最近ではテンダーロイン地区で、何十人かの人々が歩道沿いで薬物を使用したり、販売したりしていた。ある男性はプラスチック製の箱に腰掛け、あぶっているアルミホイルから出てくる煙を吸っていた。隣の人は気を失っていた。若い男女らは通りかかる人に近づき、「何がほしい?」と尋ねていた。

 

(中略)多くの使用者は、フェンタニルを注射するのではなく、煙にして吸入している。そうすることで、過剰摂取のリスクを下げられると思っているからだ。(中略)

 

それでも同地区では、地元警察署から数ブロックしか離れていない歩道で大っぴらに薬物を使用する人の姿が見られる。パトカーが通るが、止まることはまれだ。(中略)

 

2019年に刑事司法改革計画担当の地方検事に選出されたチェサ・ブーダン氏は、逮捕してもその逮捕者の調書を書き上げる前に同じ街角で別の人物が薬物の売り込みを始めると指摘し、町の中を徘徊(はいかい)する薬物ディーラーを逮捕する意義に疑問を呈した。同氏は、サンフランシスコ市内の薬物汚染の拡大は、治療に重点を置く公衆衛生の問題として扱うべきだとの考えを示した。

 

同氏は「薬物中毒となり、自分のからだや自分の人生を破壊しても構わないと思う人々がいる限り、法執行機関に資源をいくら投入してもこの問題を解決することはできないだろう」と述べた。【4月16日 WSJ】

*********************

 

このフェンタニルは日本にも流入しつつあるようです。

 

****大麻の次にくるのは“フェンタニル” 米国では社会問題化 日本の半グレが「試験的密輸」〈週刊朝日〉****

覚醒剤や大麻などの違法薬物がらみの犯罪が後を絶たない。そんななか、米国で問題となっている合成ドラッグが、日本でも広がりを見せている。名称は「フェンタニル」。日本ではあまり聞き慣れない薬だが、ヘロインより強力で依存性が高く、過剰摂取による死亡者も多い。日本では、「半グレ」(暴力団に所属せずに犯罪を行う集団)が新たな資金源として目をつけている。

 

(中略)フェンタニルは、ケシの実を合成させて作られる薬物で、モルヒネのように、ガンなどの病気での慢性の痛みや手術後の痛みの緩和などに使われる。それら鎮痛効果のある麻薬性化合物の総称がオピオイド系薬物と言われている。  

 

本来の使用方法であれば、依存体質になるなどの危険性は薄れるが、違法薬物として出回れば話は別だ。  フェンタニルは、オピオイド系のなかでも強力な鎮痛剤として指定されている。(中略)

 

米国では、トランプ大統領(当時)が17年にオピオイド危機として、「公衆衛生上の非常事態宣言」を出す事態に。しかし、その効果については微妙なところだろう。(中略)

 

フェンタニルの問題は米国だけにとどまらない。(中略)日本にも、この薬物の名前が出始めている。  

筆者が「フェンタニル」を耳にしたのは、今年に入り、都内を拠点としているある”半グレ”の男に、別の薬物についての取材をしている時だった。  

 

この半グレの男はフェンタニルを、「試験的に密輸している」と話した。男によると、薬物の値段設定は、覚醒剤が1グラム4万円、コカインは同2万円なのに対し、フェンタニルは同1万円という。効き目が強力な割には、他と比べて安い印象だ。  

 

その理由について、男はこう説明する。「まだどんな薬物か知られていないので、仕入れ値も安い。だから値段は安く設定している」  

 

今後、この薬物が広がりをみせるかどうかについてはこう語った。「大麻の次にくる(はやる)と思う。(中略)」  

 

当然、フェンタニルは日本でも麻薬指定されており、発覚すれば麻薬及び向精神薬取締法違反である。(中略)  

 

(日本で麻薬を取り締まる厚生労働省麻薬取締部、通称)「マトリ」幹部は筆者の取材に対し、「マトリとして当然認識はしているが、残念ながら実態の把握までには至っていない。(中略)」と非公式だが会話のなかで明らかにした。  

 

米国で流行している違法薬物は日本でもそのうち出回る可能性は高い 現在、日本で若者を中心に、大麻がものすごい勢いで広がっている。  

 

20年の犯罪白書によると、少年の薬物非行のなかで大麻の検挙人数は14年から6年連続で増加。驚くことに20年は前年比41%増という数字になっている。大麻が、さらに依存性の高い薬物への入り口になりやすい「ゲートウェードラッグ」になっている。  

 

(中略)米国で大麻がゲートウェードラッグだったのは過去の話で、ここ数年は鎮痛剤になっている。そのうち日本でも米国と同じように、鎮静剤が大麻にとってかわる日がくるのかもしれない。そうならないことを願いたい。 【4月13日 AERA dot.】

**********************

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 4413

Trending Articles